第4話 (その7)

 重い本を抱きかかえるようにしてうずくまったまま、私は叔父に背を向ける。取り敢えずベッドには入ったのだからそれを見届けてそのまま部屋を去っていってくれる事を私は期待したが、そうするどころか叔父は私の肩にそっと手を乗せたかと思うと、そっぽを向いている私の顔を覗き込むようにして身を乗り出してきた。まさかお休みのキスでもするつもりなのだろうか?

 私は反射的に身をこわばらせた。次の瞬間、叔父は私の両肩を組み伏せるようにしてベッドの上に押さえつけ、無理矢理に唇を奪いにかかってきたのだった。

 突然のことで、身をよじってかわす間もなかった。煙草臭い唇が私の唇をぴったりと覆って、無理矢理に吸い付いてきたのだった。あまりの出来事にただびっくりするだけの私に対し、薄気味悪い叔父の舌が強引にねじ込まれてくるのだった。

 やさしいお休みのキスでなど、あるわけがなかった。餓えた獣が獲物を押さえつけるような、そんな強引で乱暴なふるまいだった。

 私はどうにか逃れようとしたが、子供の力で大人の男性にかなうはずもなかった。口腔の中でうねうねと蠢動するグロテスクな肉塊の存在に、私はひたすらに怖気を振るうばかりだった。

 それでもどうにか、必死で身をよじらせているうちに、偶然にも右の肩が叔父の手からすり抜けて、私は傍にあった父の本を手にし、それを夢中で振り回した。

 その本だけが、今の私を守る全てだった。

 重い本の角の部分が側頭部にまともに直撃し、叔父は一瞬だけ怯んで後ずさった。彼が私からほんの一歩離れたその瞬間をつくように、私はベッドから転げ落ちるように這い出して、慌てて寝室から駆け出して行く。

 遠くでまた一つ、雷鳴が鳴り響いた。

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