第133話 レンジアに聞き取り調査

「あの、さ……。レンジアって今も、僕のお風呂のたびに、ついて来てるの?」

「お師匠さまから、アレックスさまが裸の時は、もう監視しなくてよいと言われた。」


「そうなの?」

「だから近くで待機してる。」

 お師匠さまって誰だろう……。

 もうってことは、前のは指示なんだ……。


 とりあえず、見知らぬレンジアのお師匠さま、レンジアのお風呂場での監視依頼を、取りやめていただいてありがとうございます!


「そ、それでさ、その……。」

 どうしても言い出し辛くてモジモジしてしまう。女の子にこんなこと聞きづらいよ!


「ぼ、僕が普段、この部屋で扉を開けて中に入ることがあるでしょう?

 ……その時も、毎回ついて来てるの?」


「はじめてアレックスさまが扉の中に入った時に、しっかり確認したから入っていない。

 私の調査は完璧。だから必要ない。」


 そっか!あの時ついて来てたんだ!

 僕が中のものを色々確認してる間に、調査を終えたってことだね。見られたのは困るけど、それ以降はついて来てないってことか。


 僕がアイテムボックスの海を、ソレ用の場所として使い出したのが、それ以降だから、うん!見られてない!だいじょうぶだ!


 よ、よかったあ……、レンジアがズレた完璧主義者で。あんなとこ、女の子に毎回見られてたらって思うと……。


 僕がわざと見せたんじゃなくても、僕、責任とって、レンジアと結婚しなくちゃならなくなっちゃうよ。レンジアだって、そんなんで結婚させられても困るよね。


 結婚のきっかけは、旦那さまの恥ずかしいところを毎晩見せられていたから……とか、人に言えない!!僕が変態だって思われる!


 僕は後日、レンジアがそのお師匠さまという人から、あなた、大きなチャンスを逃したわね……、と言われることをまだ知らない。


「でも、あの時はついて来てたんだね?」

 レンジアは、レグリオ王国の小船の上で、落ちかけた僕を助けてくれた。時空の扉をくぐってついて来なければ不可能なことだよ。


「アレックスさまたち、他のところに行くと話してた。護衛と監視が仕事。見失えない。だからついて行った。」


「えと……、その時のことは話した?」

「……嫌だけど報告した。」

 やっぱりもう、報告されちゃってたか。

 ん?


「嫌だけどって、なんで?」

「連絡係が嫌。そいつ嫌い。

 けど、任務だから仕方がない。」


 仲間が苦手ってことかな?僕はちゃんと話を聞く為にベッドの上で上半身を起こした。

「どんな人なの?

 レンジアはなんでその人が苦手なの?」


「人間に興味がない。虫しか愛せない。

 気持ち悪い。

 私をしつこくからかってくる。

 だから嫌い。」


「しつこくからかわれるのは、確かに嫌だねえ……。けど、その人、人間に興味がないんでしょ?なんでレンジアには絡むんだろ?」


「知らない。」

「レンジアと、仲良くしたい……とか?」

「したくない。」

 レンジアは相手の人に容赦なかった。


 小さい子が好きな子をわざとからかって、好意の代わりの強い感情を求めることがあると言うけど、それみたいな感じなのかなあ。


 けどレンジアみたく、結果相手に嫌われちゃうんだよね、それって。相手と仲良くしたいならやめたほうがいいと思うんだ。


「その人にいつもなんて報告してるの?」

「アレックスさまがどこに行ったか、誰と会ったか、何をしていたか。」

「今日のことは、なんて報告するの?」


「家族と朝ごはんを食べた後で、扉に入ってしばらく出て来なかった。出て来て家族とお昼ごはんを食べた。市場で店を出した。帰って来てから独り言を言ってた、と報告。」


 ……うん。やっぱり独り言と思われてた。

 けど、ほんとに時空の扉について来なかったんだね。僕がレグリオ王国で元犯罪奴隷を買ったってことまでは知らないのか。


 報告内容も凄く端的だ。会話内容を逐一報告するよう、言われてないのかも知れない。

 僕の監視役がレンジアで助かったよ。

 聞けば正直に答えてくれるしね。


 ずっと見られてるのは怖いし、それをオフィーリア嬢が聞くって思うと、オフィーリア嬢のこともちょっぴり怖くなるけど、こうだから、レンジアって憎めないんだよなあ。


「えと、さ、助けてくれた日のことは、なんて報告したの?その……。」

 僕は1番気になることを聞いた。


「家族と冒険者ギルドに行ってから、ニナナイダンジョンに行った。冒険者に絡まれていたけど撃退した、と報告。」


 ──あれ?

「え?それだけ?

 その……、船の上の出来事は?」


 だって、僕はザラ王女とエンジュ王女に会って話してたんだもの。誰と会ったって報告するのなら、1番重要なとこだよね?

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