第83話
【フレイム王国、グリード視点】
「報告します!反乱軍が民を奪いつつここに迫っております!」
大臣が焦りながら報告する。
「近づいてきたか。いつここに来る?」
ここを攻めても無駄だ。
この王都は守りと攻め、その備えは万全!
更に奴らを出す。
「ナンバーゼロとナンバー13を牢から出せ!」
1000の近衛の内戦闘力が高い14人にはナンバーを授けてある。
分かりやすいように0~13の入れ墨を額に入れさせてある。
「危険です!ナンバー1から12までは忠実です!しかしナンバーゼロとナンバー13は王を殺そうとする諸刃の剣ではありませんか!」
ナンバーゼロとナンバー13は圧倒的な戦闘力を誇るが性格に問題がある。
そんな事は分かっている。
分かった上で私は使いこなす!
「敵が攻めてくるのだ!2人を当てる」
「それでも危険です!」
「命令だ。逆らって死ぬか?」
「かしこ、まり、ました」
大臣は汗を掻きながら牢に向かった。
【大臣視点】
ナンバーゼロのいる牢の前に立つとナンバーゼロが暴れ、太い鎖が大きな音を立てた。
「おらを焼くなああああ!もう焼くなああああ!!」
「安心しろ!大丈夫だ!」
「おらを焼くなああ!」
「安心するのだ!」
ナンバーゼロの精神は壊れている。
王が炎魔法で何度も体を焼いて苦しめたことで心が壊れた。
ナンバーゼロは力を手に入れたがそれでも心は戻らなかった。
王は殺されても自業自得ではある。
だが解放しようとした瞬間に殺されてはかなわん。
ナンバーゼロもナンバー13も奴隷化が効かない。
苦痛の首輪を付けてはいるがそれでも対策は不十分だ。
鎖の音と叫び声が収まるまで待ち、いや、この時間にナンバー13を牢から出すか。
私はナンバー13のいる牢屋に向かった。
ナンバー13は背が高く痩せて見えるが、よく見ると体は引き締まり、無駄な贅肉は無い。
ナンバー13はおとなしい為鎖には繋がれていない。
だがそれが怖い。
「ナンバー13、お前を牢から出す」
「それはありがたいです」
ナンバー13はさわやかな笑顔で言った。
演技なのは分かっている。
「今から牢の封印を解除する」
「お願いします」
魔法で厳重に封印された牢を解除するとゆっくりとナンバー13が出てくる。
「ナンバーゼロを牢から出せましたか?」
ナンバーゼロを牢からダストは一言も言っていない。
ナンバー13の怖さはそこにある。
恐ろしく頭が回る。
そして相手の心理を操る才能があるのだ。
「……まだだ」
頭が回りすぎる。
まるで悪魔だ。
「私が協力しましょうか?」
「おとなしくさせられるのか?」
「やってみなければ分かりませんが、出来るかもしれません」
「ではやってくれ」
「分かりました。所で、首輪をつけたままだと動きにくいのです。外せないのですか?」
「王に言ってくれ」
「分かりました」
13を牢から出し、ナンバーゼロの牢に向かうとナンバー13の口調が変わる。
「ゼロ、おとなしくしろ、大丈夫だ!俺だ!13だ!」
「13?」
「そうだ、ナンバー13だ。おとなしくしてりゃここから出てうまい飯が食える。柔らかい布団で眠れる。心配いらねえよ」
ナンバーゼロが急におとなしくなり、牢から出してもおとなしいままだ。
この2人を一緒にして良かったのか?
寒気がする。
制御しきれない化け物のナンバーゼロ。
狡猾な悪魔のナンバー13。
額に刻まれた0と13を見ると身震いする。
いつ殺されてもおかしくはない。
ここに居ていいのだろうか?
「亡命するのなら早めに決断した方がいいでしょう」
ナンバー13は笑顔で言った。
決めた、何が起きてもおかしくない。
逃げよう。
【フレイム王国、グリード視点】
ナンバーゼロ、そしてナンバー1から13が私に跪く。
顔を上げさせると、0から13までのナンバーが額に刻まれた精鋭中の精鋭がきれいに整列して横に並ぶ。
実に気分が良い。
そして裏切り者である元大臣の首が献上された。
「ナンバー13、裏切者の始末、ご苦労だったな」
「当然の事をしたまでですよ」
ゼロと13を牢屋から出そうとした大臣は亡命の容疑で首を刎ねた。
13もたまには役に立つ。
これですべてが揃った。
王都を守る防壁の内部には城を守る強固な防壁が敵の行く手を阻む。
この防壁は王都に張り巡らされた防壁を遥かに超える強度と高さを備えている。
敵は矢の雨と魔法をかいくぐり強固な防壁を抜ける必要があるのだ。
防壁の門を突破したとしても迷宮のように入り組んだ道に敵は混乱するだろう。
迷宮には毒や落とし穴などのトラップが豊富に仕掛けられているのだ。
青の迷宮を突破曽田としてもこの王城には光の塔と闇の塔がある。
塔の上部から長距離の闇魔法と光魔法を撃ちだす大型魔道具を備え、敵を殲滅出来る。
しかも塔の射程は城を守る防壁内部をほぼカバーしている。
そしてそれさえも突破しても1000の近衛が私を守る。
手間をかけて作った甲斐があった。
「ふはははははは!来るなら来い!返り討ちにしてくれる!」
【10日後】
「なぜ来ない!早く攻めてこい!敵は何をしている!」
「そ、それが王都を素通りして去って行きました」
「な!どこに行った!」
「現在斥候を放っております。しばらくお待ちください」
「早くししろ!私を待たせるな!」
【10日後】
「斥候が戻ってきません。恐らく、返り討ちにあったと思われます」
「ち!無能どもが!」
「王の誇る近衛の斥候を出す事で無事生還できるかと思います。どうでしょう?近衛を斥候に出してみては?」
「近衛を斥候に出したら誰が私を守るのだ!?」
「も、申し訳ございません。し、少数だけでもいいのです。少数だけでも近衛を放つことで事態を打開できるかもしれません」
「バカが!!斥候が出ている隙に敵が潜入してきたらどうするのだ!!貴様の首ごときで償えると思っているのか!?」
「も、申し訳ございません」
「何か案は無いのか!」
「て、敵は強大です。王自らが王の誇る近衛を伴い出陣する事で状況を覆す事が出来るかと」
「出陣しろと?私に動けと?まさか貴様如きが私を動かそうとしたのか?」
「も、申し訳ありません!しかし、王なら、王だけがこの状況を打開できるかと考えました」
「出陣はしない。なぜ私がわざわざ出向く必要があるのだ?」
「も、申し訳ございません」
「何か案は無いのか?」
「も、申し訳ございません」
「無能は腹が立つ」
「……申し訳ございません。私は力になれないようです。もしも変わりの者がおればおいぼれはすぐに退散いたします」
「変わりは後で探す!今すぐに消えろ!」
「はい、お暇を頂きます」
新しい大臣は素早く礼をした後機敏に動き、王のそばから離れて行った。
王は決して王都から出ない。
グリードは王城の城下町までしか出て行かない。
【更に10日後】
「民がシルフィ王国の方角に移動しています!」
「何だと!奴らはどういうつもりだ!」
「……」
「敵が何をしているか聞いている!」
「分かりません」
「斥候は何をしている!」
「近づけば二度と戻ってこないのです。遠目で観察するだけでも危険なのです」
グリードは報告した兵士にワイングラスを投げつけた。
グリードに報告すれば最悪殺される。
兵士は最低限の報告だけで済ませるようになっていた。
そして出来るだけ口を開かないようにして自らを守った。
斥候に出た兵士はワッフルの軍に加わっている事実を王は知らない。
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