アイドルになった幼なじみが俺のことを好きすぎて大炎上! ひたすら迫られまくるエキセントリックな生活が始まったのだった。
第2話「アイドルに寝起きを襲われる~エキセントリックになってしまった幼なじみ~」
第2話「アイドルに寝起きを襲われる~エキセントリックになってしまった幼なじみ~」
※ ※ ※
翌日――。
「しゅーくん! だいしゅきぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!?」
俺は寝起きを襲われていた。
俺に対して、こう呼ぶのは世界でひとりだけ。
「な、ななな、菜々美ぃい!?」
目の前で瞳を血走らせているのは絶世の美少女トップアイドル菜々美だった。
「なんで菜々美が俺の部屋に!?」
「妹ちゃんが家に入れてくれた!」
「…………おにぃ、ごめん…………命の危険を感じたので、とめられなかった…………」
部屋の入口にはショートカットヘアーの似合うパジャマ姿の背の低い女子……妹の瑠莉奈が立っていた。
いつもと変わらない無表情だ。だが、長年、一緒に暮らしてきた俺には瑠莉奈がめちゃくちゃ怯えているのがわかった。
「しゅーくん! ほかの女のことを見ないで! わたしだけを見て!」
「お、おう……」
瞳をさらに血走らせている菜々美に、俺はどうにか応える。
絶世の美少女なのだが、これではホラーすぎる。
幼い頃の菜々美は大人しい性格だったのに、すさまじいエキセントリック美少女になっていた。というか、なんで我が家にいるのだろう……。
昨日の放送事故騒動を起こしてから、まさか我が家にまで押しかけてくるとは。
なんという行動力。
「ふふっ♪ ふふふふふっ♪ しゅーくん、しゅーくぅんっ♪ しゅーくんだぁ~♪ 本物のしゅーくん♪ しゅーくぅうーん♪ ふふふふふ……♪」
菜々美は俺を見たまま笑い始め、名前を連呼してきた。怖い。
テレビではこんなホラーな笑い方をしたことはなかった。
もちろん、十一年前の幼い頃の菜々美も。
「な、なあ……訊いていいか?」
「なに!? プロポーズ!? 結婚式の日取り!?」
クワっと目を見開き勢いこんで訊ねてくる。美人が台なしである。
「……い、いや……さっきも訊いたが、なんで菜々美がここにいるんだ?」
「愛の力だよ!」
菜々美は勢いよく断言していた。
……すごいな。
会話を成立させる自信がない。
「……えっと、その……そういう観念的なことじゃなくてだな……。仕事とか大丈夫なのか? ほら、昨日……すごい騒ぎになったんじゃないのか?」
「なった! 全部ぶち壊してきた! あいあむふりーだむ! わたし自由! 今なら空も飛べる気がする! むしろ飛翔できる気がする! 一度も着陸しないで埼玉を東から西まで横断できる気がする!」
「……そ、そうか……」
とりあえず、状況はわかった。ぜんぶブッチぎってきたようだ。
だが、そう簡単にアイドルをやめられるとも思えない。
「……おにぃ……ちなみにテレビでは菜々美さんが失踪したってニュースになっていて……すごい大騒ぎになっている……」
「……おぉう……」
やっぱり穏便にすむはずがなかった。
しかも、昨日は思いっきり俺の名前をテレビで叫んでいたからな……。
誰かが捜しにくるのも時間の問題じゃないだろうか?
噂をすれば影。
――キキィイイイイイ!
我が家の前に、ものすごい音を立てながら車が急停車した。
「ハッ!? 追手っ!? このブレーキ音は
車のブレーキ音で乗ってる人がわかるのか。
「しゅーくん! 神寄さんがくる前に既成事実を作っちゃおう! 脱いで!」
そう言ったときには、すでに菜々美は俺のパジャマを脱がせにかかっていた!
「落ち着け! というかそんな短い間に既成事実なんて無理だから!?」
「しゅーくんの意気地なし! 甲斐性なし! 根性なしー!」
なんで罵らねばならないんだ!
「……おにぃ……不潔……」
瑠莉奈からも蔑まれてしまう。
というか、今のは俺が完全に被害者だろう。ひどい。
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