間話 アイナ

双子を買ってまた一年ギリ経たない位になった時、お金がまたそれなりに貯まってきた。


そろそろ四人目を買おうと思う。


あれからスクナはカッチカチの性格になり昔の名残が消えてしまった。


物凄く悲しい。


コウとメイは天真爛漫さを残しているようだ。

まあ俺がスクナみたいにカチカチにしないで下さいと頼んだからだけど。

冒険者になる時そんなのに周りを囲まれたら息苦しくて堪らないっての。


これから買いに行く奴隷を何としてでも守らねば!


という訳で出掛けようとするとお父様に待ったをかけられる。

これからコルディア公爵というまあなかなかに偉い人物が来るらしい。

なんでもお父様と同年代で、お父様が王都に有るこの国唯一の学校に行っていた頃、友人になり、今でも連絡をとってたまに会うらしい。


俺がまだ赤ん坊でまともに動けない頃に一度だけあったがまあなかなか優しそうだがちょっと疲れたというかフゥってことあるごとに言ってそうな顔をしたおっさんだ。

なんか相談しに来たみたいだ。


なんか頼み事っぽい事をしていた記憶がある。

神眼で盗み見ただけなので内容はわからないが…。


その人がまた来るのだそうだ。

なので挨拶をしろという事だ。


それからコルディア公爵が到着し、真面目に挨拶をやり終わった後、時間も微妙な時刻になったため明日に引き延ばす。


なんかまた頼み事をしに来て、喜んだ顔をした後すぐ落ち込んだ顔をした。

よくわからん。


お父様に聞いても「うーむ、まあちょっとな…」

と誤魔化されるだけで全然わからない。


次の日、気を取り直して奴隷を買いに行く事にする。


今日もメイドとスクナを連れて行く。

コウとメイはお留守番だ。


そしてまた高級馬車にガタゴト揺られながら奴隷館に着きいつも通り手を繋ぎながら建物に入る。


するとすぐにいつもの奴隷商が来て


「これはこれはレイン様!侍女様!スクナも、お待ちしておりました!さっさっ!こちらのソファーにお座りください!」


といってこれまたいつものふかふかのソファー座らせる。

そして今日も俺はメイドの膝の上だ。


「あれからコウとメイの調子はどうでしょうか?」


「はい、なかなか優秀でいい買い物をさせていただきました」


と普通に話し始める。


「そうでしたか!ありがとうございます!

私達もオリオン公爵様には大変お世話になっております故、お役に立ててなによりでございます!」


とお世辞をいう。

そしてきた瞬間違和感があったので無邪気な子供らしく俺がちょっと聞いてみる。


「あの、き、今日はあまり人が居ないようですがどうしたんですか?」


客が1人もいない。

どうしたのか聞いてみると奴隷商が顔の笑みを崩さず、


「はい、なにしろ高価な品々を扱っておりますのでこういう日もたまにあります。

日に5人しか来なかった、などという事もありましたので。

あ、決して我が奴隷館に閑古鳥が鳴いているなどという事はありませんよ!」


と最後に冗談交じりに言った。


(ふ〜ん)


まあ本当かどうかは俺にはわからない。

2回とも4、5人の客がいた。

そうと言われればそうなんだとしかいいようがない。


「そうだったんですか、ありがとうございます!」

「どういたしまして」


と言いすぐにメイドが注文を言う。


「では早速ですけど12歳まででオススメの奴隷はいますか?

あと、出来れば水か闇か光の魔法が使えて戦闘向きでお願いします。」


とオーダーを出す。

とすると奴隷商は少し顔を歪めて、


「ふ〜む…、大変申し訳ないのですがコウとメイ兄弟のような優秀な奴隷は現在入荷しておりません。

ですが水魔法が扱える魔法使いなら1人おりますので連れて参りましょうか?」


と聞いてくる。


「そうですか…。

レイン様、どうなさいますか?」


と俺に顔を向けてくる。


「一応見てみましょうか」


と取り敢えず見る案を出す。

コウメイ兄弟レベルがそうポンポン出されてたまるか。

何のための年齢縛りだ、という話になる。


「畏まりました!では少々お待ちください」


といって奴隷商が裏に戻る。


と、すぐに1人の女の子を連れて帰ってくる。


それを簡潔に表現するなら、「白」だ。

銀髪ではなく、真っ白い髪に白い肌、そして眼だけが真っ赤な色をしているのだ。


「お待たせいたしました。

こちらが水魔法を扱える奴隷で名前をアイナと言います」


といってアイナと言われた幼女が頭を下げる。


「年齢は7歳、レベルは6、水魔法レベルは1です。

ただ……」


ただ?


「何でしょう?」


「はい、そのですね、ご覧になってわかりますように、肌の色や髪の毛の色が白でして、いわゆる迫害の対象になっておりまして」


(ああ、アルビノな。

動物世界じゃ生きられないとか周りと違うからって奴か。)


俺がそうだったからよくわかる。

異質な奴はそれだけで差別対象だ。


「彼女の一族は白牙族と言いまして、これが南ではあまり良く思われておりません。

我が国では人族が多いため気にする必要はありませんが…」


(ふむふむ)


そんな事は別にいいから値段を言ってくれ。

その願いが伝わったのかすぐに、


「そうですね…、金貨25枚でどうでしょう?」


と提案してきた。

持ってきたお金とほぼ同額。

メイドに値切る様に目線で合図を送る。


「迫害対象ならもっと安くてもいいはず。

15枚でどうでしょう?」


「うーん…23枚なら…」


とだんだん下げていき結果金貨19枚まで下がった。


そしていつも通り、契約をして、アイナを連れて帰る。


奴隷館を出て、しばらくするとアイナが突然


「今日から貴方様が私のご主人様なのですね。至らぬ点もございますが本日からよろしくお願い致します」

と言ってきた。


「え?!は?ど、どうも…」


とさすがに焦る。


(あれ?迫害されてたんじゃないの?なんで教育前からスクナ2号が出来てるの?)


迫害されているって聞いてたからもっとおどおどしていると思った。


「私は今日よりレイン様の奴隷となります。

貴方様に何かあれば剣となり盾となりお守り致しましょう」


となんか武士の誓いみたいな事を言い出した。


「あ、と…ありがとう…」


と気の無い返事をしてしまう。

(というかお前が前で戦っちゃダメだろ…。

ヒーラーを買ったんだから。

いやまあ俺がいるからいいけどさ…)


そうぼやきながら帰路につくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る