10話:支配者と勇者の関係
「まず、お前は死ぬ前に支配者の
ニーグルムは頷くことで肯定する。
「遥か昔、黒の支配者と竜種が闘ったことがあります。その中に私はいました」
ニーグルムはその時を思い出すように語る。
「一人、竜種が住まう土地に来たその者は、闇の軍勢すら召喚せずに数千はいた同胞を倒し、闇の軍勢として取り込みました」
ほとんどの竜種を倒し、闇の軍勢に加えた黒の支配者はこう告げた。
世界はいつも不平等で公平などありはしない――と。
言葉の真意は今でもわからないと、ニーグルムは言う。
「数ヵ月後、黒の支配者は世界のすべてを敵に回し数十年もの間、世界を支配しました。その黒の支配者は『魔王』と恐れられました」
だが、その支配は唐突に終わりを告げた。
「神にすら届きうる力を得た黒の支配者に危険性を感じた神々が、勇者や他の支配者に力を与えて討伐したのです。」
驚愕の事実にフェイドは目を丸くして驚く。
それは聞いたことがなかったからだ。
「聞いたことがない」
「当然でしょう。神々はその歴史を闇へと葬ったのですから。それまで数人の黒の支配者が確認されましたが、力を得る前の弱い段階で倒されました」
「まさか、俺が殺されそうになったのも、神のせいだと?」
「はい。黒の支配者は、世界に存在してはならないということでしょう」
神のせいで家族が死に、村のみんなが殺されたということになる。
フェイドは神など信じていない。
「すべて、神の仕業だと、そう言っているのだな?」
「はい。最初の黒の支配者に何があったのかはわかりません。ですが、神が黒の支配者を世界から排除しようとしているのは事実です」
「そう、か……」
フェイドは俯き、拳を握る力が強くなる。
憎き相手は勇者や人類であり、その裏にいるのが神だということに。
それでも復讐の歩みは止めない。止めることができない。
復讐を止めてしまえば生きる意味が、戦う意味がなくなってしまうから。フェイドにとって復讐は生き意味であった。
死んだ家族に、村のみんなに顔向けできないから。みんなの死を、意味のない死にしたくなかったから。
だから復讐をやめない。
もしも……。
「もしも、神が敵だというなら――殺すまでだ」
フェイドの発言にニーグルムは驚きもしないし、止めすらしない。
ニーグルムにとって、フェイドがすべてなのだから。
「ニーグルム。お前は以前よりも力を増しているな?」
「はい。竜種の中で、私に勝てる者は存在しないと宣言します」
「そうか。元の姿には戻れるか?」
「可能なようです」
「それだけ分かれば十分だ。最古の黒の支配者が使っていた技とかは覚えているか?」
神が敵になるなら、今以上に強くならなければならないと理解したフェイドは、最古の黒の支配者を知っている唯一だろう存在であるニーグルムにそう尋ねた。
その理由は、一時とはいえ、世界を支配した存在だ。それと同じ力を持っているなら、同じことができると。
「いえ。私は見ておりません。ですが、一回だけ目のあたりにしました。すべてが闇で染まり、その後には何も残っていませんでした。人も、森、街も、何もかも」
「なるほど」
話を聞くだけでは理解できないフェイドは、何かしら広範囲の殲滅魔法を使ったのだろうと推測していた。
本人は遥か昔に死んでおり聞くことは叶わない。
「残念だ。だが、神すら倒せる力を付けないといけないな」
「その通りかと。神は支配者や勇者が敵わないと知ると、何かしらの介入があることでしょう」
「だな」
頷き、フェイドはさらに強くなることを決意するのだった。
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