第6話 命令には絶対服従
アニーシャは決意した。生まれ変わった勇者様を、今度こそ一人では死なせない。例え勇者様の魂がアニーシャのことなど微塵も覚えていなくても。そばで見守る位なら許されるだろう。
「ロイド様。今度こそ、私がお守りします。もう決して離れませんからっ」
「?ええ、期待してますよ!共に魔物の脅威から王都を守りましょう!」
満面の笑みを浮かべるロイドをうっとりと見つめるアニーシャ。その様子を見たトムは溜め息を付いた。
「はぁ。じゃあロイド、なんかお前に懐いてるみてーだし、お前が最後まで責任持って聖女様の面倒見ろよ?任せたからな」
「は?聞いてませんが」
「嫌なら教会と城に報告する」
「きょ、教会もお城も嫌です!お願いします!ロイド様に決してご迷惑はお掛けしませんから。絶対にお役に立ちますから。ロイド様のお側に置いて下さい!」
白けた顔で見つめるトムと涙目になりながら懇願してくるアニーシャ。ロイドは今日何度目かの溜め息を付いた。
「あーもう、分かりましたよ!面倒みりゃいいんでしょ!まったく……いつもいつも面倒ごと押し付けやがって」
ぶつぶつ言いながらロイドはアニーシャの手を取る。
「住むところもないんだろ?取り敢えず、家にくるか?」
「おいロイド!面倒見ろとは言ったが、いくらなんでもそりゃ不味いだろ!」
トムの言葉をロイドは軽く無視する。
「俺のそばにいたいなら、今から敬語はなしだ。俺の命令には、はいかイエスでのみ答えろ。いいな?」
「お前はどこの鬼畜だっ!」
いたいけな少女にこのセリフ。ロイドはこういう奴だったと怒り狂うトム。だが、アニーシャは歓喜に震えていた。
(勇者様!!!)
前世のロイドに初めてあった時、言われたセリフと全く同じだったからだ。
「その代わり、俺の全てでお前を守ると誓う」
その言葉通りに、ロイドはアニーシャを守ってくれた。戦いの中、ロイドが出す命令はいつもひとつだけ。「俺から離れるな」でも、最後の命令を、アニーシャは聞くことができなかった。
「はい。はい!必ず、必ず従います……」
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