第3話


「――ちょっと、そいつは僕の獲物なんだけど?」


 そう言って頬を膨らましてふて腐れている子供が一人、そして……。


「……」


 そんな子供を止める事すらせずに……というか、むしろ存在していないかの様に自分の視界から消して何も反応していない男性が一人。


 正直「ここまで凸凹なバディがいていいのだろうか……」という程目の前にいる二人は全然かみ合っている様に見えない。


「……どうやら今回の依頼の人たちはなんとしても期日までに『神殺し』を完了したいみたいだね」


 神亀は二人を見ながら根岸にコソッと話しかける。


「え」


 今回、根岸たちに舞い込んできた依頼は「地域の祭の準備中に謎の事件や事故が多発しており、その原因の調査をお願いしたい」というモノだった。


「そして、調査の結果『神殺し』が必要になった場合は『神殺し』をしても良いとも言われている」

「それは確かに……そうだが……ってまさか」


 そこで根岸はそれまでの話の流れと目の前の二人を見てピンと来た。


「うん。どうやらこの二人も私たちと全く無いようで依頼を受けていたみたいだね」

「……」


 ちょっと考えてみればすぐにわかる事だった。


 確かに一組よりも二組の方が成功率は上がるだろう。当たり前の話だが。


「でも……普通はありえるのか? そんな話」


 そう尋ねると、神亀は「あまり……ないね」と答える。


「もう! 何を二人でコソコソと話してんだよ!」


 ずっと二人で話していたのが気にくわなかったのか……いや、コレはどちらかというと「しびれを切らした」という表現の方が正しいだろうか。


「……」

「……」


 どちらにせよ、子供っぽい言動や見た目の割に多少は「待て」が出来るらしい。


「全く。それにしても……驚いたなぁ。本当にバディがいるよ」

「……どういう意味だ」


 そう尋ねると、少年は「えー」とワザとらしくもったいぶった言い方をする。


「言葉通りの意味だよ。だって冥さんは今まで一人――」


 少年がそう言った瞬間。根岸の隣から何やら「キリキリ」という糸……いや、弦が引っ張られる様な音が聞こえた。


「え。めっ、冥さん?」

「――おしゃべりはそこまで。コレ以上の詮索は無用よ」

「……分かったよ」


 さすがに分が悪いと悟ったのか、少年は両手を挙げて「降参」というポーズを取った……のだが。


「――」

「……え」


 神亀はそれに構わず少年に向かって矢を放ったのだった――。

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