第188話 それぞれの時空の扉の向こう側

【回答、その通りです。】


 つまり僕が探すべきなのは、半分人間で、かつ獣神や龍神になれる可能性のある、スキルを持ってる人ってことになるね。


 もちろん、それ以外にも、今までの経験値で、数値が高い人もいるから、その人たちも探すことになるけど。


 ちなみに、獣神と龍神になるのに必要な種族スキルってなんなの?種族独自の固有スキルだって、レンジアの時に聞いたけど。


【回答、レンジア(暗号名:コバルト)の場合、銀牙狼族の種族固有スキルにより、他よりも成長が早いだけとなります。


 すべての種族独自の固有スキルが、変化に影響を与えるわけではありません。】


 あ、そうなんだ。

 僕が思っていたのとは少し違うんだね。

 てっきり剣聖の時みたく、英雄に変化する為の種族スキルがあるのかと思ってたよ。


 なら、別に半分人間であることに、固執することはないのか。現地に行って探索して回ったほうが早いかも。


 その為にも、早く〈海〉スキルのレベルを上げて、検索可能な範囲を広げていかないとな。またヒルデたちの狩りに混ぜて貰おうかな?毎日どこかに行ってるみたいだしね。


「叔父さん、ただいま!注文終わったよ!」

「そうか、こっちは準備は出来ているから、昼ごはんを食べたらさっそく潜るか。」

「うん!分かったよ。」


 今日明日は市場がお休みだから、叔父さんとアイテムボックスの海に潜って、時空の扉がどの国につながるのか、確認しに行く予定なんだ。楽しみだなあ!


 急いでお昼ごはんを食べると、記録用の魔道具をマジックバッグに入れて、時空の海を発動させた。鉄の扉が僕らの前に現れる。


 扉を開けて中に入ろうとすると、また僕の後ろで何かが小さくぶつかる音がした。

 ……レンジアだ。ごめん。ほんとごめん。

 でも入れない理由はまだ話せないしなあ。


 新しく出来た魔道昇降を使って、5つつずつ扉を確認してゆく。5つ下の階まで魔道昇降で降りて、上の方を見上げて、灰色になっていないかを確認する作業を繰り返した。


 ちょうどピッタリと、例の階段の脇に謎にあいた空間にハマるように現れたから、もともとその為の空間だったんだろうね。


 おかげでこれからは、階段を降りるとしても、壁際に寄って恐る恐る降りなくても良くなったよ。何しろ魔道昇降の存在で、反対側にも壁が出来たようなものだからね。


 普通に降りれば落ちないとは、頭では分かるんだけど、はるか先までポッカリとあいた穴の横を通るのは、正直怖過ぎるもの。


 まず1番から72番目の扉。

 ここは相変わらず灰色のままだ。


 73番目の扉。お祖父さまの扉だ。

 ここはリシャーラ王国につながることはわかってる。


 ……そして問題の76番目の扉。

 ついに見せる時が来たんだね、ここを。

 僕は初めて叔父さんに、先代国王のアイテムボックスにつながっていたことを告げた。


 それを聞いて目を丸くする叔父さん。95番目の扉がレグリオ王国につながっていたことを確認した時よりも、ある意味驚いていたよ。王族のアイテムボックスだもんね。


「一応確認しなくてはならないだろうな。

 単純に、そのアイテムボックスの持ち主の生まれた国につながるだけなのか、……そうでないのかを確かめる為にも。」


 アイテムボックスが、──もしも持ち主の生活圏の周辺につながるのだとしたら。僕と叔父さんはそのことを懸念していたんだ。


 お祖父さまのアイテムボックスは、僕がもともと住んでいたところの近くと、叔父さんの家の近くまで行くことが出来る。


 だけど、レグリオ王国の元近衛騎士だったと思わしき人の扉は、いつだって同じ港町へとつながっていた。──それがレグリオ王国の王宮が近いからなんだとしたら?

 

 近衛騎士の生活圏は、当然王宮の近くに限られてくるだろうね。

 僕はただ港町とだけイメージしたのに、同じ港町につながった理由にもなるよ。


 お祖父さまのアイテムボックスが叔父さんの家までつながるのは、お祖父さまがそこに来たことがあるからだとしたら。


 叔父さんがあの家を手に入れたのだって、ただの偶然なんかじゃないのかも知れない。

 お祖父さまは叔父さんが手に入れやすい、欲しくなる家を探してたのかも知れない。


 もしもそうなら、扉の向こうはいきなりリシャーラ王国の王宮の中の可能性だって、おおいにあるわけだ。


「分かった。行ってみよう、叔父さん。」

 76番目の扉を開けて中に入ると、金銀財宝の山の中に、王家の紋章入りの短剣があることに、はたと叔父さんも気が付いた。


 短剣を引き抜いてみて、中にも特別な意匠が彫られた刃の部分を確認して、

「……王家のものに間違いないようだな。」

 と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る