第13話

気が付くと妻を埋めた庭木に寄りかかっていた。

気を失っていたらしい。

夕べのあれは夢じゃなかったんだ!改めて戦慄する。


時計を見ると朝9時だ。遅刻だと一瞬焦ったが、体調が悪いと言って休むことにして会社に電話を入れた。


そうすると受付の女性が「あらっ、先程、奥様から体調が悪いので休みますと連絡がありましたよ」

そう言われて、どきっとしたが、まさか幽霊が電話するか?と思い直して、謝って電話を切った。

直ぐにひまりに電話を入れた。

「何?仕事中よ」と言う。「俺が会社休むって電話したか?」そう聞くと「電話するわけないでしょ。何バカなこと言ってるの!」と言って切られてしまった。

 

俺は背筋が寒くなった。


まさか、地中から生き返って、と思って、庭木の周りを見回しても掘り返した後は無い。


じゃあ、誰が?と考えても思いつかない。


自分を見ると寝巻はドロドロになっているし、裸足だ。誰かに見られたらと思って、ベランダから中へ入って、全部脱ぎ捨てて、洗濯機に突っ込み回す。

そして洗面所のタオルを取って風呂場のドアを開けた。


シャワーと思っていたが、湯船から湯気が立ち上っている。えっと思っ指先を入れると、確かに温かいと言うより熱めだ。夕べから炊きっぱなしだったかと思って火を見ると消えている。


ドキッとしたが、温度設定で一定温度で消えることを思い出した。自分が設定したんだった。

シャワーでサッと汚れを落としてから湯船に浸かった。大きく息を吐いて気持ちよさを感じた。

急にザッーと雨の降る音がした。あれっ?さっきは晴れてたのにと思ったが、こういう事もあるかと思い直して、湯船のお湯で顔を洗おうと、両手でお湯をすくい上げようとしたとき、そこに妻の血まみれの顔が浮かんだ。


「うわっ」と叫んで、上を見る。


そこには大きな血まみれの妻の顔が広がっていた。


「ぎゃーっ」悲鳴をあげてバスルームから飛び出す。


裸でリビングに入ると外が真っ暗になっている。

部屋も電気が点いていないので真っ暗。電気のスイッチを入れても電気が点かない。


懐中電灯は?と考えて、庭だ!と思い出した。それで、ベランダの窓ガラスを開けると、真昼の明るさだ。

えっと思ってよく見ると、室内に入ったときカーテンも一緒に閉めたらしいことが分かった。慌てて気が付かなかった。

振向いても妻の顔は無かった。

カーテンを全開にして、下着や着替えを取りに二階へあがった。


着替える前に、身体をまだよく洗っていないことを思い出した。

風呂場の妻の顔は気のせいだと思うようにして、着替えとタオルを持って下のバスルームへ戻った。

電気を点けて、天井も見て、窓の外は明るい。


湯船に足を入れた。


「ぎゃーっ」絶叫した。

 

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