第26話 広げた手
くい込んでいた手首の縄の傷が痛む
長い間動かせなかったせいか足元も覚束無い
一番最初に見えたのは大きく手を広げ私を抱きしめようとする父の邪悪な笑顔
娘の私が父の声と誘拐犯の声が同じなことに気が付かないはずもない
父の身体に脱出用に拾った錆びた食事用ナイフが吸い込まれる
#呟怖
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