配信中
「あ、音入りました。皆さん聞こえてますかー? 桜花牧場社長の鈴鹿静時でーす」
「皆さんこんにちはー。内藤浩二です。本日はよろしくお願いします」
シミュレータールームから少し離れた配信室でカメラに向かって手を振る俺たち。
予選はA組が十一時からスタートして、二時間刻みで行われる。その間、選手たちは軽食をつまんだり、シミュレーターでエキシビジョンをしたりして配信を盛り上げてくれる。
宮家さんは会場側でインタビューしたり、大塚さんと山田さんと相談して仕切りをしてくれる役回りだ。ありがたいね。
こちら側では現在朝の九時半なので事前番組として、協賛の会社の提供してくれた賞品の説明やレースのルール説明を行うことになっている。
「まず、協賛してくださっている会社の皆さんをご紹介したいと思いまーす」
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「凄い協賛の数でしたね…」
「ですね。ありがたいことです」
百を超える協賛会社の紹介を終えて既にクタクタになっている俺と内藤さん。多すぎだ。
「それでは、そろそろルールとレース場の解説をさせていただきます」
「よっ、待ってました! 鈴鹿さんの解説は分かりやすいですからね!」
ははは、と愛想笑いで返して用意しておいたフリップを出す。
「まずはA組、小倉競馬場の1200メートルですね。右回りで小回り、高低差もないので先行馬がかなり有利なレースになります。シュミレーターは芝の条件も出るので今回の1200メートルは野芝、スピードがかなり出ます。騎乗する馬選びが重要です」
「注目騎手は誰になりますでしょうか」
「頑張っていただきたいのは幸永騎手ですね。不屈の一流馬の本域と言える距離ですから。後は春川騎手、門別競馬の苅部騎手といったところでしょうか。
苅部騎手は内藤さんの所有馬のジョッキーに推薦されているとのことで、そういう意味でも頑張っていただきたい」
「あはは、ありがとうございます。鈴鹿さんすみません、協賛の紹介で長引いちゃったみたいでめっちゃ押してるみたいなんで…」
「あーあ。では、カメラ会場にお返しします! 宮家さんよろしくお願いします!」
カメラを担当してくれているテレビ局のスタッフさんからOKが出て、ふうと一息つく。
協賛でいただいた天然水を口に含んで喉を潤した。
「社長、配信の視聴者が三十万越えたみたいです」
内藤さんが半笑いで言う。数字が大きすぎて笑うしかないのだろう。
「それは結構なことです。向こう側は今なにを?」
「A組の参戦ジョッキーにインタビューしてるみたいですね。B組がバチバチに張り合ってて怖いらしいです」
「あそこだけリーディングジョッキー固まりましたからねぇ」
音花ちゃんを除いて中央地方のリードトップ層が集まったからなぁ。
レースを行う競馬場も海外なのでなまじ腕の勝負になるのが張り合わせてる遠因かも。
「とにかく、こちら側も休憩しましょうか。カメラさんもシステムさんもお菓子とか食べましょう」
いただきまーす、と野太い声で提供品のお菓子やら飲み物に群がってくるスタッフさんたち。
さて、向こうの様子を見に行くか。
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