第12話 2月 小学5・6年生 数の悪魔(算数・数学が楽しくなる12夜)
202301271600
「数の悪魔」算数・数学が楽しくなる12夜
エンツェンスベルガー著
ベルナー絵
晶文社 初版1998年
著者ハンス・マグヌス・エンツェンベルガーは1929年生まれ。戦後ドイツを代表する詩人・作家・批評家。
画家ロートラウト・ズザンネ・ベルガーは1948年生まれ。グラフィック・デザインを学んだ後、本の挿絵を数多く手がける。
大きい絵は1ページ使ってあります。小さめの絵や図もふんだんに入っています。
小学校のお話会で最初に黒板に式などを書き、教卓に2冊本と40面体と70面体の模型と展開図を置くと、それぞれに生徒が寄って来ました。
他には「算数&数学ビジュアル図鑑」学研を持っていきました。
最初に手を挙げてもらうと算数の好きな人7人、普通の人4人、嫌いな人21人でした。
第1夜は主人公の悪戯が行き過ぎて、お話会にはそぐわないので簡単な説明をして第2夜から読みました。
「算数の嫌いな10歳の男の子ロバートの夢の中に[数の悪魔]老人が出てきて、算数や数学を教えてくれる話です」と言うと、「え〜それうちにも来てほしい〜」などと数人の声が。
読み終わると「その本学校の図書館にあるかなぁ?」と女の子が言いました。
わたしの説明がヘタだったりするのに、ちゃんと聞いていたのは、算数や数学ができるようになりたいと皆思っているからでしょうね。
お話会では第2・3・4夜を読みました。
その時生徒がやっている算数の分数・少数から始まる第4夜を読む時は少し気が楽でした。
第1夜 1の不思議
しょっぱな、地下室とかライラック色とか出てきて、ああ、日本の話じゃないですもんね、と思いつつどんな色だ、と調べると「うす紫色」でした。でも外国の本を読むとこういう違いが面白く感じたりします。
最近ひどい夢ばかり見てウンザリしているロバートは草原の中にいるバッタくらいの大きさの紳士と出会う。
「だれ?」と聞くロバート。
「数の悪魔だ!」
「ぼく、算数って聞いただけで、じんましん出ちゃうんだ」
そして自分の学校の算数のボッケル先生に対する愚痴を言うロバート。
[単位元][可算無限集合][無限に大きな数・無限に小さな数][分数]
第2夜 0はえらい
キノコの上に腰かけた数の悪魔にロバートが言う。
「なんだか見覚えがあるよ、この景色。何かの本で読んだことがある」
「ふしぎの国のアリスにででくるキノコかね」と数の悪魔が言った。
[0][負の数][十進法][ホップする累乗]
第3夜 素数の秘密
「起きろ、ロバート。今日はわり算だ」
[素数][エラトステネスの
第4夜 わけのわからない数と大根
「いったい、どこに連れて行くの。この前は、出口のない洞穴だった」
「海だ。見りゃわかるだろ」
[循環少数][根(大根)正方形の対角線][超可算集合]
大きな計算機の上でクタクタになったロバートは横になった。
第5夜 ヤシの実で三角形を作る
「数の悪魔」が現れなくなった。また悪夢を見るようになったロバートはお母さんにいった。
「決心したんだ。今日から絶対、もう夢なんてか見ないからね」
「そりゃ、いいわね。よく眠れなかった時は、いつも次の日、学校でぼんやりしちゃうでしょ。ひどい成績持って帰ってくるからね」
ロバートが夢で悩んでいる問題は、もちろんそんなことではなかった。けれどもお母さんには「おやすみなさい」と言っただけだった。ロバートには分かっていた、なんでも母親に説明できるわけではない。
その夜、数の悪魔はヤシの木のてっぺんにいた。ロバートは懐かしい友達のところまでよじ登っていくと数の悪魔はヤシの実のジュースをくれた。
ヤシの実で[三角の数][累乗][四角形の数][2乗数の平方根(四角形の数)]の勉強をした。
第6夜 にぎやかなウサギ時計
ロバートが憎まれ口を叩くので数の悪魔は言う。
「あのな、どうしてこんな夜に、わたしがここに派遣されてると思ってるのかね。楽園のお偉方にゃ、ハナタレ小僧の相手なんかする暇ないんだよ」
「わたしが特別に好きなボスに、フィボナッチという悪魔がおる。イタリア人でな」
数の悪魔はフィボナッチ数を暗誦し始めた。折りたたみ椅子に座ったまま、一本調子の歌のようだった。これぞフィボナッチ・オペラである。
[フィボナッチ数][フィボナッチ数列]
第7夜 パスカルの三角形
「この子ったらどうしちゃったの。これまで中庭や公園でアルバートやチャーリーやエンツィオとサッカーばっかりやってたのに。いまじゃ、部屋に篭りっきりで大きな紙を広げてウサギばっかり描いてるんだから。さあ、外へ行ってキレイな空気でも吸ってらっしゃい」
とうとうお母さんが大きな声を張り上げた。
ロバートは公園の草地で友達とサッカーを遅くまでした。晩御飯を食べるとすぐベッドにもぐりこんだ。
ロバートは夢に出てきた数の悪魔に言う。
「ウサギだけはやめて。白いウサギと茶色いウサギがごちゃごちゃになっちゃってさ」
数の悪魔はサイコロのような形をした白い建物へロバートを連れて行った。その中でサイコロを積み上げる二人。
[パスカルの三角形][累乗][三角数][2乗する][ジーエルピンスキーのパッキング、三角形][フィボナッチ数][フラクタル模様]
第8夜 いったい何通りあるの?
教室で黒板の前にいるロバート。クラスの皆の前で[組み合わせ理論][席替え(順列)]を数の悪魔から教わる。
[累乗][握手(重複しない組み合わせ)][三角数][n個の組合せ(掃除当番)][パスカルの三角形]
第9夜 はてしない物語
夢を見ている夢を見たり、うだうだと嫌な考えにはまり込んだロバート。
漫画を12冊読むとくたびれて瞼が眠くなった。インフルエンザにかかって寝ている夢を見ていると数の悪魔が出てきた。
[奇数][加算無限集合]の説明。
p171、1ページ使った絵の中に上から自然数、奇数、素数、フィボナッチ数、三角数、(ホップする・累乗する)2乗が整列している。
p172、前のページの絵を表にしたもの
目を覚ますとロバートのひたいに手を当ててお母さんが言う。
お母さんは「熱が下がったわ!」と喜んでいる。
第10夜 雪片のマジック
夢の中でリュックサックの上に座っているロバートは寒かった。
雪は六角形で6本の放射線を持っている。
それを眺めるロバートは暖かい部屋の中にいた。後ろに数の悪魔が。
「凍え死んじゃうかと思ったんだから」
「あれは映画の中の話に過ぎん。ほら、いいもの持ってきたぞ」
「パソコンだ」
数の悪魔はフィボナッチ数を打ち始めた。
[無限少数]
「わけわかんない無理数みたいなのがある」
[極限][極限値]
[帰納]
そして五角形を描いたり展開図を作ったりしているうちに老人の声はどんどん弱くなり、かっこいいシルバーグレイのノートパソコンもなくなっていた。あの虫のすかない数はどうなったのかと考えながらロバートは眠り込んでいった。
[オイラーの方法]
[多面体]
第11夜 証明はむずかしい
日が暮れた町でボッケル先生が追いかけてくる。ボッケル先生はどんどん増えていろんな所から出てくる。
数の悪魔が来たので夢だとわかった。
[証明][推測][公理}{黄金比][近似値][ラッセル卿の証明][アメリカ旅行(旅するセールスマンの問題)][オイラーの公式][最適化問題]
第12夜 ピタゴラスの宮殿
数の悪魔が「招待状が来たぞ、お前に、ほら」と金縁のカードを取り出した。
数の悪魔がテプロタクスルという名前だとわかる。
テプロタクスルの背に乗って空を飛んでいく。
中に入ってみるといくつものドアがあって開いているドアの中に一人で喋っているラッセル卿がいた。
「この建物じゃ一番若いんだ。まだ150歳にもなっておらん」
次の部屋はクライン博士がいた。「クラインはドイツ語で小さいと言う意味だろ、さ、次へ行くか」
最後の夜、次々と数学の偉人カントル、オイラー、ガウス、ピタゴラスなどと会い、ホールで集合する。そして……。
この本は分厚いし(索引・訳者あとがきまで入れるとp257)、算数・数学が好きではないと更にハードルが高く読むのに時間がかかるので、お忙しい方のために読んだ本人や先生や親がよかったと思えるオチを下に書いておきます。
以下ネタバレ。
本の途中でロバートは数の悪魔に
「退屈な問題だなぁ。ボッケル先生なら出しそうだけどさ」
なんて言ってましたが、最後は実際の教室でボッケル先生の出した問題を夢中で解くようになりました。
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