第8話 どげんかせんといかん
俺のスキルが判明して、から8ヶ月の月日が流れた。
あれから8ヶ月も流れたが、依然として両親が俺を出産した時、がっかりしたような、絶望したような声をなぜ出したのか分かっていない。
両親での話し合い以降もお父様とお母様の俺への態度は少しも変わっておらず、恐らく産まれた時も言ってたように暫く育った後に、公爵としての才能があるか見て判断する、といったところだろう。
やっとの事でハイハイは出来るようになっていたが、四六時中親が俺を出産したときにもいた侍女が見張っているため家の中を見て回れない。
いや正確には見て回れないことはないのだが、何処か行こうとすると必ず無理やり俺のことを抱きどちらに行きたいのか俺の指し示す方に俺を抱いたまま動く。最初は体の拒絶反応があったのだが、心の準備をしてから抱かれる様にしている。
正直言ってちょっとウザい。
運んでくれるのだから贅沢言うな!と、思われるかもしれないが、1人でやりたいことがいろいろあるのだ。
ここ最近は常にこの城の書斎に行ってあるのだが、ずっと俺の事をじっと見ているのだ。
(集中ができない。)
なにか不審な行動をすればそれは必ず両親に報告されるだろう。
それは困る。
未だ自分の立ち位置が不明瞭なのだ。
俺はこの城で確かに第1次期公爵候補として名があがるだろう。
だが、俺が産まれて3ヶ月が経った時、同じく妊娠していた第2夫人と第3夫人が相次いで子供を産んだ。
第2夫人は男の子を、第3夫人は女の子を産んだ。
因みにお父様にはあともう1人第4夫人がいて、全部で4人の妻がいる。
第1夫人である俺の母親は父親が伯爵らしく、政略結婚という名前の結婚をした。
あくまで名前だけだ。
本当は、お互いに昔から好きだったらしい。
運がいいことに、第1夫人であるソフィアには魔法の才能があった。
魔法の才能は遺伝しないはずだが、統計的に魔法の才能がある親から魔法の才能がある子供が生まれる確率が高いというのがある。
いわゆるジンクスだ。
しかも滅多にいないトリオであったため、彼女の元許嫁であった貴族を政治的取引で諦めさせた。
因みに魔法才能が1つをソロ、二つをデュオ、3つをトリオ 、スキル1つ持ちをシングル、2つ持ちをダブル、3つ持ちをトリプルと呼ばれている。
私はこの女の才能にしか興味はありませんよ〜、と言う建前で強引に妻にしたのだ。
もちろん前提として、お互いが愛しあっているということがあり、その結果があれである。
次に第3夫人の方から説明させてもらうが、この人も魔法才能持ちである。
家柄は子爵家長女と少し地位が落ちるが、それでもデュオの魔法才能を持つ女性だった。
デュオの魔法才能を持つ。だけならば貴族でもそれなりの数がいるが、彼女は中でも珍しい光属性の魔法才能を持つ女性だった。
ソフィアを娶る時の前提として、魔法才能が子供に欲しかったと言う建前があるからもう1人特に珍しい才能を持つ彼女を妻にした。
次に第4夫人であるが、こちらは男爵家の3女という物凄い微妙な立場の女性だ。
男爵家、しかもその3女ともなるともう貴族と言っていいのか非常に微妙な立場にある。
故に普通、公爵家現当主との結婚はない。
だがこの女性もまた特異な体質の持ち主で、簡単に言うとレア度6のスキルとレア度4のスキルを持つダブルであり、しかも魔法才能も二種類持つデュオでもあった。
お父様はこれを高く評価して妻にした、らしい。
らしいというのは、正直この人たちの関係がよくわからん!というのが本音だからだ。
俺の母親は、見ての通りの人で前世で言えば、誰とでも仲良くなれそうなカリスマ性を放つ人で、立場は違えど第3夫人や第4夫人とよく中庭でお茶をしているのを窓から見た事がある。
そして最後に回した第2夫人なのだがこの女性がまた難物なのだ・・・
この女性は、親がお父様とおなじく公爵で、その次女らしい。
俺のお祖父様が産まれてすぐに決めた許嫁らしく、まともに喋ったのも15を超えた時らしい。
率直に言うとお父様は、この女性が嫌いだった。
俺も暫くお父様とお母様の会話を聞いていたがお父様は良い意味での貴族だ。
民衆の事を本気で考えそれを実行するなかなかの傑物であった。
だからこそのあのいちゃいちゃ度であるが・・・
だがこの公爵の次女は、お父様と反対で悪い意味での貴族だった。
もと日本人の俺が小説などから得た情報を基に悪い貴族を想像せよ、と言ったらこんな感じだろう、という女性だった。
具体的に言うと、事あるごとにお父様に
「民衆から取る税がひくすぎではありませんの?!」とか、「あやつらは、雑草の如く増えていくのですからもっと搾り取るべきですわ!」とか、あまつさえ「我が城に住む騎士団で平民出身の者の地位をもっと下げるべきですわ!」とか言っているのをよく聞く。
当然他の夫人たちと仲が悪い。
彼女の方から自分より地位の低い夫人たちを見下しているのだから当然だろう。
廊下で会うたびに凄い目で睨んできた後明らかに見下した目で俺を見るのだ。
次期公爵候補は公爵の次女である自分の子が相応しいと思っているのだろう。
別にそんなものいらないけどこういう事されると何だか無性に公爵の地位が欲しくなってくる。
そして俺が産まれて3ヶ月が経った時、この女性の長男が産まれた。
あの禍々しい魔眼の儀で長男はシングルの魔法才能を持っていて、スキルも1つしかなかった。
はっきり言って微妙である。
確率で言えばわるくはない。
だが、良くもない。(俺は7個も持ってるし)
が、この結果を聞いた第2夫人は大興奮だった。
次期公爵は私の子供で決まりですわ!!とか意味の分からないことを事あるごとに言っていた。
最初はお父様も「まだわからぬ。基本的にはレインに跡を継がせる」と言っていたのだが、聞く耳を持たない第2夫人に愛想が尽きたらしく、最近はほぼガン無視である。
必要な時だけ、仕方なく貼り付けたような笑みで話しかけるといった感じだ。
あの顔を見るたびに高校時代を思い出すからやめてほしい。
クラスで嫌われていた俺にどうしても話しかけなければいけない用事があり、嫌々ながら引きつった笑みで俺を見る元クラスメイトとそっくりなのである。
とにかくそんなこんなで面倒くさい立ち位置にある俺は、早々に家を出るべく勉学に励みたいのだが、侍女がいると本を見てる最中に突然、
「そろそろおネムの時間です。
お部屋に戻りましょう」
とか言って俺のことを強引に持ち上げ部屋に連れて帰るのだ。
泣き喚いてやろうかと思ったが彼女も仕事である。
俺に何かあればクビになるだけでは済まないだろう、と考えると怒るわけにもいかず結局中途半端な知識しか触れていない。
(どげんかせんといかんな)
そう思うのだった
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