百太の恋文
平常心(たいら の つねみ)
明美さんへ
突然こんな手紙を送ってしまってすみません。
驚かれたかと思います。僕とは同じクラスになったこともないし、話したことだってないですから、現時点ではただの他人に過ぎないでしょう。
実はいつも登校する時、桜新町の駅で一緒になっています。
明美さんはいつも三両目の車両の端、優先席の前に立っていますよね。ぼくは明美さんが立っている向かい側の方の優先席に座って、あなたの後姿を眺めています。
初めて明美さんを見たとき、まるで雷に打たれたような気持ちになりました。
あの車両の中で一番綺麗で、一番輝いていたから。
初めてだったのに、僕はこの気持ちの正体がすぐにわかりました。
そして電車に乗って明美さんの姿を見るたび、毎朝雷に打たれる日々が続きました。
明美さんと出会った日は車両の遠くから眺めているだけだったのが、雷に打たれて動けなくなるので、優先席に座って見つめるようになりました。
僕はね、明美さん。あなたと沢山おしゃべりをしたいんだ。
お互いの事、二人の悩み、明美さんの愛犬ライムちゃんの事、僕の趣味の筋トレの事、明美さんの大きさ、僕の逞しさ。
あらゆることを話し合って、共有したい。そして二人の将来を語り合いたいと思っています。
それが僕の夢なんです。
僕は夢のために決断しました。
明美さんに思いを伝えるって。明美さんを僕の彼女にするんだって。
僕は緊張するとはにかみ屋になってしまい、ちゃんと思いを伝えられないんじゃないかと思ったので、恋文を書きました。
この手紙を出そうにも明美さんの住んでいる場所が分からなかったから、この間学校終わりに、下校するのを待って家までついて行ったんだ。素敵な場所に住んでるんだね。
さっきも言ったように、これが僕の初恋です。人を好きになるって、こんなに素晴らしいんだって、教えてくれてありがとうございます。
この新しい感情を、大事に大事に育てて、明美さんを大きな愛で包み込みたい。
明美さんのすべてが欲しい。
最後に。
愛してるよ、明美さん。
向井百太より
愛をこめて
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