第27話 星と地、そして神
『星の民と地の民』
この本の冒頭にはこう書かれていた
──はるか昔、とある天の神がこの世界に12の子を生み出した。それらは12の星座を冠した力を持ち、それぞれがひとつずつ星を作った。そして彼らは、己の力の証として自分達の力を宿す生命を生み出してそれぞれの星で生活をさせた。それが今いる人族の祖先である。
「これっていわゆる神話なのかな?」
レントは表紙と冒頭の文を見回して様子を伺っていた。
しかし、この本にあることは実際に起きたことであり物語ではなく実話なのであった。
続いてこう書かれている。
──生まれた民はそれぞれの力を使い、生活を豊かにし悠々自適に生きていたそうだ。しかし、異変は起きた。そう、地の神からの干渉である。この世に地がある限りその場所はその神の領域と定めて人々に侵攻を始めたのだ。それが"第一次星魔大戦"である。
第一次……
その言葉が表すのはこれがこの先何回も何回も繰り返され、レントの知る『星魔大戦』のそれまで繋がっているということ。
そして、何回も繰り返されていると言うことは、
「アビスの言う通り·····か」
前回のは父リダンと魔神の加護を持つ魔物との間で交わされた契約により、終わったように見えただけなのだ。
それを企てている地の神は良しとしなかった。力を蓄えて再び侵攻を始めるという事だろう。
──人々は抗った。それぞれの持ちうる力を全て使い、なんとかそれを退けた。それを見ていた12の神達は静観するにはことが大きかったようで、彼らの力をより強く持った生命『
──しかし、そこは星であった。地面があるのだ。地の神の領域そのものであった。
やはりと言うべきか地の神は干渉を始める。
もとより天の神と地の神は仲が悪く、そこで起きたのは天と地の神による喧嘩だった。
その余波によって生まれ、各星に脅威を│
『星導災害』と人が呼んでいるものだった。
いくら神といえども、何年も何千年も続けて戦うことなどできない。その結果5年おきにその力を振るい『星導災害』を起こしているのだ。
「なんて迷惑な話なんだ……」
レントは直にその恐ろしさを幼少期に見ている。
街は壊され、人は殺され、『星導者』やその仲間たちが来なかったらと思うと今でも冷や汗が出てくる。
それが、神と神の戦いの余波だなんて迷惑甚だしかった。
「とはいえ神だもんなぁ。僕にはどうしようもないでしょ……」
どうしようもない事からくる諦めを感じていたレントはひとつの疑問が浮かんだ。
それはレントの『星痕』のことだ。
「僕の力には天と地の文字が入った名前になったらしい。これってやばくないか?」
本によると天の神と地の神は仲が悪いとある。
それではレントの『星痕』はどうなんだろうか。本当に仲が悪いんだろうか?
「いや、これも星官が勝手につけた名前だしそこまで重要なことでもないか」
──天の民……所謂12の神が生み出した人々は喧嘩によるその力に脅え、ただその災害から抗うしか無かった。しかし、その争いに嬉々とするものもいた。地の民だ。
彼らは地の神の眷属であり、12の星それぞれに一体ずつ存在する者達で、彼らが先導して魔物を地上に侵攻させているのだ。
そして、『星導災害』が半ば自分たちを強くさせるものだと気づいてからはその勢いは猛烈に増した。
最近の研究では人族達の暮らす地上の下で、地の民が暮らす地下帝国があるんじゃないかとされている。
この本を読んであながち間違いじゃ無さそうだと思ったレントは、さらに続きに目を通す。
──地の民は喜び、天の民は恐怖し、12の神は望んでもない結末に戦慄する。これでは地の神のいいようにされてしまうと思った神々は、次の手をうつことになる。
神々は直接手を出せない、しかし、その民の出生や力の分配には手をだせる。そこで彼らは思いついた。何十年に1回魔物の殲滅に特化した人物を作り出そう、と。
その結果として5年に1回おきる『星導災害』に間に合うようにそういった民を作り続けた。
同じものばかりでは簡単に対策されてしまう。であれば、毎回違った特化のさせ方をしていこうということで毎回毎回作る神を変えながら作ることにし、それによって生み出された者達を神は『
「この話の通りだとすると、多分この特化させた民ってのはおそらく僕だよなぁ……」
ただ、レントの得意なものは影魔術だ。魔物に特化してるとはあまりにも言えないものであった。
搦手なんかは魔物より……そう、ある程度意思のある人に対しての方が効くのだ。
この意味はどういうことなのか、なにか意味があってそうなったんだろうか。
これでは天の神様というより地の神様から貰った力って言う方がしっくり来るのだ。
影魔術の特性から見てもそうだろう。いつだってレントは地面に領域を作り魔術を行使している。
そのままペラペラとページをめくるとどうやら終わりのようだ。
なんとも中身が薄いと言えば薄いし思っていたよりも機密になるほどのものも無かったと思っていたレントは最後のページにてその理由を知ることになる。
「これは……たしかに機密だな」
──代々星人名欄
〜
〜〜
〜〜〜
第63代 レオニア・ゾディア
第64代 ヴィーゴル・ゾディア
第65代 リブラダイン・ゾディア
驚くことに全員の字名が『ゾディア』だった。
これの表すところは『星人』とは、同じ家系だということだ。
そして、父の昔『ゾディア』という字名を使っていたと母から聞いた事がある。
リブラダイン……ゾディア……リダン……
レントの頭の中で点と点が繋がって線になったのを実感した。
何故父が『星魔大戦』で力を振るうことが出来たか、そして何故父がその力を持っていたか。
そして、次の代はレント自身だということに。
しかし、このレントの『星痕』は父も知らないと言っていた。本の通りだと全く同じようにはしないとあるし、それはその通りなんだろう。
この力をもって次の『星魔大戦』で力を尽くせ、そういうことなんだろう。
そんなことを考えているうちに夕食の時間がやってきた。
本も一応読み終えたし後日返しに行くとして、食堂へと足を運ぶことにした。
まだ人の集まる時間には少し早いこともあり、席に着いている人は少なかった。
まばらに散っている生徒を眺めていると、ひとり知り合いが居たので夕食を手にそちらへ向かい一緒に食べる事にした。
「やぁ、オリティア」
「あら、レント。あなたも夕食?」
「見ての通りだよ」
そう言いながら手に持つ食器を見せながら席に着く。
今日の夕食はハンバーグに白飯、そして肉じゃがだ。
「相変わらずバランスの悪い食事ね……」
「美味しいからなぁ」
そう言いながらももぐもぐと食べ進めるレント。
しかし、最近オリティアと顔を合わせてないせいか少し恥じらいを感じる。
「どうしたの? レント?」
「あ、いや、なんでもない」
「ふぅん。あ! そう言えば予選突破おめでとう!」
「あぁ、そうだった。ありがとう」
「そうだったって……」と呆れのようなため息とともにオリティアはさらに話を続けた。
「明日……だよね」
「うん。組み合わせとかは当日の直前らしいからまだ分からないけどね」
「レントが出るなら優勝間違いないでしょうね、もう少し多めに賭けておこうかしら」
「ん? 賭け?」
どうやら本戦では誰が優勝するか賭けが行われているらしい。
オリティアは、レントが予選突破の知らせを受けて直ぐにレント達に賭けていた。
「現金だねぇ」
「少しでも余裕は欲しいもの」
「僕が負けたらどうするつもりなんだ……」
「大丈夫よ、負けないもの」
オリティアの謎の自信は置いといて、破産するくらいまで賭けているわけじゃないだろう。負けても問題にはそこまでならなそうだ。
「そうよ。レントが負けるはずありませんわ!」
「私達は勝つ」
「我に勝った主は誰にも負けん」
「……」
いきなり口を挟まれてレントは少しびっくりした。
後ろを振り返ると、アガーテ、リンシア、ライゴウ、ケイスがいた。
……ケイスはせめて声を出してくれ。
「やぁ、みんなお揃いで」
「ミラはどこ」
リンシアはミラを探している。この人はいつもそうだ。
しかし、部屋から直接ここに来てオリティア以外会ってないレントにはあいにく居場所なんてわからない。
「ごめん、あってないからわかんないんだ」
「そう」
リンシアとの会話は慣れたもんだが、未だにこの会話はどうしたもんか。
その他の3人も同じ席につき、夕食を共にした。
「レントが勝つから私も賭けをしようかしら?」
「アガーテまでよしてくれ……君はする必要ないでしょ……」
「それもそうですわね」
「ちなみに我は主に賭けている。ぜひ勝ってくれ」
ライゴウまで賭けに乗っていた。どうやら話によるとこの賭けはただ賭けて儲ける以外にも理由があるようだった。
この賭けに参加することで本戦の観戦席に入れるようになるのだとか。
もちろん、観戦席チケットを買うことは出来るがどうせ買うなら……ということらしい。
「まぁ、僕が負けてもいいなら好きにしなよ」
『それはない』
全員から否定されてしまった。
なんとケイスも声を合わせていたので驚きだ。
それから前夜祭とも言える騒がしさをたてながらその日は終わることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます