6:アルバイトが休みの日:後輩くんside


 今日はバイトがない日だ。いつもは学校終わったらすぐにバイト先に直行して、最近は土屋先輩からえっちなスキンシップを受けたりしているが、今日はそれがない。べ、別にそれが恋しいとかそんなことはないんだけど、土屋先輩に会えない日があると、つい寂しく感じてしまう。


「おいおいどうした嘉人。次お前の番だぞ」


「ん、あーごめん。やるわ」


 つい友達と一緒にボーリングしている時もぼーっとしてしまうぐらいに。久しぶりにやったけど全然ストライク取れないな……。


「嘉人、お前下手になってね? 前にやった時ストライク結構取ってただろ」


「うーん、久しぶりにやったからじゃね」


「いーや、違うね。お前、気になってる女子がいるんだろ!」


「うっ!」


 昔からの友人である叶(かなえ)はズバッと俺が悩んでいることを言い当ててきた。やっぱり顔に出てたんだろうなぁ……親友に隠し事はできねぇや。


「図星ってか! 誰が気になっているんだ? 柏柳さんか? それとも田中さんか!?」


「違う、学校の人じゃない。バイト先が一緒で大学生の人」


「あー? 大学生だと? お前年上が好きなのか?」


「いや、別にそういうわけじゃないけど……土屋先輩はすごい美人だからさ。あ、絶対バイト先にはくるなよ!」


「安心しろって。俺は年下にしか興味がない」


「それはそれでどうかと思うけど……」


「うるせぇ! それで、嘉人はその人のことが好きなんだろ? さっさと告っちまえばいいじゃないか?」


「い、いや好きというか気になっているだけというか……」


「それを好きって世間ではいうんだよ。まぁ、躊躇するのもわからなくはない。女性は結構怖いところもあるからな。ほら、これ見てみろよ」

 

 叶がスマホであるページを開き、それを俺に見せてくれた。なになに、これは匿名掲示板か……【恋愛・結婚】「可愛い後輩をいっぱい誘惑しているのになかなか彼女を捨てて振り向いてくれない」……なかなかすごいタイトルだな。


「見てみろ。ここには略奪を推奨する恐ろしい女たちしかいない! 誘惑して早く奪いたいだとか、もっと過激なことをした方がいいとか……汚れたやつばかりだろ? はぁ……だから俺は純粋無垢な人の方が好きなんだ」


「いや、こんなこと考えている人たちしかいない掲示板を見るのが悪いんだろ。でもすごいなぁ。この「お茶生」って人、めっちゃ後輩のこと好きってことが伝わってくるし」


 そう、文面だけ見てもそれがひしひしと伝わってくる。「後輩くんとデートしたい」と言った普通のことを言っていることもあれば、「後輩くんの身体全部にキスマークつけたい」と変態ちっくなことも言っていたりなど、まぁ愛情は確かっぽい。やり方は間違えてるけど。


「それは俺も思った。ベタ惚れしてると言っても過言ではないよな。だが逆NTRは良くない、良くないんだ……! 俺は純愛物がいい……!」


「急に性癖の話をするんじゃない。でも先輩はこんな人じゃない…………はず」


 いや、最近の先輩はわざとらしくブラやおパンツを見せてきたりしているから……あながちそうじゃないとも言い切れないのでは? い、いや……流石にここまでイかれていることは……ないよね? 


 ……あれ、なんか仕事中にブラとかパンツ見せたとか書いてある。


 ……いや、違うはずだ。うん。


「ん? なんで若干言葉を詰まらせたんだよ」


「き、気のせいだって。ほら、休憩はここらでおしまいにしてボーリング再開しうようぜ」


「おお、そうだな。さーて、次は全部ストライク取ってやんぞー」


 ……まぁ、もし仮に先輩もああいう風なことを考えちゃうような変態だとしても。俺の気持ちは、多分変わらない気がする。キスマーク身体中につけられるのは嫌だけどね。




 一方


「あああああああああああああああああ! 真田くんに会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いた会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたいいいいいいいいいいいいいいいい!」


「でも彼女と遊んでるところに出くわしたくないから探しに行けないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」


「……今日も掲示板で相談しよ。スレタイトルは……【可愛い後輩をいっぱい誘惑しているのになかなか彼女を捨てて振り向いてくれない】っと」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る