第55話「埼玉アイドルグループ結成?~ダサい玉って言うな!~」
※ ※ ※
コーヒーをゆっくり飲んでから再び三十分ほど散策。
ホテルの部屋に戻ってきた俺の視界に入ってきたのは――。
「じゃーーーーーん! どうっ!? しゅーくんっ! 瑠莉奈ちゃんも二三香ちゃんもすっごくかわいくなったでしょーーーーー!?」
菜々美はライブのときのようなアイドル衣装をまとっていた。そして、手を(白い手袋を装着した完全なライブスタイルである)バッと後方に勢いよく向ける。
「…………お、おにぃ……………」
「しゅ、修人ぉっ!」
そこには同じくアイドル衣装をまとって、恥ずかしそうに身をちぢこまらせる瑠莉奈と二三香の姿。
菜々美とお揃いだが、スカートが短い上に胸元が開いており露出度が高い。
あと、
ライブでお馴染みの衣装なのだが、リアルで見るとかなりキワドイ。
そして、輝いて見える。というか、実際に衣装がキラキラしているのだ。
「ほらほら、ふたりともー! 胸を張らないとだめだよっ! せっかくかわいい衣装着てるんだから! かわいさを全力アピールする! プロ意識足らないよーー!」
ライブ衣装を着たことでアイドル魂が刺激されたのだろう。
菜々美は部屋の隅にいたふたりの腕を掴んで強引に部屋の中央に立たせた。
「はい! それじゃー、さっき練習したようにポーズをとる! いくよー!」
菜々美が真ん中、瑠莉奈が左、二三香が右にポジションをとる。
まずは、菜々美が――。
「わたしたち埼玉マガタマガールズです! わたしはリーダーの玉瀞菜々美!」
菜々美は万歳するように両手を伸ばした。
マガタマって、
しかし、なんで勾玉。埼玉古墳から出土しているからか?
続いて、瑠莉奈が――。
「…………越草瑠莉奈……です……」
瑠莉奈は右手でピースサインを作って顔の横に持ってくる。
仕方なくやっている感がモロに出ていた。
「戸川二三香ですっ!」
二三香はヤケクソ気味に横ピースサインを作って(瑠莉奈と対になるような左手ピースである)、ポーズをとる。
これは……なんというか反応に困るな。
いや、まぁ、化粧によってみんなかわいくなっているのだが……。
ポーズとグループ名が微妙にダサい玉……いや、ダサい。
「しゅーくん! リアクションが薄い、薄いよ! そんなことじゃマネージャー失格だよーー! ここはわたしたちを絶賛して気分を盛り上げないとダメーーー!」
菜々美からも厳しいダメ出しが飛んだ。
すっかりアイドルモードである。
「……わ、わかった。……三人とも、すごくかわいいぞ!」
実際、三人はかわいい。
なので、全力で褒め讃える。
「もっと! もっとだよ、しゅーくん! 大絶賛してよーっ!」
厳しいな。
でも、俺はさっきの散策で菜々美たちを支えると決めたのだ。
こうなったら、トコトンやってやる!
「三人ともすごくかわいい! めちゃくちゃかわいい! さいたま市で一番かわいい! いや、埼玉県で一番かわいい!」
どんどん褒め讃えるスケールを拡大してみた。
「……おにぃ……さいたま市で一番かわいいは微妙……」
瑠莉奈からジト目でツッコまれてしまう。
し、仕方ないだろっ! 咄嗟だったんだから!
でも、さいたま市も埼玉県も人口が多いんだ!
さいたま市の人口は133万人もいる(2022年11月時点)。
埼玉県の人口は733万人だ(2022年10月時点)!
それのトップってことは誇るべきことだ!
「むうう……まぁ、いっか! 一応合格にしといてあげる!」
とりあえず菜々美からはオーケーをもらえた。
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