シークレットスクープ

柚月伶菜

プロローグ

第1話

田淵ヒルズトーキョー。

このビルの55階のバーに彼女はいた。


バーの客といえば、ドレスを纏い、何千万とするネックレスを身につけたセレブばかり。


その中にひとり、場にそぐわない、おかしな客がいた。



窓側のテーブル席にひとり。

カジュアルな服装にスニーカー。

ファッション雑誌で顔を隠し、帽子を深く被った怪しい女性。


バーテンダーは、そんな彼女に、ジントニックを運んできた。


彼女は小さく頭を下げ、ジントニックを一口飲むと、バーテンダーを呼び止めた。



「姉を、探しているんです」



彼女は持っていた写真をバーテンダーに見せた。


「このバーによく来ていたのですが」


「お見かけした覚えはありません」


「そうですか」



彼女は写真をしまい、また雑誌で顔を隠した。



よくみると、彼女の目は、雑誌の記事には向いていない。

見ていたのは、バーにいる客たち。

獲物でも見張っているかのような鋭い目つき。



彼女は、口を動かした。

誰にも聞こえない、小さな声で。

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