第430話 魔道具の登録と薬の販売差し止め申請

「魔道具の登録と、既に魔塔に許可を得て販売されている魔法薬の、違法性について言及したいという話だったけれど……。」


 エリクソンさんは異空間から紅茶のセットを取り出して、僕に振る舞ってくれながら、じっと僕を見つめてきた。


「はい、魔道具なんかも、お2人が担当されているんですね。」

「物によるんだ。今回の魔道具も無属性魔法を使ったものだというからだな。」


「魔法薬に関しては、今回は私たちの管轄ではなかったけれど、同じ人から話があるということで、まとめて私たちが担当する、ということになったのよ。」


「そうだったんですね。

 改めてよろしくお願いします。」

 僕は早速作ったばかりの魔道具を、まずはマジックバッグから取り出して、テーブルの上に置いた。


「これを登録だけして、販売とかはせずに、僕だけが使えるようにする、なんていうことは出来ますでしょうか?」

「これはどういったアイテムなの?」


「これは音声と映像が記録出来る魔道具になります。そして特徴としては、空中に浮かせることが出来、かつ、──隠密機能を備えているものになります。」


「隠密機能だって!?魔道具にかい?」

「はい。つまり、人の目からこの魔道具を隠して、記録、撮影が可能な物になりますね。

 ですので、販売するとなると色々と。」


「まあ、需要は高いだろうが、戦争の火種にもなりかねんな。ちょっと見せてくれ。

 ……ふむ、認識阻害の無属性魔法が組み込まれているんだな。厳密にはスキルの隠密とは異なるが、目的としては隠密のスキルを持つ人間と同じことになるわけか。」


「そうですね。なので認識阻害よりは、隠密による諜報活動に近いかも知れないなと。」

「これをあなただけが使用するというのは、いったいどういうことに使うつもりなの?」


「僕は商人でもあります。それなりに稼がせて貰っているつもりです。当然僕を狙ってくる人たちもたくさんいます。襲われた際の証拠集めがメインの目的にはなりますね。」


「──メインでない目的は何なの?」

「……僕を狙っている人たちにつけて、情報を集める為です。」


「あなたはそれを魔道具にやらせて、諜報活動をさせようというのね?

 それこそ王家の影のようね。」

「はい、そうなりますね。」


「それは確かに難しい問題だな……。諜報活動というのは、別に王家だって表立って認められているわけじゃない。王家の影が他国に侵入していることがバレて捕まったら、賠償責任問題にだって発展するんだ。」


「ですが、王宮に侵入しなければいいだけですよね?仮に商人や貴族の家に侵入したとしても、不法侵入を罰せられることはあっても、賠償問題にまでは発展しない筈です。」


「法的に言えばね。王宮以外に侵入しただけで、何かを盗み出したわけでもないのに、それを法律で罰することの出来る国は、王族会議に参加する国の中では存在しないわ。」


「これからは情報戦の時代だと僕は考えています。その能力のある人間を雇うことは難しいので、貴族はそれぞれ他家に人を送っていますが、送れる数は限られる。」


「それをこの魔道具で、一気に解決してしまおうというわけだな。」

「はい。」

「すごい発明ではあるが……。」


「そうね、他の人が使用出来ないという点において、大々的に開発品として認めることは難しいと思う。ただし、魔塔は新たな研究を常におこなう場所。今回の発明が今後の研究の礎にならないとは言えない。」


「うん、技術はとても素晴らしい。

 魔塔に君が開発したものとして、登録することは可能だよ。ただ使用許可を出すとなると、ちょっと判断が難しいな。」


「そうですか……。」

 僕はこれを使って、ルーデンス王太子たちのしていることの証拠を撮ろうと思っていたんだ。証言だけなら握りつぶされるからね。


 だけど使用許可が取れないとなると、違法な品ということになってしまうから、証拠能力が低くなってしまうし、使っているだけで僕が捕まることになったら困ってしまうな。


「ひとつあるにはあるわ。

 抜け穴のようなものだけれど。」

 エリクソンさんは目線を落として、紅茶を一口飲んでそう言った。


「本当ですか!?」

「ラウマンさん。あなた、これ、スキルで生み出したんでしょう?」

「──えっ?」


 僕のスキルについて知らない筈のエリクソンさんに、突然そんなことを言われてギョッとしてしまう。確かにスキルで生み出したものだから、なんの研究もしていないけど。


「ああ、なるほどな。そういうことか。」

 バウアーさんも納得したようにうなずく。

「どういうことですか?」

 2人だけで妙に納得しあってるけど。


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