第033話 拠点防衛力もチートが過ぎる

「そんじゃいってくんな」

「おーう」


 二人を見送った俺は、当初予定していた通りこの拠点の防衛力を上げることにした。なぜ二人なのかというと、今回はエンジュに協力してもらいたいことがあったからだ。


 それに、二人はもうレベル六を超えているし、二人は全身+五装備というぶっとび性能の武器防具を身に着けているので、エンジュがいなくても大丈夫だろうという判断もあった。


 今日は最低限この神社と家の周りの安全を確保するため、敷地の少し外側を壁で囲ってしまいたい。


 俺はそんな目標を掲げて現場にやってきた。


 まずは当りあたりの木々を伐採して整地していく。その辺はステータスが覚醒した後の身体能力とスキルによってどうにでもなる。


 三時間程かけて今日取り囲む一の伐採と聖地を終えたら次の肯定に移った。


「ストーンバレット」


 俺はまず、必要な材料を集めるため、魔法でストーンバレットを放つ。魔力を込めまくって発射される岩の大きさをとんでもなく巨大化させ、その上で射出速度は最低まで絞って打ち出した。


―ズシーンッ


 すると、少し前に高さ五メートルはありそうな塊の岩が落ちる。この岩を材料にして巨大な壁を生産するのだ。


"生産"


 俺は岩に手を当てながら、理想的な位置に壁が来るように調整して壁を生み出した。難易度はそう高くないものの、それなりに時間がかかったので、難易度だけでなく大きさも作成時間に影響してくるらしいことがわかった。


 最低限の検証はできたものの、まだまだ検証すべき点はあるなと反省してまた次の壁を作る。


 隣り合わせることで不思議壁はくっついて一つの壁になる。


「どうなってんだこれ……」

「にぃ?」


 俺が首を傾げると、エンジュも俺の顔の隣に浮かんで首を傾げた。生産スキル、まだまだ謎が多い。


 それからさらにかかること五時間ほど。


「やっと終わったぁ!!」

「にぃ!!」


 俺はこの神社の周りを壁で完全に囲うことが出来た。これでここの安全性は以前より間違いなく上がったに違いない。


 しかし、俺は駄目押しにあることを考えていた。


「それじゃあ、エンジュ、お前の幸運に期待してるぞ?」

「にぃ!!」


 それはエンジュの幸運と俺の豪運に頼ってこの壁を強化することだ。


 俺が頭を撫でながらそのことを伝えたら、エンジュは任せてと元気に鳴いた。


 失敗すれば今日頑張った五時間が無駄になる。でもできればマックスまで上げておきたい。


「よし、強化を始めるぞ!!」

「にぃ!!」


 俺は早速強化を始めた。


 その結果……、


「できてしまったなぁ……」

「にぃ!!」


 なんの苦労もなく、一回でまた+五まで強化することが出来てしまった。やはり昨日の強化はエンジュの力が大きかったということを証明していた。


 壁を呆然と見上げる俺に「良かったね」と鳴くエンジュ。


「今日は手伝ってくれてありがとな。お前のおかげでここは物凄く安全になったぞ?」

「にぃ?」


 エンジュにきちんとお礼を伝えたら、彼女は「自分のおかげ?」と首を傾ける。


「そうだ。お前のおかげだ」

「にぃ!!にぃにぃにぃ!!」

「はははっ。くすぐったいっての」


 俺が再度肯定してやったらエンジュは「役に立ててうれしい!!」と喜びを表しにして俺の顔に飛びついてきてぺろぺろと舐めた。


 あまりの可愛さに失神しそうになるが、俺は苦笑いを浮かべながらエンジュを宥めるように撫でてやる。


「おー、おー、なんだこりゃ」

「あははは……。六道君がチートだって分かってたつもりだけど、どうやらまだまだ甘かったみたいだ。認識を改める必要があるね」


 エンジュと戯れていたら二人が返ってきたらしく彼らの声が聞こえてくる。俺がすぐに声のする方に向かうと聳え立つ防壁に感嘆の声を漏らしていた。


「おかえり」

「只今。じゃなくてこれ一日でやったのか?」

「それに淡く青色に光っているよね?これってまさかそういうこと?」


 俺が姿を表した途端、二人はツッコミ気味に俺を問い詰める。


「二人の質問に答えるなら当然イエスだな」

「もうここ以上に安全な場所なんてないんじゃねぇか?」

「そうだね。これじゃあシャドウたちなんて入り口以外の場所から入りようがないよ」


 俺がドヤ顔で述べたら、なんだか若干呆れながら二人はお互いに顔を見合わせる。


「別に安全なんだからいいじゃないか」

「そうだけど、なんていうか、侵略してきた相手が可哀そうというか、いたたまれないというか……同情するよ」

「ここは攻めても絶対落とせないから相手側も気の毒だよな」


 俺が反論したら二人は何とも言えない表情でシャドウたちのことを憐れんでいた。


「お前たちはこっちの味方だよな!?」

「そのくらいここに安全性の高さがヤバいって話だよ。ただ、逆にここから抜け出せないから強いモンスターが中に入ってきた場合はきついけどね」

「なるほどな。それじゃあ抜け道も作っておこう」

「それが作れれば安心だろうね」


 俺のツッコミに対して聡が肩を竦めながら言った後、ここの問題点も教えてくれる。


 俺達は最後に抜け道を作成してからいつものようにご飯を食べ、風呂に入り、情報共有をして眠りに着く……予定だったが、俺はちょっと出かけることにした。


 それは物資提供をしておきたかった。あれから三日四日経った。避難人数が多いから備蓄も凄いスピードで減っているはずだ。


 俺はついてくると言って聞かないエンジュを連れて物資探しの旅に出た。エンジュを連れていったら、なんなくまだ残っている物資を発見し、以前同様に学校の前に置いて自宅に帰った。

 

 それからしばらくは俺自身も強化するために修二と聡とローテーションを組んでレベル上げに勤しむのであった。

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