第三章「エクストリーム謝罪行脚」

第30話「島流し経験のあるアイドル」

※ ※ ※ 


「お待たせしました~♪」


 ホテルのロビーに神寄さんがやってきた。

 ニコニコ笑顔である(表面上は)。


「それでは、さっそく偉い人のところへ謝りにいきましょうか~♪」

「むうう~……気が進まないよぉ~……」

「菜々美ちゃん~……これ以上ワガママを言うと島流しですよぉ~♪」


 し、島流し……。


「ひぃい!? 島流しは嫌ぁーー! もう無人島で極限サバイバル生活するのは嫌だよぉおー!」


 本当に島流しするのか。しかも すでに菜々美は島流しされた経験があるのか。

 ほんと、芸能界って怖いところだな……。


「……無人島……楽しそう……」


 やはり瑠莉奈は大物だな。楽しそうだとは俺は思えない。


「ふふふふ~♪ よかったらいつでも連れていってあげますよ~♪ ヘリでひとっ飛びですから~♪ というかやっぱりしゅーくんさんの妹さんかわいいですよねぇ~♪ 芸能界に興味ありませんか~? というかうちからデビューしませんかぁ~♪」

「ちょ、ちょっと瑠莉奈を勧誘しないでくださいよ!」


 確かに瑠莉奈はかわいいのだが、こんなエキセントリックな業界に入れられない!

 菜々美みたいになったらどうしてくれるんだ!


「…………芸能界……今までは興味なかったし怖いと思ったけれど……ちょっとだけ興味が出てきた……」

「瑠莉奈っ!?」

「瑠莉奈ちゃん、それいい傾向だよー! わたしの代わりにアイドルになって馬車馬のごとくお仕事してー!」


 俺に続いて瑠莉奈まで人身御供に!?


「ダメだ、瑠莉奈! 菜々美みたいになってしまうぞ!」

「ちょっと、しゅーくん、それどういう意味!?」


 そのまんまの意味だ。

 昔の菜々美はおしとやかで慎ましやかだったのに!

 返せ! 俺の思い出の中の菜々美を返せ!


「ふふふ~♪ 人はいつか必ず大人になるわけですから~♪ 過ぎ去った昔の面影を女性に求めるのは酷ですよ~♪」


 神寄さんはエキセントリックなようで含蓄がんちくのあることを言うから困る。


 やはり俺たちとは経験してきた修羅場の数が違うということか……。

 なんてったって名前に『修羅』がついているもんな……ダテじゃないってことか。


「ともあれ~、ちゃっちゃとやるべきことはやってしまいましょうか~♪ とりあえず偉い人の前で『このたびはわたしの暴走で迷惑をかけてしまい大変申し訳ございませんでした』って言って頭を下げればいいですから~」

「むうう~……」


 不満そうだが、菜々美もこれ以上ワガママを言うことはなかった。

 さすがに自分の置かれた立場をわかっているのだろう。

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