第238話 この世に存在しないもの

【回答、

 ●レベル28の解放条件。

 ・スキル経験値が230000に到達すること、現在227638/230000を達成済みです。

 ・英雄候補者5人のスキル経験値を合計1000引き上げること。現在1000/1000を達成済みです。

 ・レベル27の開放。


 ●レベル29の解放条件。

 ・スキル経験値が240000に到達すること。現在227638/240000を達成済みです。

 ・時空の扉を50回使用すること。現在30/50を達成済みです。

 ・レベル28の開放。


 ●レベル30の開放条件。

 ・スキル経験値が250000に到達すること。現在227638/250000を達成済みです。

 ・この世に存在しないものを1つ生み出すこと。現在0/1を達成済みです。

 ・レベル29の開放。


 以降の情報はありません。】


 ……ついにスキル経験値が、達成済みにならなくなっちゃったかあ……。

 さっきだいぶ経験値を配っちゃったしね。


 そもそも経験値100で、スキル経験値が1上がる仕組みだから、本来ならもっと厳しい条件の筈だけど、経験値アップスクロールと、スキル経験値アップスクロールの重ね掛けのおかげで、かなり稼げているからなあ。


 創生の海は早く使ってみたいし、次にダンジョンに潜る時は、みんなに配るにしても、その分の経験値は残しておかないとね。


 ──それにしてもこの世に存在しないものを1つ生み出すって、逆に何を生み出せばいいんだろ?存在しないものって、なに?


 便利そうでいて、まったく想像つかないなあ。これが欲しいとか、こうだったらいいのに、とかあんまり考えてきたことが、これまでなかったんだよね。


 ……これ、僕がやろうとしたら、思いつかなくて、逆に一番大変なクリア条件かも知れないぞ。まさか物欲がないのが、あだになる日がくるなんて。


 みんなに、あったらいいなって思うものとか、欲しいと思うものを、聞いて回ってヒントを得るしかないかもね。


 僕はこの時、そんな風にのんびり考えていたんだけど。

 まさかこのスキルが、世界の明暗を分けるとは、その時は思っていなかったんだ。


 地獄の訓練に肩を落として嘆くエルシィさんを、一緒に頑張りましょう!と、ギギルさんたちが励ましていた。


 次に僕が来る時までに、クローディアさまが僕のお店を用意しておいてくれるということを改めて伝えてくれる。


 たくさん汗もかいたし、湯冷めしてしまっただろうからと、改めてお城のお風呂に入れてくれることになって、僕はエルシィさんとルルゥさんがどっちに行くのか確認をした。


 2人とも、さっきゆっくり出来なかったからと、改めて露天風呂に行くと言うので、男子は城内大浴場に行こうという話になった。


「──うわあ……!!」

 分厚い木の板をいくつも重ねて作られた、とってもいい香りのする、明るくて広いお風呂だった。僕こっちのほうが好きかも!


 木の香りって好きなんだよねえ。

 なんだかホッとする。床も壁も1面木の板で作られていて、シンプルながら上質な素材を使った、違った趣旨で豪華な造りだった。


「お城に勤めてる方たちは、毎日こんなお風呂に入れていいですね!」

 と言ったら、普段は住み込みの人たちしか使わないんだって。


 月に2回に従業員の家族に開放される機会があって、その時みんな入りにくるらしい。

 住み込みの人たちの大半が女の人だから、広いこっちのお風呂は普段は女風呂だそう。


 そう考えると、女性専用のお風呂にコッソリ侵入したかのようで、なんかちょっと恥ずかしいや……。女性の幻覚まで見えるよ。


 と思ったらヒナさんだった。男の子だと分かっても、やっぱり一緒のお風呂は緊張するなあ……。獣人は角で男性と認識するらしいけど、人間からすると女の子なんだもん。


 僕はコソコソと体を隠しながら洗って、サッと浴槽にすぐに戻ると、ヒナさんのほうを見ようとしないようにしながらあったまる。


 ギギルさんたちは楽しそうに、ヒナさんとお喋りしながら、背中を流し合ってるみたいだ。叔父さんも加わってるみたい。叔父さんも獣人に慣れてるし、気にならないのかな。


 お風呂を出たら、部屋が用意されてて、広い客室のタタミの上に、フトンという平べったい寝床が敷かれていた。今夜はここでみんなで寝るってことみたいだね。


 床で寝るとか変な感じだな。痛くないのかな。そう思ったけど、フッカフカで、なんなら叔父さんの家の藁のベッドよりも寝やすかった。朝までグッスリだったよ。


 バタバタと動き回る音に目を覚ますと、みんな着替えて支度をしていた。ヒナさんの着替えを見てしまって、慌てて背中を向ける。


 僕も着替えを終えると、朝食の準備が出来ましたと、侍女が呼びに来て、また昨日の宴会場へと案内をされた。

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