第4話 翌日、やっと教習所へ

 タケシに魔法を伝えた翌日である。

 

 朝からまたやって来たタケシはやっと本来の目的を思い出してくれたようだ。


「いや〜、昨日はスマン。まさかあんなにフラフラになってしまうとは思わなかったんだ。魔力切れの事を失念していたよ。それに、俺は大人になってから魔力に覚醒したから、元の魔力量が少ないんだろうな? あの程度で気絶するなんて…… やっぱり子供の頃から魔法について知っておきたかったな……」


 私は聞かれないから黙っていた。魔力量を増やすのは年齢は関係ないんだという事を。これ以上、タケシに魔法について、今のところは教えるつもりがないからな。それに、タケシ以外に伝えるつもりも無い。タケシは口も固いし信用出来るから伝えたのだ。


「よし、それじゃ今日こそは教習所に行こう!」


 そして、タケシが運転してきた自家用車だというパトカーに乗る私…… 私用に使っていいのか?


「ん? どした? タケフミ…… ああ、この自家用車か。心配するな、正式に買い取って俺の名義になってるからな。但し無線はそのまま繋がるから時々、煩いけどな」


 本当か嘘かは分からないが、パトカーを買い取りなんか出来るのだろうか……


 教習所に着いたらタケシが受付に行くのに着いていった。受付の女性にタケシが軽い口調で話しかけた。


「よっ! 真理! お客さんを連れてきてやったぞ!」


 そのタケシの軽い言葉に真理と呼ばれた20歳前に見える女性が辛辣に言った。


「それなら邪魔! そこを退いて! ようこそ、当教習所へ。本日はどの教習をお望みでしょうか?」


 私にはにこやかな顔でそう言ってきたので、私は普通自動車免許の取得を目指していますと答えた。


「はい、有難うございます。それでは、コチラの用紙に必要事項のご記入をお願いできますか? 費用は350,000円程になりますが、ローンも組めます。如何いかがいたしますか?」


 私は一括で支払う旨を伝えた。何故か拗ねていたタケシが私にこう言ってきた。


「おい、ついでに自動二輪も取っておけよ。バイクがあると便利なんだから」


 なるほど、確かにと思った私は受付の女性にそれも申し込む。余分に150,000円程かかるが、大丈夫ですと答えて支払いも済ませた。


「教習の日時はコチラの予定表を参考にしてください。取りあえずは仮免許の取得を目標に頑張って下さいね。それと、コレはご忠告ですが、ご友人は選ばれた方が良いかと思います」


 ん? タケシの事かな? 


「いや、このタケシとは同級生でずっと世話になっていますから…… 無くてはならない友です」


 私がそう言うと、女性が驚いたように呟いた。


「ウチのクソ親父にこんなマトモな人が友だなんて…… それにとても若々しいしクソ親父と同級生だなんて信じられない……」


 タケシの娘さんなのか!? 私的にはそっちにビックリして思わずタケシを見てしまった。タケシはニヤニヤしながら私を見て言う。


「どうだ? 俺に似て美人だろ? しかも照れ屋さんなんだ。あ、だが親友のお前と言えども娘はやらんぞっ!!」


 タケシよ、バカか? お前の娘さんだと言う事は私とも親子ほど年齢が違うんだぞっ! そんな娘が私に惚れる訳もないし、私もお前の娘に手を出したりしないぞっ。


「バカは放っておいて下さいね。ウチのバカ親を無くてはならないなどと高評価していただき、本当に感謝しますが、友は選ぶべきです。今からでも遅くはありませんので、ご一考くださいね」


 うん、タケシよ…… 娘さんの言葉でお前の家での立場が少しだけ私に分かったよ…… どうしてもの時は家に来てくれ。酒ぐらいなら用意するから好きなだけ愚痴を聞こうじゃないか……


 それから私はそのまま学科講習を受け、昼休憩を挟んで午後からも講習を受けた。それが終わり帰ろうとした時に、真理ちゃんから声をかけられた。


「お疲れ様でした、武史たけふみさん。お名前がウチの馬鹿と字が同じで読み方が違うんですね」


 真理ちゃんは制服姿ではなく私服になっていた。


「ああ、そうなんだよ。中学1年の時に同じクラスになってね。そこで意気投合したんだ。本当に真理ちゃんのお父さんにはお世話になってるんだよ。私はタケシには頭が上がらないぐらいなんだよ」


 と私が言うと真理ちゃんが信じられないという顔をして


「ええー? 本当ですか? うーん…… にわかには信じられないなぁ」


 何て言うので理由を私は聞いてみた。


「だって、未だに若い娘を見たら声をかけてナンパしようとするんですよ。それも娘である私の友達にまで。母が亡くなってもう15年になりますから、父が自由恋愛するのは構わないんですけど、それだけは止めて欲しいって頼んでも聞いてくれなくて……」


 うん、気持ちは分かるよ真理ちゃん。今度、オジサンからタケシに注意しておくからね。私が心の中でそう思っていたら、真理ちゃんが


「そうだ、タケフミさん。これからウチにいらっしゃいませんか? 私も父と2人で夕食を食べるのは嫌なので」


 と言ってきたけど、私は遠慮してしまう。


「いやいや、そこは仲良くしてやって欲しいなぁ。それに、私もこの後少し用事があるから、又の機会にって事でお願いします」


 私がそう言うと少し残念そうな顔をしたけど、真理ちゃんは素直に


「そっか、用事があるなら仕方ないですよね。でも、絶対に次にお誘いした時は来てくださいね」


 とニッコリと微笑みながら言ってくれた。うん、とても良い娘だ。私は勿論だよと頷きながら真理ちゃんと別れた。そして、周りに誰も居ないのと、監視カメラも無いのを確認してから、自分に【不可視】をかけた。

 そして、真理ちゃんの30メートル後ろから着いていく。断っておくがストーカー行為をしているのではない。


 私と話をしていた時に、真理ちゃんに対する悪意を【気配感知】で感じ取ったのだ。真理ちゃんはとても可愛らしい娘さんだから、ストーカーかとも思ったがこの悪意はそういうたぐいのものとは違うと感じた。親であるタケシは警察に勤めている。元犯罪者から恨まれてる事もあるだろうと思うので、そっち関係かも知れない。


 私はその悪意を持つ人物を特定した。そして、ソイツと真理ちゃんの間に入って真理ちゃんの後ろを着いていくのだった。 

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