第17話 泥沼展開か、意外にも…
「うちはミユウ・ハイストロの許嫁やからや!」
銀髪の女性イリイナ・ルーリールから出てきた予想外の言葉にミユウとアストリアは思考停止した。
部屋の沈黙に終止符を打ったのはアストリアだった。
「あのー、それは一体どういうことなのでしょうか?」
アストリアの質問に少し戸惑いながら、イリイナは自分の後頭部をかいた。
「ん?『どういうこと』って、そのまんまの意味やけど~?うちはな、このミユウと将来を誓い合うた仲なんや」
アストリアは少し黙った後、両手を拘束されていたミユウにすたすたと近づくと、彼女の横腹に両手を添える。
「へえ~。どういうことですか、ミユウさん?私というものがいるというのに、他にも将来を約束した女性がいるとは、初耳なのですが。その辺、詳しく教えていただけますか?もちろん教えていただけますよね?もし嘘をつかれたら、うふふ……」
ニコッと笑いながら、ミユウの顔を覗き込むアストリア。
彼女の微笑ましい笑顔の奥から禍々しいオーラがあふれ出ている。
変な返事をすれば、ミユウの横腹に添えられたアストリアの手が動き始めることは必定だ。
「あ、あたしも初耳なの!」
本当の話だ。つい最近までアストリアという存在を知らなかったのだ。
その上、二人も許嫁がいたなんて想像もしなかった。
きっとアストリア以上に今のミユウの方が驚いているだろう。
「ふ~ん。本当ですかね?」
アストリアはミユウの顔を疑いの目で見つめ続けた。
その視線がミユウにはとても痛かった。目を合わせることができない。
そんな風景をイリイナは腕を組みながら眺めていた。
「なるほど、どうやらあんたが“ミユウ・ハイストロ”ということであっとるようやな。正直、他人ちゃうんかなと疑っとったんやけど、今確信したわ」
イリイナはミユウに近づいて、ミユウの左胸を人差し指でつつく。
「けど、おかしいな~?うちの知っとるミユウは男やったはずやけど?この柔らかさは偽もんやないみたいやしな」
イリイナが質問をすると、アストリアはミユウの横腹から手を引いて、椅子に腰を落とす。
「まあ、それにはいろいろと事情がありまして……」
アストリアはイリイナに、自分がミユウの左の足の裏に描いた魔術印により、くすぐりという弱点が付与され、同時に女体化した経緯を簡単に説明した。
最初イリイナはキョトンとした表情で彼女の話を聞いていた。しかし、目の前にいるミユウの姿を見て、信じるしかなかった。
「なるほどな。どおりでくすぐられたとき異常に悶えとったわけや」
「ほんとにいい迷惑だよ……」
ボソッとアストリアに聞こえないくらいの声でつぶやいた。
しかし、アストリアはその言葉を聞き逃さなかった。
「何か言いましたか?ミユウさん?」
「ううん!何も言っていないよ!」
ミユウはアストリアの問いに対して、即座に返事した。
「けど何でミユウを男に戻さんの?あんたとしてもミユウが女のまんまやったら不都合ちゃうの?」
イリイナさんの質問ももっともだ。
いずれ婚姻するにしろ、子どもを作るにしろ、ミユウが男でなくてはならないはずだ。
ミユウは自分の今後に関わるアストリアの返答を固唾をのんで待っていた。
「もちろん男性に戻しますよ。左の足の裏の魔術印を消すつもりです」
「え?本当?」
アストリアの意外な発言にミユウは一つの光明を見た。もしかしたらこの地獄のような体質から開放されるかもしれない。
「もちろん。私との婚姻が成立したときにですがね。それまでは逃がさないために消すつもりはありません」
「あはは、やっぱりねえ」
ミユウの期待の光は一瞬で消え去った。
「そんなことよりです!」
アストリアはいきなり立ち上がると、イリイナに近づいて、彼女の肩をがしっと掴む。
あまりの勢いにイリイナはその場に倒れてしまった。
「今最も大事なことはイリイナさんのことです。どのような経緯でミユウさんと許嫁になられたのですか?もっと詳しい説明をいただけませんか?」
アストリアは息を荒くしながらイリイナに顔を近づける。
「わかった。説明するから、もう少し離れえや~」
「あ!私としたことがなんとはしたないことを…」
自分が冷静さを失っていたことに気が付いたアストリアは、イリイナの肩から手を離す。胸に手を当てて呼吸を整えると、イリイナに手を差し出す。
「では、ベッドにお座りください。そこでゆっくり聞きましょう」
「やっと落ち着いてくれたか。じゃあ、言葉に甘えるで」
イリイナは立ち上がると、アストリアと並ぶようにベッドに横に腰掛けた。
「あの~。もうそろそろあたしを解放してもらえないでしょうか?」
ミユウはずっと機械に拘束されているままだった。
後ろに複数の手が控えていると思うと、少しも気が休まらない。
それに彼女たちの話の流れによっては、最悪の展開になりかねない。
「ダメです。解放したら逃げ出すかもしれませんので」
「そうやな。うちらの話し合いが終わるまでそこで辛抱しい」
「え~」
ミユウは仕方なく、拘束されたままアストリアたちの会話を聞くことにした。
アストリアの熱烈な目線を浴びながら、イリイナは説明を始める。
「昔話する前にうちらのことを説明せなあかんな。うちらは『操雷族』いう種族でな、『体内で作り出した電気を放出して、自由自在に操る』という特徴を持ってるんや」
「確か高度な機械を自ら作り、その力で操作する種族としても有名でしたよね。なるほど。それを聞いて納得がいきました。そうでなければ、あのような精巧な機械を短時間で作れるわけがありませんから」
「あんた物知りやな。まあ、中にはローラみたいな機械づくりが得意やないもんも少なくはないけど」
「それで、その操雷族のイリイナさんがなぜミユウさんと?」
「うちらは他の種族と比べれば高い知能と特殊な能力を持っとる。その代わり、身体面は他の種族と比べるとめっちゃ劣る。これを克服するために、うちら操雷族のお偉いさんらは高い戦闘能力と頑丈な体を持つ不殺族と交わり、最強の子孫を残そうと考えたんや。ここまでいうたらあんたにはわかるやろ?」
「『操雷族の代表としてイリイナさんが、不殺族の代表としてミユウさんが選ばれた』ということですか?私と同じというわけですね」
「どこの種族も考えることは一緒や。『最強の子孫を残す』というんは生物の本能やからな」
イリイナから説明を受け、大体の状況を把握したアストリア。
しかし、まだ聞きたいことがある。それは彼女にとって最も重要な質問だ。
「それでイリイナさん個人としてはどう思っているのですか?」
「『どう思っている』って?」
「ミユウさんのことです。私はミユウさんを心の底から愛しています。この気持ちはこれからも変わりませんし、誰かにミユウさんを譲るつもりはありません」
「まあ、さっきのあんた見とったら嫌でもわかるわ」
アストリアのミユウに対する態度を見れば、誰でも彼女がミユウのことを愛しているということは理解できる。
「では、イリイナさんはミユウさんを愛していらっしゃるのですか?」
「え?」
イリイナの顔がポッと赤くなる。
「もし周りに決められたから仕方なくミユウさんと一緒になられるとおっしゃるのであれば、そのような方にミユウさんをお渡しすることはできません。諦めていただけませんか?」
アストリアの問いにイリイナは最初は戸惑っていたが、その表情が変化していく。
常に上がっていた彼女の口角が下がる。
「それは、できん相談や。やって、うちも、ミユウを愛しとるから……」
イリイナは目線を落として、長い銀髪をいじり始める。
「うちこんな性格やろ?人の話を聞かんで、一方的に話を進めて。そのせいであんまり友だちができんかった。そんなうちをミユウは『それもお前の個性なんだから』と受け入れてくれたんや。ぶっきらぼうやったけど優しさがあって、そんな不器用な男にうちはホレた。一生いっしょに居ようと決めたんや……」
イリイナは突然ベッドから立ち上がりると拘束されているミユウの首をつかむ。
これまでの彼女とは異なり、怒りの感情がむき出しになる。
「なのに、あんたは勝手にうちの前から消えてしもうた!もう悲しいて悲しいてしょうがなかったわ!おまけに久々に会うたら女になって、他にも許嫁がおって、うちのこと忘れてるときた。あんた、この気持ちどうしてくれんねん!」
喉の部分をしっかり掴まれた上に、強引に前後に揺らされて、呼吸ができない。
「う~。く、苦しい~」
「落ち着いてください。ミユウさんが苦しがっています」
「あ!あかん。つい感情的になってしもうた…」
アストリアの制止によって我に返ったイリイナはミユウの首から手を離す。
自分の境遇と似ていると気づいたアストリアは、イリイナの両手を手に取る。
「いきなり目の前から愛しの人が突然消えた悲しみ、自分のことを忘れられる悔しさ。私イリイナさんの気持ち、よくわかります。私もそうだったのですから」
「アストリア~。あんたもつらかったんやな~」
「そうです!イリイナさん。提案があるのですが、一緒にミユウさんの村に行きませんか?」
「え?ええんか?」
「確かにあなたは私にとって恋敵ではありますが、先ほどのあなたを見て『ミユウさんのことを諦めて』なんていうことはできません。どちらがミユウさんの伴侶としてふさわしいかは村に着いてから決めても遅くはないと思うのです」
「それまでは休戦というわけやな!よし、わかった!けど、うち故郷に帰ってせないかん仕事があるんよ。今すぐ旅に行くわけにはいかんけど、それ片付けたら合流するってことでええか?」
「もちろんです!その日を楽しみにしていますよ」
アストリアとイリイナの休戦協定が結ばれると、友情を確かめるように強く抱擁する。
「本当によかったよ」
一時ぴりついた空気が平和に済んだことでミユウは安心した。
これでくすぐり地獄は回避される。
「それじゃあ、話がまとまったところでそろそろ解放して……」
ミユウがそう言いかけると、抱擁していた二人が表情を一変させて彼女に目線を向ける。
「何をおっしゃっているのですか?まだ終わっていませんよ」
「え?だって休戦だって……」
「それはうちら二人の話や。あんたのことはまだ終わってへんで」
「あの~、話が見えないのだけど……」
戸惑うミユウに二人が詰め寄る。
「ミユウさんは私とイリイナさん、どちらが好きですか?もちろん私でしょうが……」
「何言うてるんや。もちろんうちの方が好きよな?」
「それはその……」
いきなり突き付けられた究極の選択にミユウは冷や汗をかく。
「えーっと……『どっちも』っていうのはダメ?」
「「ダメ!」」
「ですよね~」
二人の勢いに押されて、後ずさりする。
「今日はその答えを聞くまで寝かしませんからね」
「え~」
ミユウは考える。
“どっちも”という答えが認められないのであれば、どちらかを選ぶ必要がある。
とりあえずは、アストリアを選ぶことにしよう。ここで彼女を選ばなければ後が怖い。
イリイナには申し訳ないけど、さりげなくフォローをしておけば大丈夫だろう。
「アストリア、かな?」
ミユウの回答を聞くと、アストリアはパッと明るい笑顔で喜んだ。
「そうですよね!ミユウさんなら私を選ぶと思っていました!」
一方で、選ばれなかったイリイナは嫉妬に満ちたオーラを放つ。
「そうか~。ミユウはうちを選んでくれんのやな~」
「ごめんね。ほら、まだイリイナのことをよく知らないからさ」
「あ~、悲しいわ~。うちの乙女心が傷ついてしまったわ~」
「ごめんって。謝るから許して」
「けど、誰かさんの笑う顔が見たら心の傷も治るかもしれん~」
「え?」
呆気にとられるミユウの腰にイリイナが飛びつく。
「くらえー!こちょこちょこちょ~」
イリイナはその細い指先で、ミユウの腰回りをくすぐり始める。
「いやはははははは!や、やめてーー!」
「ここか?ここが弱いんか?」
「ごめん!ごめんって!あははははは!」
「許さんへん!うちの心を弄んだ罪は重いんやで~」
体力を消耗しているミユウにとって、イリイナのくすぐり攻撃は耐えられなかった。
ミユウは苦しみから解放されるために、ある言葉を口にする。
「あははは!ま、間違えました!やっぱり、あたしが好きなのはイリイナでした!あははははは!」
ミユウの言葉を聞くと、イリイナはくすぐりの手を止める。
そして、満面の笑みでミユウの腰に抱きつく。
「ほんまか!そりゃそうやわ~。ミユウがうちを選ばんはずがないからな~」
「はあ、はあ。ごめんね、イリイナ」
くすぐりから逃れられて一安心するミユウ。
しかし、アストリアが禍々しいオーラを全身にまといながら、ミユウを見つめていた。
「おやおや。お名前を間違えてしまったのですか?それは残念です」
自分を見つめるアストリアの姿にミユウは気付き、全身が恐怖で震えた。
「いや、それは、その……」
「いいのですよ。誰にでも間違いはあります。それは仕方のないことなのですから」
「アストリア、わかってくれるんだね」
「はい」
ニコッと微笑むアストリアに安堵したミユウ。彼女が自分を許してくれたのだとミユウは解釈した。
「しかし、そのせいで私はぬか喜びしてしまい、私の乙女心が傷つきました」
「え?」
アストリアは両手をミユウの脇の下に添える。
「その罪はしっかりと償っていただかないといけませんね」
「ちょ、待って……」
アストリアは添えた両手の指を立てて、ミユウの脇の下をくすぐり始める。
「ぎゃははははははは!」
アストリアの滑らかな動きをする指は正確にミユウのくすぐったいツボを責める。出会って数日経った中でミユウの体の構造をしっかりと学習していた。
「いひひひ、ご、ごめ、ごめんなひゃ、あははははは!」
「おかしいですね。本当に申し訳ないと思われているのであれば、もっとまじめな表情で謝罪されるはずなのですが」
「む、無理いわないで、やはははははは!」
「あらあら、開き直るとは、やはり誠意が見受けられませんね。もっとお仕置きが必要でしょうか?」
「あははは、やっぱさっきのはなし!一番好きなのはアストリアです!」
ミユウは地獄から逃れるため、再び回答を訂正した。
それを聞いたアストリアは、くすぐりの手を止めてミユウの脇の下から両手を離す。
しかし、アストリアとイリイナは先ほどと反応が異なり、真顔のままで互いに見つめ合った。
「ミユウさんはこのようにおっしゃられますが、どの思われますか?イリイナさん」
「正直、うちは失望してしもうたわ。しばらく会わんうちにミユウがこんなにも変わってしもうとはなあ。体だけやと思っとったけど、心まで男らしゅうないで」
「はあ、はあ、そ、そこまで言わなくても、いいじゃん」
アストリアとイリイナは何かを申し合わせたかのように首肯する。
「それでしたら、ご一緒にミユウさんの正念をたたき直して差し上げませんか?」
「お!そりゃええ。男に戻ったときのためにも、昔の男らしさを取り戻してやろうやないか」
二人はミユウの体に目線を向けると、ニヤッと笑い、両手をワキワキとする。
「は、謀ったな!最初からあたしをくすぐるつもりだったんでしょ!何が気に入らないっていうの?あ、そうか。二人とのことを忘れてしまったから、それに怒ってるんでしょ?でも仕方ないでしょ。研究と称していろんな薬を投与されたんだから!」
「私は上半身を責めます。イリイナさんは下半身をお願いいたします」
「よっしゃ任しとき!さて、どこくすぐったろうかな?やっぱ定番の足の裏から……」
「こ、これ以上されたら、本当にあたし死んじゃうから!いいの?あなたたちの愛するミユウが死んじゃうよ?嫌でしょ?」
「それをあなたがおっしゃいますか?」
「安心しい。死なんようにしたるから。まあ、手加減も一切せんけど」
アストリアはミユウの横腹を掴み、イリイナはミユウの左足を持ち上げ、上着のポケットから羽ペンを取り出す。
「ゆ、許して~~」
「では、行きます!せーの」
「「こちょこちょこちょ~~」」
「ぎゃあああはははははははは!だ、だめーーーー!」
その後、1時間にわたり、部屋の中でミユウの笑い悶える声が響きわたり続けた。
ーーー
「ふう、今日はこの辺で許して差し上げましょうか」
「そうやな。これ以上続けたらほんまに死んでしまいそうやし。勘弁してやる」
「はあ、はあ。あ、ありがとう、ご、ございます……」
二人のくすぐり責めから解放されたミユウは、全身をピクピクと痙攣させてぶら下がっていた。
1日に6回、足掛け約6時間のくすぐりを受け続けたミユウの体力は限界に近かった。まともに立つこともできない。
イリイナが“こちょこちょくん3号”のボタンを操作してミユウの手足から枷を外すと、ミユウは前に倒れ込む。その彼女を二人がかりでベッドの上に寝かした。
アストリアとイリイナは、もう一つのベッドの上に腰かけると、肩や手首を回しながら、体をほぐしていく。
「それにしても今日は本当にいろいろありましたね」
「そうやな。ミユウにも会えたし、あんたという親友もできたしな。今日は最高の日や。さて、もうそろそろ帰ろうか、ってあれ?もう外暗いやん。結構長居してしもうとったんやな。楽しい時間は早う過ぎるもんやわ」
(何が楽しい時間だ!こっちは死にかけてるんだよ!)
ミユウは心の中でそう叫んだ。
「もしよろしければ、この部屋に泊まっていきませんか?もっとイリイナさんと話をしたいですし」
「ええんか?ほんまにあんたはやさしいなあ」
「では、決まりですね!」
(え〜!)
アストリアはイリイナと一緒に泊まることを決定した。ミユウに何の伺いもせずに。
部屋着に着替え直したアストリアはミユウの左隣に横たわる。
その姿をイリイナは不思議に思い、彼女に問いかける。
「アストリア、あんた何してるんや?うちは別に床で寝るから、こっちのベッド使ってもええんで」
「あ、違うのですよ。今晩ミユウさんと添い寝すると約束していたのです」
(あ!完全に忘れてた!そんな約束してたんだった!)
ミユウは大事なことを思い出した。
イリイナが来る前にアストリアと添い寝をすることを強引に約束させられていた。
「へえ~。あんたらそんなに仲ええんやな。うらやましいなあ」
「うふふ。そうでしょう?それに今日だけではなく、以前にもご一緒していただいたのですよ」
アストリアは自慢げに勝ち誇った表情を浮かべる。
「それやったら、うちも……」
イリイナはもう一つのベッドを、ミユウたちが横になっているベッドの右側にくっつける。そして、上着を脱ぐと、ミユウの右側に転がり込む。
「え!イリイナさん、何をされているのですか!」
「何って、あんたがしよることとおんなじことをしてるんや。うちもミユウの許嫁なんやから、こんなことしてもええやろ?」
イリイナはミユウの右腕に力強く抱き着く。
(や、やめて~~!)
その瞬間、彼女の体がミユウの男としての本能を襲う。
「あ!ずるいです!元々は私とミユウさんとの約束だったのですよ!」
「そうなんか?けど、これは早いもん勝ちや。悔しかったら、あんたもすればええやん」
「の、望むところです!えい!」
イリイナの挑発に促進されて、アストリアもミユウの左腕に抱きつく。
(いや~~!)
アストリアとイリイナの発達した柔らかく温かい体がミユウを挟む。
「ほ~う。あんたも大胆やな。けど、セクシーさでいうたらうちの方が勝っとるで」
イリイナはより力を入れてミユウに抱きつく。彼女の柔らかい胸がミユウの腕を包み込む。
「何をおっしゃるのですか?ミユウさんは私のような瑞々しい体が好きなんです!」
アストリアも負けじとミユウの左腕に抱きつく。イリイナより胸の大きさは劣るが、力強い弾力でミユウの腕を押し返す。
(待って!両方からそんなことされたら~~!)
そう叫びたいが、声を出す力も出ない。逃げ出すこともできない。
ただただミユウの全身が赤く、そして熱くなっていく。
その後もミユウへの体の押し付け合いは拍車をかけていくことになった。
---
ミユウを挟んで行われたアストリアとイリイナの争いの終結が見込めなくなってきたころ、日が変わっていた。
「もう遅いですし、寝ましょうか」
「そうやな。決着もつきそうにないし、うちも眠とうなってきたわ。この勝負はまた今度にしようか」
「はい。望むところです。それでは、おやすみなさい」
「おやすみ」
イリイナが部屋の灯りを消すと、二人は眠りについた。
二人はミユウの腕から離れる。
(助かった。これでやっとゆっくり眠ることができる)
ミユウは一息つくと、目を閉じて眠りについた。
しかし、ミユウの地獄はその後も続くことになった。
「みゆうしゃ~ん、みゆうしゃんはだれにもわたしましぇ~ん」
アストリアがミユウに抱きついて、彼女のへそ回りを撫でまわす。
(ひゃん!ちょっと、どこ触って……)
また反対側からはシャツ姿のイリイナがミユウの胸まわりをいじる。
「みゆうはうちのもんや~。にげたらじぇったいにゆるしゃへんで~」
(そんなとこ、だ、だめ~!)
アストリアが優しくなぞるのに対し、イリイナの指はあたしの弱いところを的確につまむ。両側から種類の異なる責めが行われる。
今のミユウにはそこまでの体力がない為、文字通り“されるがまま”状態であった。
こうして事実上6回目のくすぐり(+お色気)地獄が開始されたのであった。
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