第427話 迫りくる追手
人を人の法で裁くのなら、それにそったやり方が必要だ。これはちょっと……、ミーニャにも相談しないとだなあ。
ミーニャの許可を得ずには、話も出来ないからね。それ次第では、オフィーリア嬢はともかく、万が一のことがあった時に、ヒルデはなんとか出来るかも知れないし。
【なにを相談するんですか?】
ちょっとね。形だけではあるけど、ヒルデを守る為の立場を作るための相談、ってところかな。こればっかりはミーニャの許可なく出来ないし、するつもりもないから。
【よくわかりませんが……。ヒルデさんを守る為の方法の相談ということでしょうか?
ヒルデさんに先にお話しなくてもよいのですか?それにどうしてヒルデさんだけなんでしょうか?オフィーリアさんは?】
ミーニャの許可を得てからだね。
今日の夜にでも話してみるよ。
オフィーリア嬢は立場的に難しいんだ。
その違いかな。
それに、オフィーリア嬢には王家の影がついているからね。危険は少ないと思う。
それがわからないのは、オフィーリア嬢を縁戚と侮っているからじゃないかな。
キリカは知ってると思うけど、王家の影は政務に関わる人間にしか、専属でつくことがないんだ。専属の護衛はいても、指示を聞いて行動する影がいないってことだね。
【はい、なので今王家の影に直接指示を出せるのは、現王と、先代の皇太后のみとなりますね。政務を行っていた関係で、先代の皇太后は直属の王家の影を持っています。】
うん、そうだね。オフィーリア嬢についている王家の影──レンジアたちは、先代の皇太后さまがつかわしている者たちだろうね。
可愛がっていると聞くし。
先代の皇太后さまがオフィーリア嬢を可愛がっているのは知っていても、まさかオフィーリア嬢の指示を聞くように、命令されていることまでは知らないんじゃないかな。
だって自分にはそんな影、ついていないんだからね。たとえ王太子と言えども、直接影に指示は出せない。ついているとすれば、現王の影が護衛しているってところだね。
つまり指示も出せないし、護衛以外の行動をすることもないと思う。だからルーデンスさまのしていることが、王さまの耳に入っているかはちょっとわからないけど……。
【報告しろと言われない限りは、王家の影の内部で報告するにとどまるようですね。】
だよね。だから知らない可能性もあると思うよ。王さまたちはね。知っていたらさすがに何をしてもやめさせるだろうからね。
オフィーリア嬢の指示をも聞くように命令されている影と、護衛のみを命令されている影。どちらが強力な味方かは明白だよ。
だってオフィーリア嬢の影は攻撃可能だ。
魔法阻害の魔道具があったって、オフィーリア嬢に害をなすことは不可能だと思う。
王家の影たちがオフィーリア嬢の指示を聞くよう、命令されていなかったとしてもね。
問題なのはヒルデだ。武器の携帯が授業以外で許可されない学園内部じゃ、いくらBランクの冒険者と言っても、丸腰のヒルデに勝ち目は薄いよ。その為の方法が必要なんだ。
今後ルーデンスさまたちが学園に残ることがあったとしても、2度と手出しされないようにする為にもね。
【よくわからないのですが、それとミーニャさんに、どのような関係が?】
ちょっと恥ずかしいから、僕がミーニャに話すまでは、内緒にさせて……。
僕は指先で頬をかきながら言った。
お昼休みが終わって、午後からはまた長距離持久走の時間だ。だいぶスタミナがついてきたから、騎士科にまじって走っても、負ける不安がかなり低くなった気がする。
運動着に着替えて僕らが走り出そうとした時だった。後ろがやけに騒がしい。
「──!?」
「おい、もう先頭集団が追いついて来たぞ?
しかも先頭はルーデンスさまだ!」
いつも途中で追い付いてくるルーデンスさまたちが、スタート前の僕らに迫ってくる。
しかも先頭を走るのは、ルーデンスさまお1人だけじゃない。
いつもルーデンスさまと一緒にいる、宰相や騎士団長の子息たちも一緒に走っている。
ヒルデは?ヒルデはどうしたんだろう?
いつも不動の1位を取っているヒルデの姿が見えなかった。まさか、ここに来る途中でなにかあったのかな?キリカ、わかる?
【ヒルデさんはまだ、いつものペースで走っているようで、無事です。……ルーデンス・ソバト・リシャーラたちは、リカーチェ・ゾルマインが海洋要塞国家ルリームゥを通じて販売した、能力向上薬を飲んだようです。】
それって、例の、特殊能力を付与までは出来ない、最初の薬ってやつだよね?
【はい、そうですね。
ずいぶんと早くこの国に到達しましたね。
もう少し時間がかかるかと思いましたが、王家のつてを使って、手に入れたようです。
あれは能力向上薬であると同じに、飲んだ者の視界が、ザザ・アイワナ・バイツウェル2世とつながる薬です。……まずいですね。
どの程度、薬を飲んだ人間の視界を見てるものかわかりませんが、オニイチャンがルーデンス・ソバト・リシャーラたちに見られたら、いずれ存在に気付かれますよ。】
ヒルデに毎回負けていたのが悔しかったのかな?そんな怪しげな薬を飲んでまで……。
文官科に迫って来たルーデンス王太子が、僕と目があった瞬間、ニヤリと笑った。
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