拙者、なにがなにやら侍!
『――これからは貴方の代わりに、僕がカギリさんのパートナーになります。別に構いませんよね? だって――〝貴方は僕〟なんですから』
「ぼ、僕が……もう一人いる!?」
それはあまりにも異様な光景だった。
カギリ達しかいないはずの場所に突如して現れたのは、自身と瓜二つの姿を持ったもう一人のユーニ。
しかも現れたのはユーニだけではない。
「見て見て」
「私もいるよ」
「やっほー」
『やっほー』
『おもしろい』
『でもいつもと同じかも』
「拙者の姿は一向に見当たらぬでござるが……もしや、この妙にメラメラと暑苦しい〝火の玉〟が拙者でござるか?」
『メラメラ――』
中央に立つユーニそのものの少女の左には、やはりリーフィアと全く同じ見た目の少女が手を振り、右側にはカギリではなく赤く燃える火の玉がふわふわと浮いていた。
「あ、貴方たちは……!? どうして僕やリーフィアさんにそっくりなんです!?」
『さっきも言ったじゃないですか。僕は貴方ですし、リーフィアさんもそうです。でも、〝やっぱり〟カギリさんは一人だけみたいですね』
「やっぱりって……さっきから何を……っ!」
『フフ……でも〝良かった〟ですね。本当は安心してるんでしょう? カギリさんに大好きだって言われても、なんの返事も出来なくて困っていた貴方を、僕は助けてあげたんですよ?』
「助けた……っ?」
目の前に現れたもう一人のユーニは妖しく笑うと、そのまま躊躇無くカギリの前まで歩みを進める。そして――
『カギリさん……さっきは、僕の質問に答えてくれてありがとうございました。僕……カギリさんからあんな風に言って貰えて、凄く嬉しかった……本当に、涙が出そうなくらい嬉しかったんです……』
「こ、これは……いや、違う……っ! そなたは確かにユーニ殿に生き写しだが、やはりユーニ殿では……!」
『そんなこと関係ありません。カギリさんがどう思っていても、あそこで〝ただ見ているだけの僕〟には伝えられないことを、僕はカギリさんに伝えることが出来るんですから』
「僕が……伝えられないこと……」
そのままカギリに身を寄せると、偽ユーニはその瞳を潤ませながら慌てふためくカギリを見上げる。
だが揺らぎを見切れるカギリには、目の前のユーニが本当のユーニではないこともすぐに見破ることが出来た。
だがしかし。
間違いなくこの少女はユーニではない。
しかし彼女の発する揺らぎには、確かに〝ユーニと同一〟の波長があった。
なにより、完全にユーニそのものの容姿と、ユーニと全く同じ声で紡がれる言葉――その中には、カギリをして
「し、しかし……そなたは……」
『さっきはすぐにお返事できなくてごめんなさい……でも、今からちゃんと伝えます。僕も、カギリさんのことが――』
「だ、駄目です――――!」
だがその時。
薄暗い空間に翡翠の光が輝き、偽ユーニがひしと抱きついていたはずのカギリが一瞬にしてその場から消える。
見れば、カギリは勇者の力を解放したユーニにお姫様抱っこされ、いつの間にやら数十メートル離れた洞窟の端まで亜光速で連れ去られていた。
「ぬわーーっ!? 拙者、お姫様抱っこ侍でござるか!?」
『むぅ……どうして僕の邪魔をするんですか? 貴方がカギリさんに応えようとしないから、代わりに僕がお返事しようとしたのにっ!』
「だ、駄目ですっ! そんなの駄目に決まってるじゃないですかっ!?」
『だから、どうして駄目なのかって聞いてるんですよっ!』
「そ、それは……っ! その……と、とにかく駄目なものは駄目なんですっ!」
『……そうですか。そうやってまだ意地を張るのなら、仕方ありませんね! ――
「なんと!?」
「そんな――!?」
想いを伝える寸前でカギリを連れ去られた偽ユーニは、その瞳に激しい怒りを宿し、手の中にユーニの聖剣ミア・ストラーダと全く同じ見た目の剣を出現させる。
『貴方がそうやっていつまでも目を逸らし続けるのなら、僕は力ずくでもカギリさんを手に入れます。僕にとって、カギリさんはそれくらい大切な人なんです――っ!』
「く……っ! 貴方は……そこまでカギリさんのことを……っ」
「ちょ、ちょっと待つのだユーニ殿! そちらのユーニ殿も! なぜこのような話になっているでござるか!? お互い言いたいことがあるのであれば、まずはとことん話し合えばよかろう!?」
『ごめんなさいカギリさん……! でもお願いします、これは僕と僕の問題なんです……! 僕は……そこにいる僕が、いつまでもそんなふらふらした気持ちで貴方の傍にいることが許せない――っ!』
その言葉と同時。偽ユーニは一条の閃光となってユーニ目がけて加速。そして、それを受けたユーニは――!
「
『ようやくその気になったみたいですね――!』
偽ユーニの突撃を、ユーニは即座に召喚した聖剣によって正面から受け止めた。
「僕にも分かりました、貴方のカギリさんへの気持ち――!」
互いの中央。全く同じ動きで、全く同じ聖剣を激突させた二人のユーニの視線が交差する。
まだ迷いと怯えの色はあるものの、すでにユーニは覚悟を決めて目の前の自分自身を見つめていた。
「本当に戦うつもりでござるか!? 拙者、出来ればユーニ殿にはユーニ殿と戦って欲しくはないでござるがっ!? ――と、先ほどからユーニ殿がユーニ殿でユーニ殿過ぎて拙者も頭が混乱してきたでござるぞ!?」
「やります……っ! どうしてこうなったのかは分かりません……でも、この戦いから逃げるわけにはいかない! 僕自身から逃げるわけにはいかないんですっ!」
『そんなことを言って……! どうせまたすぐに逃げるんでしょう!? カギリさんの想いに応えられなかった貴方が……本気で僕に勝てると思ってるんですか!?』
「そんなの――やってみないと分かりませんッ!」
『分かりますよ――だって、僕は貴方なんですからッ!』
「ゆ、ユーニ殿!?」
瞬間。
ユーニとユーニによる、二つの緑光が薄闇の中で交錯する。
「わーい」
『わーい』
その様子をカギリはほんのり暖かな火の玉と共に悔しげに見つめ、リーフィアはもう一人のリーフィアと二人で鬼ごっこを始めていた――。
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