第10話 黒幕の件

 5分程で3人は目覚めたよ。そして目覚めていきなり悪態をつきだしたんだ…… うるさくて耳が痛いよ。


「おい、解きやがれ! 俺たちのバックに誰がついてるか知ってるのかっ!?」


「今なら許してやるぞっ!」


「おい、クソガキ! 舐めた真似してると殴るぞっ!!」


 聞くに耐えないから僕はエルに言ったんだ。


「もう面倒だからこのまま放置しとこうかな? エルはどう思う?」


「そうですね、ユージ様の思うままでよろしいかと思います。このまま放置しておけば魔物か魔獣が後始末してくれるでしょうし」


「だよね。僕もそう思ったんだ。だからお兄さんたち、ここでお別れだよ。名残は惜しくないけど、頑張ってね。なんなら今狩った大牙イノシシの血をお兄さんたちにかけておこうか? そしたら苦痛の時間は短くて済むだろうし」


 僕もエルも無表情でそう言うから、3人は本気だと悟ったみたいだね。


「ま、待て、早まるなっ!?」

「な、何でも答えるから!」

「せめてこの縄ぐらいは解いてくれ!!」


 必死にそう言うけど、僕は本心からもう面倒だと思ってるんだよね…… どうしようかな? 僕がそう思っていたら、エルが3人に質問を始めてしまったよ。


「では1つお聞きしましょう。あなた達3人のバックにいる者は誰ですか?」


 エルの質問に1人が答える。


「冒険者ギルドのサブマスターのハーレイさんだよ! ハーレイさんは妻も子もいるけど若い娘が好きでな! それで今までは金と権力で若い娘をモノにしてきたんだが、受付のエミリーだけは落とせなかったようでな。腹いせにエミリーの弟を陥れろって依頼が俺たちにあったんだよ。だから、俺たちは依頼を遂行しただけで悪くないんだ! さあ、喋ったんだからこの縄を解いてくれ!」


 ハア〜…… 居るよね、こういう人…… 自分たちは命令されたから悪くないんだ、命令したヤツが悪いんだって。いや、その命令を実行したら十分に悪い人だからね。僕は黒幕が分かったからエルに言ったんだ。


「聞きたい事は聞けたから、もう行こうよ。エル」


 僕がそう言うと3人が慌てだす。


「待て待て、ちゃんと喋ったんだからこの縄を解いてくれ!」

「そうだ! 約束しただろう!」

「俺たちはもうこの国を出るから!」


「約束? 私はあなた達と何も約束はしておりませんが? 私の質問にあなた達が勝手に答えただけです」


 エルがあっさりとそう言うと3人がまた悪態をつく。


「「「だ、騙したなぁー!」」」


 失礼な、誰も騙してなんかいないのに。僕は何も言わずにエルに合図をしてその場を離れたんだ。3人とも「待ってくれ」や「助けてくれ」なんて言ってたけど無視しておいた。そして、香車きょうしゃの能力である【隠密】を使って気配を消して3人を見張る。 

 案の定、僕とエルが居なくなった途端に3人は相談を始めたんだ。


「おい、信じたかな? アイツら」


「大丈夫だ。コレでサブマスのハーレイは糾弾されて失墜だ。これで依頼は完遂だな。それよりもこの縄、中々解けないな?」


「クックックッ、本当はギルドの経理部長をしているサヨリの嫉妬からの依頼なんだけどな…… しかし本当に解けないな、早く解かないとヤバいぞ」


 解けないよ、その縄は。神結びだからね。くくった人じゃないと解けないんだ。縄抜けなんて出来やしないからね。でも、経理部長のサヨリが黒幕だったんだね。まあ、顔も知らない人だけど。嫉妬からって言ってるから、エミリーさんに嫉妬したのかな? 多分そうだろうね。


「ユージ様、流石です。彼らの嘘を見抜かれていたのですね。私はユージ様がこのまま町に戻るのかと思っておりましたが…… 勿論、その時はお止めするつもりでしたが」


 エルがそう言ってきたので僕は種明かしをしたんだ。


「エル、実はさっき大牙イノシシを倒してレベルが上がったんだ。新しい駒の能力を使用したんだよ。彼らが居たから直ぐに言えなかったんだ、ゴメンね」


 そう、僕のレベルが上がった事で新しい駒が1つ増えたんだ。その駒の能力によって彼らの嘘を見抜けたんだよ。



名前:サンマ・ユージ

性別:男

年齢:十二歳

種族:人

職業:【無職】神級職

レベル:13

生命力:228 魔法力:342

体力:170 魔力:246 器用:199 敏捷:270(+20)

攻撃力:182(金精刀+100)

防御力:158(コア鎧+90)

スキル:【将棋の駒こま】【の刀技】

 【歩兵級】 剣技 体術 生活魔法

香車きょうしゃ

 【斥候級】 隠密 敏捷微上昇 気配察知

桂馬けいま

 【騎兵級】 槍技 敏捷上昇 初級属性魔法

銀将ぎん

 【隊長級】 初級回復魔法 浄化魔法

金将きん

 【将軍級】 中級回復魔法 中級属性魔法 空間魔法

飛車ひしゃ

 【軍師級】 高速思考 虚偽きょぎ看破


無回流むかいりゅうレベルMAX 



 新たな駒【飛車ひしゃ】の虚偽きょぎ看破で3人が嘘を言ってるって分かったんだよ。


「そうだったんですね。おめでとうございます。今日はお祝いにお背中をお流しいたします!」


 いや、それはお祝いじゃないからね、エル。エルの願望でしょ。僕はそれは遠慮しておくよって言うとガックリと項垂れている。


「よし、真相も分かったし町に戻ろうよ」


「彼らはこのままですか?」


「うん、このままにしておくよ。大丈夫、【金将きん】の空間魔法で彼らを縛ってる木ごと別空間にしてあるから、魔物に襲われる事もないよ。大切な証人だからね。ギルドに戻ってサブマスのハーレイさんと内密に話をして、経理部長のサヨリの事を伝えてハーレイさんを連れてここに戻ってこようよ。その後はギルドに任せるよ」


「お見事です! ユージ様。立派に成長なされて…… 成長具合を確認する為に今日は共にお風呂に入りましょう!」


 だから入らないってば! もう、エルはコレが無ければ本当に優秀なんだけどな……

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