魔法少女リバース(読切集その5)

渡貫とゐち

1ラリー物語#7「選択肢」




「誰があなたをここまで育て上げたと思ってるの!? どれだけ苦労したと……っ! 感謝してもし切れない恩があるはずでしょう!?」





「それはそうだけどね。でも、押し付けるのは違うよね? だって産む、産まない――育てる、育てないの選択肢は常に出続けていたはずだし、苦労したと言うなら途中で辞めることも検討したはずだよ。

 捨てる、とは言わないけど、預けるくらいはできたでしょ? 探せば支援してくれる制度も、相談に乗ってくれる施設もあったはず……、その機会を全て切り捨てて、育て続けることを選んだのは自分自身じゃないか。

 そもそも産む段階で、今後の大変さは予測できたはずだ。まさか急に妊娠して、勢いで出産したわけでもないだろうし……、先輩の体験談を聞いたり、教育費を算出したり、母親の世界に飛び込むんだから下調べはするはずだよ――その上で産んだのだから、苦労も覚悟の上でしょ? 今更これまでの苦労を盾にされても困るよ。

 感謝はしてる、ありがとう。

 だけどそれを突きつけてこないでよ――それで『なんでもする』僕じゃないよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る