第4話 不運は続くよ何処までも

 時刻表を確認するとなんと5分前に最終列車が出ていた(なんで5分くらい待ってくれないの、最終列車でしょ!)


 後から聞いた話では同じ駅内だけれど乗り換える列車は第三セクターと言う別会社で融通が利かないらしい、まあ不運体質の私にはこんな事ぐらい「何とでもなるでしょ」


 ぽかーんと時刻表を見上げていたら地元っぽいおばさんに声を掛けられた。

「何処まで行くの?藪の方?」

「やぶ?えっと次の庄野へ、、、」

「あらま残念ねもう最終出ちゃったわ明日の朝まで待てなかったらタクシーしか無いわねえ」

「えっとそんなに急がないので朝まで、、、」(どうやって待てばいいの?)

「そうじゃあいらっしゃい、私達も泊組みよ向こうに列車ホテルが有るから、ホテルと言ってもただのおんぼろ列車だけどね」


 連絡橋を渡ってずいずい手を引かれ駅の端の方まで引っ張って行かれた、おじさん二人とおばさん一人が待っていたが肝心の列車は影も形も無かった。


「おや若いお客さんかねどこまで行きなさる」

 私に代わって手を引いてきたおばさんが、

「隣の庄野に行くんだってさたった5分で付いてないねえ」

「そりゃ災難だったなあ、きょうはよう遅れとったからなあ」

「まあ心配しなさんなわしらも一緒やさかいに安心しときな」

 歳は行かれているけどかなり体格の良い、おじいさんと呼んだら「なんだと!」って叱られそうな強面のおじさんにそう言われた。

(えーそう言いつつどこかに売り飛ばされたりしないでしょうか、いや売れる顔じゃなかったな)


 でもその他の御三人はとてもやさしい笑顔だったのでなんとか耐えて、

「お願いしますこっちの方は初めて来たので何もわからなくて」

「おや知らない場所にこんなに遅く来たのかい?」

「お昼には着く予定だったんですけどあちこちで遅れに遅れて間に合いませんでした」

「なんとまあ半日も遅れたのかい国鉄に文句言ってやらないとねえ」

(えっ国鉄ってずっと昔の?)


 さっきの怖そうなおじさんが、

「まあ旅は道連れじゃ何かの縁じゃ楽しゅうしような、ところで晩飯はどうしなすった?」

「あっ忘れてた、朝から何も食べてなかった」

「「「「えー!」」」」

 と四人の声が揃った。


「あら大変」

 一人のタヌキみたいな(ごめんなさい)おばあさんが手提げの中をゴソゴソ漁って、

「こんな物しかないけど」

 菓子パンを差し出してくれた。

「お腹空いてるでしょ先に食べなされ」

 その言葉を聞いたら急に空腹感が出てきた、袋を開けてガツガツと一瞬で食べてしまった、なんだか急に眠くなってきた。


「ほなそっちに座ろ、今日は用意悪いわねえ」


  背中合わせのベンチだったのに据わった途端向かい合わせになっていた。

(眠くて頭働いてないの?)


「いつもやったらすぐに宿泊列車が来るんやけどな」

「夜食も出してくれるんよ、大したもん違うけど」

「雨の日やったらそこの店の残りの丼とか出してくれるんやけどな、あれやったら得した気分や」


 田舎の駅だけど昼間やってる食堂があるらしく売れ残って明日には出せないものを夜食に回す時が有るらしくそんな日は当たりらしい。


「あのそんなに乗れない時が有るんですか?」

「月に一二回くらいかな」

「結構有るんですね、何人くらい泊まるんですか」

「ほとんどこのメンバーくらいやな」

「ほかの人は?」

「大抵迎えに来てもらうみたいやね家の人に」

「あっその手が有った、でもなあそんなに急ぐ訳でもないし会ったことも無い人に頼むのもなあ」

「ちょっと待ち、会ったことも無いってどういうことなん」

「それに何か訳ありそうやし」

「あっまあ無くもないし。。。」


 その時列車が入ってきた。

「まあ中でゆっくり聞きましょう」

「そうそう飯でも食いながら」

 何か尋問されそうな雰囲気になってきた。


 すぐに尋問が始まるかと身構えていたけど強面のおじさんだけが手に袋を下げて後から入って来るまでは「何処から来たん?」とか「えらい田舎やろ」とか緩い会話が続き戻ってきたおじさんは、

「今日はまあ当りやなクリームパンやサンドイッチも入っとる、ジャムとバターのやけどな」

「相明堂のクリームパンやったら大当たりやないの」

「それがなあ一つだけじゃ、くじ引きせなあかんなあ」


 ゆるゆるの会話だった。

 続きの話を聞くと列車が遅れて車内泊をするお客さんには夜食が出るそうで、ただしそれは駅の売店で売れ残ったものを出してくれるそうで日によって当たり外れが有るらしい。


「くじ引きなんかせんとこの子にあげて」

「それもそうやな不幸な運命背負うてるみたいやしな」


 薄幸のマッチ売りの少女にされそうになった。

「いえそんな訳にはやっぱりくじ引きにしましょう」

「そうかい、欲のない子やなあ」


 そう言いながらすでに用意されていたらしい手書きのあみだ籤がポケットから出てきた、用意のいい事で。


 ところが私が籤を引くと何故かサンドイッチと滅多に食べられないと言う幻のクリームパンが両手の上に載せられた、皆さんも二つづつだけど私のだけ何か特別と言う感じがしっかりと感じられた、ポカリも付いてきた。


「ほな先食べよサンドイッチから先にお食べ運が良くなるよ」

(サンドイッチで運が良くなる?まあどっちでもいいけど)

  とりあえず喉が渇いていたのでポカリを飲んでサンドイッチを頂いた。


 サンドイッチを食べ終わるのを見計らって。

「そや名前聞いてなかったわ、なんて名前?」

有延ありのべです」

「有延なんて言うの名前が大事なんよ」

「はあ、さつきですけど」(ほんとは通称の「さっき」と言いたいのに何故か「さつき」と言ってしまった)

「有延さつきちゃんね、これからいい事が増えますように」


 その言葉は私の体に吸い込まれるように消えていった、私は眠りに落ちたのだった。


 ---------

 あれ???

 外は明るかった私一人以外誰も乗ってない止まった列車の中四人向かい合わせの席で目を開けた。


 ???ここは何処ワタシハダレ?

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