「脇役」でも輝けると証明したら(プロット作成により休載します)

加糖のぶ

一章 冒険者始めました

前編 見習い聖女と出会い

第1話 願いの代価



「――流れ星に3回願い事を願うと叶うって話、知ってる?」


 星空の下、小さな丘で幼い男女は二人肩を寄せて話し合っていた。

 日本では珍しい銀色の髪を持つ少女が隣に座る黒髪の少年に語りかける。


「…知ってるけど、どうせ迷信でしょ」


 季節は真夏。それでも夜の丘は夜風も吹き肌寒い、頂上なら尚更だ。少年は早く自宅に帰りたいという一心で適当に相槌を打った。


「はは、――君は夢がないなぁ」


 少年が素っ気ない態度をとっても態度は変わらない。それどころか少女は表情を一段と柔らかなものにしていた。


「でもねでもね、続きも聞いてよ! あれね、流れ星が落ちるような稀な瞬間にも「叶えたい願い事」を思い続けるような人だからきっと成功――って意味なんだって!!」

「――義姉はいつも唐突だね。それで、結局何が言いたいの?」


 少年が問う中彼女はニコリと一つ笑う。


「――君は、何か願い事はある?」

「…やっぱり唐突…でも、願い事かぁ」


 少年は彼女の質問に目を瞑り深く考える。考える。そして一つの答えに辿り着く。


「僕は――かな、?」


 それは幼い子供が考えることのない願望のような願い。それでも願いは願い…ありふれた、願い。


「ふふ、そっか。――君は――を願うのかぁ〜」

「…そう言って馬鹿にしてるでしょ?」

「ううん。そんなことないよ。だって、君が考えて君が「これなら」と思ったものが君の答えなんだから」

「 ――義姉ちゃんの話はたまに、というか難しい言葉を使うから、わからない…」

「(ニパツ)」


 少年の言葉に少女はただ苦笑いとも微笑んでいるともとれない表情を見せるだけで何も言わなかった。


「……」

「――あ! 見て見て――君!!」

「…なにさ?」


 少年は馬鹿にされたと思い込み少し拗ねていた。すると少女がまたいつもの態度で肩を揺さぶってくる。正直、鬱陶しいと思ったけど何があるのか興味が湧いた。少年の興味心が勝ち彼女が指差す先を見る。


「わぁー!!」


 普段と変わらない夏の夜空。ただ一つ変わっことと言えば、それは――


「流れ星…綺麗…」


 そこにはつい先程彼女が話題に上げた流れ星が天から地上に降り注ぐように流れていた。一つ、二つではない。数えきれないほどの夜空を照らす沢山の煌めき。


「――私は ――君とずっと一緒にいられますように〜!!」

「!」


 少年が幻想な風景に魅入っていると、突然立ち上がった少女が口に手を当て大きな声で叫び声をあげる。


「――義姉ちゃん。願い事は口に出しちゃダメなんだよ…」


 少年は驚き半分、呆れ半分といった様子で自分の知識を少女に伝えた、しかし彼女は満面な笑みを浮かべるとその場でクルリと回り少年の顔を覗き込む。


「ううん、逆だよ。願い事は叶うように口に出さないといけないんだゾ! 思いなんかじゃなくて言葉で!!」


 「絶対にこの夢を叶えるんだって世界に知らしめるんだ!!」――彼女はそう言った。


「…夢、か…」


 少年ははしゃぐ少女を横目に流れる星々を見てその一言を発した。

 ただそれは誰に聞かれるでもなく夜風と一緒に夜空に消えていく。



 ◇◇◇



     ガヤガヤガヤガヤ



 人々の活気の良い声があちらこちらから聞こえてくる。


 あぁ、なんだが懐かしい夢でも見ていた気分だ…にしても、五月蝿えな。


 男性はまだ夢現といった様子で今さっき見ていたはずの昔の夢の断片に浸っていた…しかし想像を超える人々の量の声が耳を触る。



      ガヤガヤガヤ



 だから五月蝿えって。こちとら頭が痛くて――てか体全体が痛くて堪んねぇんだよ。ん?――そもそも、なんで体が痛む?


 周りの煩さと体の節々の痛みに理解が追いつかず二重の意味で顔を顰めていた時、己が発した野太い声に普段の自分とは違うと驚く。驚きで脳が覚めぬ中自然と目が開く。


「…え?」


 目前に広がる光景を見た俺は唖然とし、思考を停止してしまう。側から見たら口をあんぐりと開けて馬鹿みたいだと思う。


 いつもと変わらない昼時の太陽の暖かな日差し。そして活気溢れる街の中。いつもと変わらない街を歩く……おい。


 いや、待て待て待て。ちょい待てや。なんだ冒険者って。アレか、コスプレか?


 そう思い首を動かし周りを歩く人々を眺めるがコスプレにしては些かリアルすぎる。

 傷がついたり至る所に穴が空いたり、持っている剣や斧、杖とかどう見ても俺の目にはにしか見えない。何度か見たことがあるコミケのコスプレとはまた別次元の完成度だ。


 それによく見ると冒険者コスプレイヤー達が俺のことを見て、また指を刺してコソコソと話したり笑っていた。


「?」


 そのことになんで笑っているんだ?と思い自分の格好を見たら――半裸だった。もう少し詳しく説明を入れるならパンツ一丁(黒のボクサー系)でゴミ捨て場に背中を預けている状態。


 自分の状況(カオス)を知った俺氏は自分のやけに男らしい胸と股間を手と腕で隠す。


「きゃっぁぁぁぁ!!」


 そして野太い声(おっさんの様なボイス)で叫んでいた。


 「叫ぶ」行為は女性又は風呂を覗かれたし○かちゃんだけの特権だと思ってるかもしれないがそれは違う。男だって叫びたい時は叫んでいいと思う。うん。


 正直、死にたい。

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