聖女なのに王太子から婚約破棄の上、国外追放って言われたけど、どうしましょう?
もふっとしたクリームパン
婚約破棄された日、聖女は去りました。
煌びやかな王城内で開かれた王妃様の誕生日パーティー。王族は勿論、国中の貴族達が目出度き今日の日の為にこぞって集まっていたその特別な日。
「――以上の理由により、フラワー王国王太子であるコランバイン・フラワーは、偽聖女アロエナ・ガーベランドとの婚約を破棄し、国外追放の罰を与え、この我が愛しき女性、アネモネアを正妃として迎える事を我らが女神ラブリアに誓う!!」
見知らぬ女性を伴って現れ、誰もが注目していた私の婚約者である金髪碧眼の王太子、コランバインの身勝手な宣言に思わず声に出てしまった一言。
「え、どうしましょう?」
その一言は、静まり返ったフロアに良く響いた。
私の名はアロエナ・ガーベランド。このフラワー王国のガーベランド侯爵家の令嬢として生まれ、五歳から十三年間ずっと女神ラブリア様にお仕えする聖女として勤めて参りました。もちろん、私は本物の聖女です。
聖女とは、女神ラブリア様が遣わした祝福の子と呼ばれています。何故なら世界を襲う大災厄の際に国を守る力がラブリア様より託されて産まれくるからです。産まれた瞬間にその事実は主神ラブリア様を祀る神殿に伝わり、神殿から報告を受けた国は、総力を挙げて生まれた聖女を大事に育てることが義務付けられているのです。その義務を蔑ろにした国は亡びると伝わっておりますので、国が聖女を大事に守るのも当然のこと。
それ故に聖女が平民の生まれだろうが貴族の生まれだろうが、必ず王族の婚約者として育てられる事が多いのです。いずれ王族に連なる者として扱えば、必然的に大事にされやすいですものね。幸い、私は侯爵家に生まれ落ちましたので、身分差等の問題もなくあっさりと王太子殿下の婚約者に決まりました。まぁ、第二王子とではなく王太子殿下であったのは、フラワー国以外の各国でもそれぞれの聖女が産まれますので、他国の聖女と混同しないように、国としてこの聖女はわが国の者であると主張しやすくする為の処置でもあるのでしょうけれど。
聖女が大事にされる理由、王族との婚約が取り決められている理由、ここまでは誰もが世界中の人類皆、知っているお話。
実の所、公にはされておりませんが、聖女とは女神の分身体であり、肉体の器を持たないその魂が地上に降りる儀式として人の子の腹を借り受けているだけなので、実質的に女神様と同じ存在なのです。つまり、聖女が生まれるという事はその世代に何らかの大災厄が訪れるという明確な
――はい、ここで王太子を思い出してみましょう。理由はともあれ王族貴族が集まる場で、侯爵令嬢である聖女の私との『婚約破棄』を宣言しましたね。それだけでなく、『国家追放』の処罰を与える、とも宣言しておりましたね。おまけに、主神の女神ラブリアに誓っていましたね。
私、あと数年したら発生する大干ばつによる大飢饉を防ぐ為に地上に降りて来たのに? 全ての国を公平に扱う為、各国に聖女は産まれますので私以外にも聖女は存在しますが、一国に付き一人の聖女が居ないと大干ばつと大飢饉から国を守る女神パワーを巡らせられないのですが??
シンと静まりかえった中で、『え、(そんなことされたらこの国滅びるけど)どうしましょう?』と口に出てしまったのは、仕方がないと思いませんか?
王太子が更に何かを告げてくる前に、国王と王妃が出てきました。あ、第二王子も出てきましたね。王家一家が揃って何やらわちゃわちゃしてますが、女性の腰に手を回したままの王太子自身は宣言を取り下げる気がない様子。こうなれば仕方がありません。神の国にいる
――もしもし。フラワー王国に派遣された
…取り敢えず、
即決でした。周りの方々は
「ですよね」
私は一言そう言って、
【完】
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