第10話 自然な登校

翌朝、少し早めに家を出ると俺は昨日、彼女と遭遇した辺りに向かっていた。


まだ一日の付き合いだけど、真面目で真っ直ぐなあの様子だと、登校時間もきちんとしてそうなので、あわよくばまた一緒に登校出来ないかと思ってのことだ。


うん、我ながらストーカーっぽいけど、あくまで偶然を狙ってるだけなので来るまで永遠と待つような真似はしないつもりだ。


約束もしてないし、すれ違ったとしても、この早い時間なら教室で会える可能性も高い。


部活も決まってない、こんな序盤に早くから登校するメリットは少ないし、朝早くの人が少ないor居ない時間帯なら、話しかけても他に人も居ないし、彼女に負担をかけないだろうという狙いもあったりはする。


俺自身は、別に水瀬さんと親しいアピールをしても何も問題はないのだけど、昨日の様子から水瀬さん自身がすぐにクラスに馴染むように振る舞うのは難しいように思えたのでその辺はきちんと考慮しておく。


彼女のフォローなどをする事を考慮するとやはり、俺自身がクラスでの立場の地盤をしっかりと築いてから、自然に水瀬さんがクラスメイト達と打ち解けられるのを目指した方が良さげかもしれない。


こう見えて……というか、昨日の段階でも何人かのクラスの中心になりそうな女子とは話せているので、本日中にはクラスメイトとの関係の構築も進むはず。


そうした上で、水瀬さんを受け入れる準備を整えて……その後はどうしたものかな。


「まあ、外堀を埋めることから始めようかな」


思わずそんな事を呟いてしまうけど、誰も聞いてないので問題ない。


気になる女の子へのアプローチなんてした事もないし初体験だけど、とりあえず外堀を埋めることは必要不可欠だろうしやっておくべきだろうと思い至る。


(さてさて……居るかな)


若干、ワクワクしながら昨日見かけた場所に着くと、流石にタイミングバッチリとはいかなかった。


「まあ、仕方ないよね」


さて、行こうかなと思っていると、茂みから猫が出てきて擦り寄ってくる。


「お、野良かな」


ゴロゴロと下顎を撫でてやると、実に気持ちよさそうにする猫に癒されつつ、しばらくその場で猫と戯れることにする。


俺の想定よりも早く登校してる可能性もあるし、ここで足を止めるのは迷うのだけど、多少待つくらいならそんなにロスでもないだろうし、何より猫を撫でていて足止めをくらってるのは、言い訳として自然なので大丈夫だろう。


そうして、猫と戯れることしばらく……十分も経たずに待ち人はやって来るのであった。












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