身バレ

連喜

第1話 ショタコン

 俺は趣味でネット小説を書いている。しかも、ショタコン小説だ。実生活では一切ショタコンではないけど、PVを稼げるので、気が付けばかわいい男の子が出てくるエッチな話ばかりに偏ってしまった。


 童顔で巨乳のJKが出てくる作品はたくさんあるし、とてもじゃないけど目立つことはできない。ショタコン小説も多いけど、大抵は女性が書いているものばかりだ。男が書くショタコン作品は数が少ないから、文章が下手でも比較的読んでもらえる。普通の作品は書いても読んでもらえないから、ショタコンものをせっせと書いて投稿していた。やはり、書くからには誰かに読んでもらいたい。読者のニーズに応えて作風がどんどん過激になって行った。もちろん妄想だが、実体験も混じっていた。小学生の頃に、近所に住んでた年上の幼馴染から自慰のやりかたを教えてもらったことや、その頃に、同性の友達や大人に対して抱いていた気持ちを投影している箇所もある。俺は人生を通じてずっと異性愛者だったことは間違いないのだが、高校時代、女性以上にきれいな男子がいて、ときめいたことがある。しかし、その人も異性愛者だったからそれ以上はなかった。


 俺はあの頃、中学校教師で担任のクラスの男の子と付き合うストーリーを書いた。ありきたりだけど、若い男の先生が成績が下がっている子に声を掛けたら、悩みを打ち明けられて、次第に親しくなっていくと言う流れだ。最初は純粋な気持ちで接していくが、生徒から「先生が好き」と言われたことで、先生の中にも彼に対する愛情が芽生えていることに気が付く。先生には彼女がいるけど、まだ独身で20代という設定になっている。この陳腐な設定にも、続きが読みたいという人が何人かいて、気が付いたらこの話を延々と書くようになっていた。


 ヒロインの男の子は整った顔をしていて、性格もかわいい。ノンケの男でもこういう子だったらイケるかなと想像して書いて行く。好みのジャニーズタレントの動画を見ながら、色んな場面をイメージして、できるだけ生々しく書くようにしていた。読んでくれる人の中には、俺が本当にティーン好きのゲイだと思う人も出て来た。PVも伸びて行く。他で注目されたことがないから気分がいい。


 さらに、俺はリアリティを追求した。小、中、高の男子が書いた文章を読んだり、Twitterをフォローしたりしていた。その子たちはみな前向きで、読んでいて面白かった。俺は応援するつもりで返信したり、コメントを書いたりしていた。変な作品ばかり書いているから、はっきり言って気持ち悪かっただろうと思う。彼らからのフォロバはなかった。






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