第499話 次代の龍神候補かつ、英雄の武器職人のスカウト

 そこに、窓をくちばしでコツコツと叩く音がした。こんな雲の上まで飛ぶ鳥なんて、いなくもないけど、そうそういない。


 窓を見ると魔法の手紙ミーティアが変化した鳥だった。僕が窓に近付いて窓を開けて、両方の手のひらを差し出すと、ミーティアは鳥から手紙の姿に変化してポトリと落ちた。


「──タンザビアさんからですね。無事お孫さんのスカーレット嬢のスカウトに成功したみたいです!龍神候補が加わりますよ!」


「おお、それは良かったな。

 英雄候補は何人いたっていいが、すべての種類の英雄が揃う必要があるからな。」

 ガレシア兄様がカップを手に笑顔で言う。


「はい!また賑やかになりますね!僕、タンザビアさんを迎えに行ってきます!

 ヒルデ、ごめん!またあとでね!」

「え?あ、うん。」


 僕の為のおめかしをして来てくれたヒルデを、このまま放置するのは申し訳なかったけど、タンザビアさんは僕が行かないと、フルバティエまで戻ってこれないからね。


 獣人の国・スウォン皇国、ドラゴンの国・バルヒュモイ王国、元失われた大陸・エザリス王国。この3つだけが、僕の天空の国・フルバティエに直接来れるルートを持ってる。


 それ以外の国から来る人たちは、僕が迎えに行かないと来られないんだよね。スカーレット嬢はリシャーラ王国に住んでいるから、そこに行くとなると送り迎えが必要だ。


 リシャーラ王国にも、直接来られるルートを設置したいところなんだけど、そこを襲撃されると困ったことになるからね。


 国の守りが堅い場所に出入り口を設置して貰えないと、おいそれとは開通出来ないし、国が僕のことを認めてくれる必要がある。


 その点でリシャーラ王国には置かれないよね。ルーデンス王太子のこともあるし、正直自分の祖国が信用出来ないんだもの……。


 叔父さんの家の近くに置くのも、叔父さん1人に守りを任せることになっちゃうから、それも出来ないしなあ……。


 いくら叔父さんが強いったって、1人じゃ限界があるもの。リシャーラ王国が攻めてこないとは、今の僕には言い切れないし。


「──お待たせしました!」

 僕は時空の海を出て、笑顔で立って待ってくれていた、タンザビアさんに駆け寄った。

「いや、大して待っちゃいないさ。」


「あれっ。」

 僕が駆け寄ると、その背後からヒョコッとスカーレット嬢が半分顔を出して、こちらを見ていた。もう来てくれたんだ!


「お久しぶりです!スカーレット嬢!」

 僕が笑顔でそう声をかけると、スカーレット嬢は困惑したように眉を下げた。


「あ、あのさ……。じいちゃんから英雄の武器を作れるようにしてやる、そんでお前も英雄候補になれ、って連れて来られたんだけどさ……。それって一体どういうこと?おまけに口外禁止の魔法契約も結べって……。」


「ああ、そうか、タンザビアさんは口外禁止の魔法契約を結んでいるから、詳細を話せなかったんですよね。──ごめんなさい。

 詳しいことは、僕もスカーレット嬢と魔法契約を結ばないと話せないんです。」


「ええ……。怖いんだけど。」

 スカーレット嬢は少し引き気味になりながら、眉間にシワを寄せてそう言った。


 これがスカウトされた人の本音かもなあ。

 今までは知ってる人だったけど、知らない人を英雄候補として訓練に誘うのは、かなり難しいかも知れないな。


 だからといって、今はまだ人に知られるとまずい時期だから、契約魔法抜きだと、誘うのは難しいからねえ……。


「スカーレット、じいちゃんのことが信じられないってのか?そりゃさびしいな。」

 タンザビアさんが眉を下げて笑う。

「そういうわけじゃないけどさ……。」


「アレックスもじいちゃんも、お前の力が必要なんだ。それにホレ、お前、小さい頃からじいちゃんみたいに英雄の武器を打ってみたいって、ずっと言っとったろうが。」


「そ、そりゃあね!すべての鍛冶職人の夢じゃんか、勇者や英雄の武器を打つってのは。

 出来るものならやってみたいよ。

 私だって、伝説の武器が作りたい!」


「それが本当に出来るって話だ。じいちゃんの跡を継げるのはお前だけだ。頼むからじいちゃんを信じて、アレックスと契約魔法を結んでくれ。な?スカーレット。」


「う……。わかったよ。じいちゃんは嘘ついたことねーもんな。それが英雄の武器を打つのにどうしても必要だってんなら、わかったよ、するよ、魔法契約!」


「ありがとうございます。じゃあ、これに血判を押して、空中に放り投げてください。」

「血判……!わ、わかった。」

 スカーレット嬢はゴクリと生唾を飲んだ。


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この作品の書籍化が決まりました。

アルファポリスに転載を始めたとのご報告をしていたかと思いますが、コンテストにも参加していたのですが、書籍化にあたり、コンテストは取り下げが決まりました。


こじらせ中年のコミカライズが7月に決まって、こちらの作品が最初8月にご連絡をいただいていたようで、立て続けの快挙です。


コンテストに参加中の他作品も、決まってくれれば良いのですが。

コンテストと相性が悪いのか、どちらの作品も最終選考にも残れなかったので、まさか打診があるとは思いませんでした。


WEB版を出来るだけ残せるよう、お話をすすめておりますので(今のところ編集部はOKだそうです)、引き続きよろしくお願いいたします。


詳細は情報解禁日が決まり次第お知らせいたします。


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