(6)

 どうやら……このフェリーは外部との通信が遮断されてるらしい。

 なので、ガスマスクに仕込んでる小型無線機は使えるが……。

『映りません……。そっちの小型カメラから送られてくる映像が何も映りません……』

 トイレに隠れてる『教授』の泣き言はノイズ混り。

 『教授』には姐さんの携帯電話ブンコPhoneを渡してるが……その携帯電話ブンコPhone上で走らせてる、俺が被ってるガスマスクに仕込まれてる小型カメラの映像から送られた映像を表示するアプリがバグってるようだ。

 一体全体、どんな仕組みなのか判らないが……素人の俺からすると、すげ〜単純なアプリが、何故か外部……インターネット上に有るサーバーか何かと通信出来ない状態では巧く動かないらしい。

「貴方達は『魔法使い』のようですが……我々全員を『魔法』で倒すより先に、あなた達2人が死にます。降参して下さい」

 部屋に入って来たのは、黒いボディアーマーに黒いガスマスク付きヘルメットに軽機関銃サブ・マシンガンで武装した4人。

 警告の言葉は日本語だが……明らかな「外人訛り」。

 俺と姐さんは両手を上げ……。

 手慣れてるようだ。

 催涙ガスか何かを使ったとは言え、一瞬で久米を鎮圧出来た。

 だが……何者だ?

 ヤー公? 俺達みたいな「自警団」?

 いや……何か、雰囲気が違う。

 「本土」の「正義の味方」?

 でも……奴らは……特技や能力が違う連中を組合せてチームを組む事が多い。

 あとは……軍隊か警察か……傭兵って所か……。

 その時……。

 4人の兵士(多分)の背後に白い大きな影。

 いや……何故か顔が血か何かの液体で赤黒く染まっている。

「うがあああッ‼」

 兵士(多分)の内、が振り向く。

 振り向く事が出来なかった2人は……既に頭をの爪でヘルメットごとグチャグチャにされていた。

「伏せろッ‼」

 久米の叫び。

 俺と姐さんは久米の指示に従い……。

 閃光と銃声。

 

 今度は……毛皮の防御特性を……銃弾を防ぐのに向いてるのは同じだが、に変えたらしい。

 2人の兵士(多分)は自分が至近距離で相手を銃撃したつもりが……逆に至近距離から弾き返された弾を浴びる羽目になった。

 大半の弾はボディアーマーやヘルメットで防ぐ事が出来たが……それでも……そこそこ以上のダメージを受けちまってるようだ。

 そして……。

 ドゴォッ‼ ドゴォッ‼

 轟音が2連発。

 ボディアーマーが歪むほどの強力極まりない打撃。

 2人の兵士(多分)は……ガスマスクから血を吹き出しながら宙を舞う……。

「おい……大丈夫だったのか?」

「ああ、催涙ガスを食ったが……目と喉の粘膜を高速再生させたら……何とかなった」

「何とかって……おい……」

 どこまで化物なんだ、こいつは……?

「前にも使った手だ……ところで……今更なんすけど刑務官センセイ……」

「何ですか?」

「やっぱり、変すよ、この仕事……。えっと……もう遅いっすけど……こいつら、そもそも、?」

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