第五四話 冬将軍の到来と終戦
なお、糖度の高い酒は口当たりが良くて飲み過ぎてしまい、翌朝に目覚めたら王城に間借りした寝室だという始末で、しかも両手に花ならぬ下着姿の
「………… 微妙な
先日にカストルム牢獄を落とした
今度は一人増えた上、毛布の中で直接触れ合う人肌の
(近隣のベルクス王国軍が三日
思わぬ手違いで部族国の各領軍と対峙している連中が先走り、軍勢の一部を
不測の事態が生じた場合、中央広場を狙える位置に潜ませた魔人兵らに命じて、容赦なく焼き打ちを敢行させるべきかと思案しつつ、自然な動作で上半身を起こせば両腕に抱き付いていたリアナとレミリが
「ん、うぅ」
「うぁ…」
小さく呻いた二人の眠りを
ざっと身なりを整えた頃合いで遠慮がちにドアがノックされ、体裁の悪さで
「何をしている、シア?」
「はぇ!? か、鍵が無施錠だったので、そろそろ起こした方が良いかと… 興味本位では無いんです、信じてください、あぅ~」
勝手に自爆する蒼魔人族の娘に向け、口元に人差し指を添えて “静かに” と言い含め、外套片手に扉を押し開いて廊下側へと出る。
「おはよう、昨夜は世話になった」
「あ、いえ、気にしないで下さいね」
その際にリアナがベッドへ飛び込み、“姉さんが
「うぅ、私だけ仲間外れだったのです」
「物理的に無理があるからな……」
王城内に
こちらとしては年若い娘の添い寝など褒められないが、何やらしょんぼりとしているので
「ふわっ、えっと… 朝食の準備ができてますけど、食べますか?」
「あぁ、シアの手料理は美味いからな、有難く頂こう」
柔らかく微笑んだ青白い肌の娘と一緒に朝食を済ませた後、午前中は臨戦態勢の各部隊に足を運んでいたものの、午後にはベルクスの首都駐留軍より届いた書類束を巡って慌ただしさが増していく。
事前の取り決めに従い、複数枚の羊皮紙で提供された内容は師団単位の備蓄状況や、配給予定の品目及び分量などである。
本日の定期連絡で再調整されたという数字を
「何処まで… 信じて良いか、一抹の疑問あり」
「ん、あいつらが作った資料だから当てにならない」
会議室に
前者はざっと数字を検証した上の判断であり、後者は野性的な本能に根差した直観によるものだろう。
「まぁ、俺もジグルの立場なら、馬鹿正直な情報は出さない」
「じゃあ、これに何の意味があんのさ、クラウド」
「色々と誤魔化すにしても限度がある。駐留軍の奴らも、全部を持ち出したいなど言える立場ではないからな、
さらりと疑問を受け流すと、軽装鎧を
「アリエル様、真面目にやりましょうよ」
「肩肘張っても疲れるだけ、手慣れてないわね」
先代吸血公の治世から補佐を務める才女の余裕か、ジト目のリアナに動じることなく、緩い雰囲気のまま羊皮紙の記載項目を精査する。
何気に招集した二領各隊の主計係より鋭い指摘をしてくるので、段々と理不尽に思えてきた。
「むぅ、部隊の指揮以外もできないと
「姉さん、姫様の騎士に張り合うのは… どうかと……」
おずおずと横合いから
最大三名しか叙任されず、伝統的に領内の貴族階級を飛び越えて吸血公に次ぐ権限を有しているため、ディガル部族国の内部では
「戦時は良いが、平時だと元傭兵には身に余る立場だな」
「そこは私達が姉妹で支えますから、御心配なく♪」
「微力ですけど… 尽くします」
「あぁ、遠慮なく頼らせて貰おう」
参謀や軍師の真似事ならまだしも、割り当てられた地区に属する都市や町村の管理等々、未体験の部分が多過ぎて泥沼に嵌りかねない。
一抹の不安を胸に抱きつつ、書類の
越冬用の物資が集積された中央広場を半包囲する手勢の監視下にて、遠征先での
その際、不燃焼気味な指揮官と嬉しそうな一般兵の間に、浅からぬ
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