感情乱高下お針子はイケメン騎士に見い出され、王宮に花開く

安城いふ

プロローグ

「ローズ、……君は、美しい」

 生れて初めてのダンスをあわあわとこなす私に、イケメン騎士が囁く。


 ここは王宮のバルコニー。宵闇の中には、見渡す限りの白い薔薇が咲き誇っている。

大広間では、王妃主催の舞踏会の最中だ。


みんなダンスに夢中で、私たちがふたりきりでここにいることなど、気がついていない。


 大広間から漏れ出てくる曲が変わる。

イケメン騎士様は、曲の終りに合わせて離れようとする私の腰に手を当てると、ぐっと引き寄せた。


瞳の中には、閉じ込められたように映り込む、私の姿。


「ア、アラン様……?」

ただでさえコルセットで締め上げたお腹が苦しいのに、胸までどくどく脈打って、きゅううっと引き絞られるように痛くなる。


 神様、この胸のどきどきは――

更年期、ですか? 


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