高名貴族の娘と結婚したら逃げられて子供も取られた
安藤勇気
序章
序章1アルファラ王国貧困地域の父娘
「ねぇーパパー、良いでしょー?」
アルファラ王国の貧困地域の南地区であるアッシェ地区、貧困地域なんて呼ばれる地域にふさわしい空き家で父親にアイラはねだる。
「ダーメ、危ないから許しません」
そしてそんな娘の頼みを黒髪で黒い目をして見た目通り陰険なパパはツンと爪弾きにするように断った。
こんなに可愛い娘のおねだりを突っぱねるなんて最低な親だ。アイラはサイドテールの銀髪をブンブン振り乱して心の表面でそう思った。
「ケチー!」
ドンドンとテーブルを叩く。
いつものパパはケチじゃない。出かけたいとか、ご飯が足りないとか、アイラがわがままを言ったら一緒に出かけてくれるしパパのご飯をアイラにくれる。
だからパパは男の子にしては細かった。顔も整ってて、細くて白くて髪も綺麗で長くて一本に結ってるのもあって本当に女の子みたい。
動物みたいなところどころ跳ねた癖のある銀髪で赤い目をして、パパが言うには「動物的っぽくて可愛い」アイラとは少し違って、パパのスラリとした様子はカッコよくて「人間っぽくて綺麗」な雰囲気だった
そんな感じの見た目だから親子と少し疑われることもあるくらい。
パパのセカイと娘のアイラの2人暮らし(たまに妖精のオベロンも来るから2人と1匹)
パパはアイラを甘やかしてくれて、たった1つのお願いを除いたら大体のお願いは叶えてくれた。
ただアイラはそのたった1つのお願いが諦めきれない。
「いいじゃん! パパも冒険者だったんでしょ? オベロンに聞いたよ」
「だからダメなの。外は危ないんだよ。たまに入ってくる魔獣を見たことあるだろ? うじゃうじゃいるんだよあんなのが」
アイラの住んでいる貧困地域は石の壁を囲んだ王国の外側にあって、たまに外から結界を乗り越えて魔獣が現れる。
貧困地域にはアイラのような片親の家庭や魔獣に親を殺された身寄りのない子供たちやお金がない人たちが住む。
魔獣が出る代わりにお金がなくても生活出来る地域として偉い人が決めたらしい。円形の国の内側に行くほどお金持ち。真ん中の偉い人が住むのが優生地域、普通にお金を持ってる中間地域、貧乏の貧困地域。
つまり、中間地域より内側のことを「王都」とか「中央」とか呼んでいる外側のアイラたちは貧乏ってことになる。
オベロンがそう言ってた。
「あるよ! でも冒険者の人が倒してたじゃん。あたしもそうなりたい!」
「魔獣と動物の違いは分かるわけ?」
魔獣と動物は違う。オベロンが言ってた。
「分かるよ! しょうき……? があるんでしょ!」
「じゃあその瘴気ってなんのこと?」
「えっ……? うーんっと……」
アイラは言葉に詰まる。ヤバい、分かんない。どうしよう
「そこらへんの勉強も足りてないからダメ」
「本当にケチっ!」
パパはケチだ。そんなんだからママにも逃げられるんだ。
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