第16話ハルカちゃんの過去

2月15日。作業所の昼休み。ハルカちゃんと喫煙所で二人になった。ハルカちゃんは切り出した。

「何か。何もかも奪われちゃうんだなって」

「ケンゴさんのこと?」

「わたし、17のとき名古屋でホームレスしてたんですよ。仲のいい女友達がいて。「アイミ」っていうんですけど」

「アイミと二人でホテルを泊まり歩いたり。二人で泊まればホテル代も安く済むじゃないですか」

「でも、アイミとも別れなきゃならないときが来て。知り合いの知り合いに車に乗せてもらって、名古屋からココ(本八幡)まで来たんです」

「そこでケンゴさんを紹介してもらって。本当にお父さんみたいな感じだった」

「わたし、すっごいお金持ちになりたいんですよ。とりあえずお金があれば何でもできるじゃないですか。本当に。いつ何があるか分からない。ココ(作業所)を追い出されるかもしれない」

「マエの利用者さんでスゴく好きな人がいたんですよ。LIKEじゃなくてLove。でも、その人も死んじゃった」

「わたしは三重県の実家で、親と上手く行かなくて家出したんです。高校辞めたときは自信の塊で。何でもやれる気がしていた。でも、現実はそうじゃなかった」

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