第530話 いきなりのピンチ

「私もセオドアと会えるようにする為に、早めに父上から家督を受け継いだのだ。

 仕事を依頼する為にな。そうでもしなければ、貴族と平民は会うことが出来ない。」


「うんそうだね。それが決まりだものね。」

 法律で決まってるわけじゃないけど、貴族の間でははばかられるとされていることだ。


「だからお前の苦労は想像にかたくない。どれだけリアムと会いたかったのかもな。お前がこれほどやれるとは思わなかったよ。」


「ありがとう、父さま。でも、僕には“ななつをすべしもの”としての使命があるから、僕が“ななつをすべしもの”だってことは、誰にも内緒にしておいて欲しいんだ。」


「私やリアムに、危害が及ぶ可能性があるからだな。」

「うん、だから情報秘匿の魔法契約を結んで欲しいんだ。グリフィス侯爵にも。」


「……生き残るのは、私とグリフィス侯爵と皇太后陛下だけということか……。」

 父さまが目線を落とす。


「そうだね。本来なら神罰は、大臣全員にあるものだから、話しちゃったけどね。」

「──……本来なら死ぬ筈だったということだな、私も。お前が止めてくれたのか?」


「……うん。皇太后陛下と、2人は許して欲しいって、神様にお願いしたよ。」

「そうか……。ありがとう。グリフィス侯爵を呼んで来よう。近くにいる筈だ。」


 父さまは近くを走り回っていた従者を呼び止めて、グリフィス侯爵を連れて来てくれるように頼むと、僕の差し出した情報秘匿の魔法契約書にサインをしてくれた。


 ほどなくしてグリフィス侯爵がやって来たので、同じようにサインをしてもらう。

 契約を遂行する為に、サインした魔法契約書を空中に投げた時だった。


 グリフィス侯爵をここまで呼んで来てくれた兵士が、じっとこちらを見ている。

「どうした?もう用事は済んだのだ。早く従者たちの避難誘導に戻りたまえ。」


 他の兵士たちは、大臣たちが向かおうとして、落ちてきた天井に塞がれて、閉じ込められた扉以外の出口から、中にいた従者たちや外の従者たちを誘導しているっていうのに。


 その人は瞬きをしないで、口をポカンとあけたままこちらを見ていて様子がおかしい。

「ミ……ツケ……タ……。

 “ナナツヲスベシモノ”……。」


「──!?」

 まるで誰かに操られているかのように、口の動きと声が合っていない。


「“不可視の手”!!」

「うわあ!!なに!?」

「どうした!?アレックス!!」


 何か見えないものが空を切ってこちらに向かってくる感覚がある。そして大臣たちを閉じ込めていた、王宮の天井によって塞がれていた扉が、無理やり何かにこじ開けられる。


 ──こじ開けられたというより、見えない力の強い何かが、無理やりドアを押して、天井の瓦礫すらも押しのけて、中に入ってきた感じだ。瓦礫ごとドアが勢いよく開いた。


「ルーデンス王太子!?いかがなさいましたか!?ルーデンス王太子!王太子!?」

「様子がおかしいぞ!」

 扉の向こうの廊下から兵士の声がする。


 ルーデンス王太子たちは、さっきその扉から連れ出されて、国外に放り出す為に連れて行かれた筈だ。まだ王宮の廊下にいたのか。


【オニイチャン、ルーデンス王太子たちの体から、何かが出てきました。

 さっきの兵士からもです。気を付けて。】


 え!?どういうこと!?

 次の瞬間、僕は父さまたちが見つめる中、見えない巨大な手のような物に、突然体ごと包まれて、空中に持ち上げられてしまった。


「なんだ!?いったい何がおきている!?」

 グリフィス侯爵が叫ぶ。

「アレックス!!手を伸ばすんだ!」

「うわああああああ!!」


 崩れた王宮の天井は、何も遮るもののない状態だ。父さまが僕に手を伸ばしたけれど、もの凄い力で持ち上げられて、ぐんぐんと僕の体は地上から遠ざかっていく。


 見上げると、空の上に裂け目があった。どこかで見たことのある形をしている。そして僕は見えない巨大な手ごと、その裂け目の中に吸い込まれてしまったのだった。


 ──ピチョン……。


 顔に水滴が当たって目を覚ます。

 僕はところどころ薄っすらと、苔のようなものが光っている、巨大な洞窟のような場所で、地面に横たわっていたようだった。

 ここ、どこなんだろう……?


 目の前には洞穴があって、奥の方までつながっているのか、そこから水が流れてきていて、目の前の巨大な池のような場所に、流れて来た水がたまって水面が揺れている。


「──ようやく捕まえたぞ。ようこそ、“ななつをすべしもの”。我らのアジトへ。我ら総出で手厚く歓迎しようじゃないか。」


 後ろから声がして振り返ると、ザザ・アイワナ・バイツウェル2世の肩に乗った、リカーチェ・ゾルマインがこちらを見て笑った。


 その後ろには、以前僕らを襲ってきた、10人の男たちが立っている。ここって敵のアジトなの……!?僕、あの変な力を使って、あいつらにさらわれちゃったんだ……!!


────────────────────


第1巻の初稿終わりました〜(*^^*)


深夜にX(旧Twitter)始めてみました。

コミカライズと書籍化もすることだし、と思い……。

昔作って放置して以来です。


今インスタしか使ってない笑

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@YinYang2145675


です。


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