第120話 どーも、アレです
前書き
前回のあらすじ
主人公 ユリさんとネイレスさんが連行されていたのを見て驚愕する
本文
どーも、風の神官長を殺害した2人に詳しい事情を聞くオッサンです。
「それで、喧嘩の最中に風の神官長が割り込んできたから殺したと言っていたけど、どうやって殺したんだ?光の神官長と同等クラスの強さだろ?」
俺の質問にネイレスさんから答える。
「ケンさん、落ち着いて下さい。順に説明します。私とユリとの魔法合戦の中、突然私の背後から魔法が展開されたのが事の始まりです」
「ネイレスが魔法を中断して体制が崩れたと思ってトドメを刺そうと接近したら風の神官長を名乗る男がいたのよ。私たちの喧嘩の邪魔をした愚か者に天誅を下してあげたのだから感謝して欲しいわね」
「え?説明だよね?何話しを終わらせているの?ユリさん」
「そうですよ、ユリ。説明しないといけませんよ。でも、説明と言ってもユリが初撃を与えて私が氷の魔法で串刺しにしてユリがトドメを刺したとしかお伝え出来ませんが。お互い魔力解放を行っていましたから、短時間で始末しないといけないと思っての行動です」
「え?風の神官長って弱かったの?」
「さぁ、分からないわね。ケンさんみたくスマホで鑑定した訳ではないから本当に分からないわ。私たちが強くなったのではないかしら?」
神官長って強いと思っていたけど、大したことないのか?ユリさんとネイレスさんが殺した神官長は偽物だったりとか...ストーカー野郎こと光の神官長は、強さと言う点では今まで対戦した敵では上位にくる。
「うーん。風の神官長を名乗った男が偽物という可能性は?」
「分かりません...私たちのMPを削るために遣わした偽物の風の神官長という線は捨てきれませんね。その男が死んでから私たちはMPが切れて、ポーションを飲んでいたところ、大勢の神官に囲まれて捕まりました。今思うに、対応が早すぎます」
「捕まった2人を見て焦ったよ。大勢の神官に囲まれたとしても2人なら対処出来たんじゃないの?」
「無理ね。魔法を躱すことは出来ても、人間が多すぎて逃げ切れる自信がなかったわ。ネイレスと相談した結果、ケンさんが迎えに来た時に逃げることにしたの」
「ふふふ。私たちを汚い目で見ていた男は全員粛清出来て良かったです。それにユリの言う通り、ケンさんは必ず来ると思っていましたから」
「はぁ、行き当たりばったりな作戦を良くしたもんだ。ある意味感心するよ。今後は喧嘩は控えて仲良くしてくれ」
大きく息を吸って、息を吐いてからユリさんとネイレスさんに注意をする。
一応、俺も反省しておく。ユリさんの嫉妬があそこまで強いと思っていなかった。
「善処するわ。ネイレス一時休戦よ」
「はい。ケンさんに迷惑をかけたら本末転倒ですし、嫌われたくありません」
うんうん。2人の仲が戻ってなによりだ。
ぐぅーっとお腹の音を鳴らす俺。
「そういえば、夕ご飯が干し肉だけだったな。この話しはここらで止めて、ご飯を食べようか。また見つかってご飯がおじゃんになるのは避けたいから、そうだなー。ホットサンドにしよう。これなら匂いが外に漏れることはあまりないだろうし」
窓やカーテンを閉めて、完全に密閉された空間でホットサンドを作る。具は野菜や卵。
「パンを鉄板に乗せて、炒めた卵とベーコンをパンの上に乗せて、またパンを乗せて、鉄板を被せて閉じる。うわ、結構匂いが出るな。ユリさん、風の魔法で匂いが漏れないように出来ないかな?」
「風の気流を変えることは出来るけど...ご飯のためなら仕方ないわ。精霊魔法で何とかしてみせる。その代わり沢山作っておいて。もう、今日のような寂しい食事は嫌だから」
ユリさんの言葉に賛同するかのようにネイレスさんが何度も頷く。
精霊魔法によって、パンの焼く匂いは、ネイレスさんが少し窓を開けた隙間から上空に向かっていく。
「ユリさんありがとう。ネイレスさんもナイスフォロー。沢山作っておくから、出来上がったやつから食べていって。あと、精霊さんにスポーツドリンクを献上しておくよ」
出来上がったホットサンドを皿に盛り付け、ユリさんとネイレスさんに渡す。ついでに風の制御を行ってくれている精霊さんにいつもの品を献上。
「はむ。はむはむ。おいひい。さすがケンさんね。食料の節約みたいに見えるけど、案外ボリュームがあって、しかも美味しい。この料理なら私たちにも出来そうね」
「野菜を千切りにするのは出来ますし、卵とベーコンを焼くくらいなら簡単ですしね。パンの焼き加減も1度見れば分かりました。ユリ、今度一緒に作りましょう」
「ふふ。いいわよ」
さっきまで殺し合いの喧嘩をしていたとは思えない2人。
笑い合いながらホットサンドを作る約束しているけど、大丈夫か?
2人がそれでいいなら止めないけど、喧嘩するなよ。
「ケンさん、そろそろ精霊魔法が解けるわ」
「教えてくれてありがとう...ちょっと待って!」
あるじゃん、俺がまだ強くなる方法。
「ユリさん、俺って精霊さん見えるんだけど、前に適正があるとか言っていたよね?」
「言ったわね...でも、精霊様との契約はエルフの国、カンナ王朝の神樹でしか出来ないわよ」
「そんな、バカな...神樹ってなんだよ」
愕然とする俺に追い討ちをかけるユリさん。
「それと、エルフしか入れない聖域なの。神樹の周りには常に兵がいるわ」
呑気に契約も出来ないのかよ。
世の中、そんなに甘く無いって事だな。
「ケンさん、よしよしです」
慰めてくれるネイレスさん。
ユリさんは慌てて俺のそばに来て声を掛ける。
「そ、そんなに落ち込まないで!エルフ共を根絶やしにすれば問題ないわよ」
「ユリ、それは難しいわよ。現実的な話しをしなさい」
「う、うっ...」
「あ、あ、ネイレスさん、ユリさんを責めないで。俺が勝手に思い上がって、勝手に沈んだだけだから」
「公国の後に、エルフの国に行きましょう。元気だしてください、ケンさん」
「ちょっと、ネイレス。さっきからケンさんにくっつき過ぎよ。それと、そのセリフは私のだから」
「ふふ」
ユリさんを煽るネイレスさん。
「おいおい、煽るなよネイレスさん。ユリさんも落ち着いて!」
俺が原因なのは分かるが...
「2人ともどうした?争ってばかり...」
「ふぅ。ケンさんには分からないでしょうね。アレの日なのよ」
「そう。アレです。血が止まらなくてイライラしているんです」
「あぁ。納得した。イライラしていたのね...」
確かに、男では分からないアレね。
余計なこと言わないように気をつけよ。
後書き
次回 心の一部
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