かっこいい?
ん……なんか暖かい? ……あぁ、そっか。ミナさんとミュレと寝たんだった。
「ティアお姉ちゃん、おはよう」
「……ミュレ、おはよ」
ベッドには私とミュレの二人しかいなかった。
「ミナさんは?」
「二人とも朝食出来たわよー」
そう声が聞こえてきた。いい匂いがする。あぁ、私たちより早く起きて朝ごはん作ってくれてたのか。朝起きたら暖かい朝ごはんがある……夢にまで見た展開だね。
「起きよっか」
「うん!」
ミュレと一緒に起きていい匂いがする方へ行く。
「お母さんおはよう」
「ミナさん、おはよ〜」
「二人ともおはよう。温かいうちに食べちゃってね」
「「はーい」」
いただきます、と。
美味しい! ほんとに美味しい!
「美味しい!」
「うん。ほんとに美味しいね」
「良かったわ」
「それじゃあ、お世話になりました! もう行くね〜」
「ティアお姉ちゃん行っちゃうの?」
「今日も泊まってったらいいのよ?」
「流石に今日は出ていくよ。ミュレも別に一生の別れって訳じゃないんだからさ、そんな顔しないで? しばらくこの街にいる予定だからね」
「ほんと?」
「ほんとだよ〜」
「うん。分かった」
いやー、居心地が良すぎてずっと迷惑かけちゃいそうだからね。早い所自立しなければ。
その後ミナさんにお昼だけでも食べてってと言われたが、遠慮しておいた。昨日はゲームの世界だと思ってスルーしたけど、ここが現実なら絶対身分証がないと不便だもんね。なんなら冒険者になりたいし。ただ、絡まれるテンプレはいいかなぁ……ゲームの世界で体験してるんだよね。私が不遇種族って理由で……まぁ、その時はボコボコにされたけどね。(もちろん復讐はしたよ)
「それじゃ、またね〜」
「また来てね! ティアお姉ちゃーん!」
「いつでも来てくれていいのよ〜」
手をブンブン振りながらそう言ってくれるミュレ。
その後ろで小さく手を振ってるミナさん。
私も手を振りながら出てきた……は、いいものの冒険者ギルドの場所知らない。今から戻って聞くのは……くっ、そんな恥ずかしいこと出来るわけが無い! (普段の言動は恥ずかしくないよ)
焦るのは早いよ、私! その辺の屋台か出店で何かを買って聞けば……てっ、私お金全然持って無いじゃん! 昨日リブに両替? してもらった分はあるけど、少なすぎてあれを使うのは、まだ躊躇われる。あれ? そもそも少ないのかな? あれ。この世界のお金の価値がまだよくわかんないや。
んー、まぁ、地道に探せばいいかな。この街を探索だぁぁぁあ!
「いや、普通にあったよ」
え? もう普通に探索する気分だったのに、歩き出して5分も経たずに見つけたよ。と言うか文字とか普通に読めるんだね私。はぁ、絡まれたら面倒だなぁ。まぁ、正直に言えば、私ラノベの主人公みたいに目立ちたくないわけじゃないからいいんだけどね。むしろ最強のティアちゃん強い! かっこいい! 可愛い! って言われたいよ。有名になってかっこいい二つ名とかつかないかな……血祭りのティアとか。赤髪だし。
よし、入るか。
お邪魔お邪魔〜。
扉を開けて入ると中にいた冒険者? の目線が一気に私に注がれる。
「依頼人か?」
「はっ、当たり前だろ。あんなのが冒険者な訳ねぇだろ」
「それもそうか」
えー、あんなのだけど、冒険者になりに来たんだよ? 絶対絡んで来るじゃん。いや、逆に絡んで来ないかな? まぁ気にしなくていいや。来たらボコボコのボコにしてやるよ。
「どういったご用件でしょうか」
おぉ、受付嬢だ。いいね。緑の髪に黄色い瞳。可愛いね。
「冒険者になりにきたんだけど」
「おいおい! お前みたいなガキが冒険者になれる訳ねぇだろ!」
わぁお。予想通りすぎてビックリ。まさにさっき喋ってた二人の内の一人だね。なんかデカい大男。後ろには大きな戦斧を背負っている。
「あなたみたいな大きなガキでもなれてるんだから、大丈夫じゃない?」
「あぁ?」
ぴきぴきとこめかみが動いている。怒ってるなぁ。全然怖くないや。いや、私たちのことを遠巻きで見てる人達は怯えてるな。
「てめぇ、誰に口聞いてんのか分かってんのか?」
「しらないけど」
「ちょ、あ、あなた、直ぐに謝った方がいいですよ!? ギラルさんは性格がちょっとだけあれですけど、実力はあるんですから」
受付嬢が小声でそう言ってくる。
実力……ねぇ? レベルは多分100……いや、50も無いと思う。
「大丈夫だよ。私の方が強いし」
「……おい、今すぐ訓練場に行くぞ。殺してやる」
血管がめちゃくちゃ浮き出てる。もしも髪の毛がなかったらメロンみたいになってると思う。
「や、やめておいた方がいいですよ……今ならまだ間に合いますから」
「うん。行かないよ?」
「あぁ? クソガキ、あんだけ大口叩いといて逃げんのか?」
「メリットがないよ。お金賭けようよ」
「はっ、いいだろう。俺が負けたら金貨3枚出してやる」
「じゃあ行こう。私が負けたら――」
「要らん。お前はここで殺す」
「……殺すってありなの?」
「そ、そうですよ! ギラルさん! 冒険者同士の戦いは自己責任ですけど、冒険者同士じゃなければただの人殺しですよ!」
「だったら早くこのクソガキを冒険者にしろよ!!!」
えぇ、私みたいなガキが冒険者になれる訳ないだろ的な話で絡んできたのに。
「あ、あの、冒険者にならなかったらギラルさんも手を出せないと思うので……」
「いや、冒険者になりに来たんだから、なるよ。どうすればいい?」
「で、ですが――」
「だれでも自由になれるんでしょ? 早く」
「わ、分かりましたよ……文字は書けますか? 書けるのならここに記入をお願いします」
名前・ティア
年齢・15歳
職業は……魔法使い? いや、でもメイン武器刀だしな……よし。
職業・最強
(文字はなんか普通に書けた)
「はい、これでいい?」
「え、えっと……大丈夫です!」
職業のところ見て、絶対諦めたね、この受付嬢。まぁいいけど。
「おい、登録できたならさっさとこい。まぁ、今地面に頭を擦り付けて謝るなら許してやるがな」
土下座じゃん。しないけど。
「こっちのセリフだよ。今なら許してあげるけど?」
「……マジで殺す」
私のカッコつける為の土台になってもらうよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます