第96話 最高(エピック)クラスの剣

 ──まてよ!?そうだよ、収納はもともと出来るんだ!お祖父さまのアイテムボックスがあるんだから!ということは、手を触れずにスキルでしまえるってことじゃないか?


 だったらこのドロップアイテムを、いちいち拾わずに一気にしまったり出来ないかな?

 なんせ1万体以上ものリザードマンのドロップアイテムだからね。


 討伐証明部位だけでも1万をこえるもの。

 これをいちいち拾っていたら間に合わないから、めぼしいものだけ拾うってことになるけど、それだとスクロールが拾いきれない。


 というか、2人きりだと殆ど拾えないと思うよ。叔父さんが手近なところから順に、手早く拾ってくれてはいるものの、手作業だとまあ、こんなものだよねって速度だもの。


 そこに僕が加わったところで、拾える速度なんて知れている。おまけにスクロールは広げないと分からないから、どれがいいやつかなんて、パッと見で判断がつかないんだ。

 

 いちいちぜんぶ広げて、いいやつかどうかを判断して捨てるくらいなら、確認しないでひたすら拾ったほうが、まだいいのが拾える可能性があるってものだよ。


 だから叔父さんはスクロールはまったく拾わずに、その他のリザードマンのレアアイテムを拾うことを優先してるみたいだ。


 だけどこれだけあるんだから、ひとつくらいレアなものも混じっている筈!たぶん!

 消えてしまう前にそれをぜんぶ拾いたい。

 試してみる価値はあるよね!


 対象物を即時取り出すことが可能ってことは、今まで出すのに時間がかかってたものをすぐに出せるようになったってことかな?

 やった!これで攻撃速度があがるよ!


 海水がすぐに出せて、かつ連発出来るようになれば、スキルだけで攻撃だって可能だ!

 これはぜひ試さなくちゃね!


「だけど、時空の扉って……?」

 僕は首をかしげて独り言をつぶやいた。

「どうした、アレックス。」

 叔父さんが尋ねてくる。


「あ、うん、なんか、スキルがレベルアップしたんだけど、時空の扉が使用可能になりましたって……。時空の扉ってなんだろう。」


「時空の海がアイテムボックスの海だったんだろう?なら、時空の扉はアイテムボックスの海に関することじゃないのか?」

 と叔父さんが言った。


「そっか!なら、今まで開けられなかった光る扉が、開けられるようになったってことなのかも!叔父さん、行ってみよう!」


「その前にドロップアイテムを拾おう。

 早くしないと消えちまう。

 なんせ1万体もの数がいるんだからな。」


「あ、う、うん、そうだね!」

 死体が消えるように、ドロップアイテムも時間が来たら消えちゃうものなんだって。

 消えたりなんかしたらもったいないよ!


「叔父さん、僕試してみたいことがあるんだけど。スキルのレベルが上がって、アイテム収納が可能になったって出たんだ。だからこのまましまえるか試してみたいんだ。」


「なるほど?今までは出せるだけ、出したものをしまえるだけだったが、これからは出したものでなくてもしまえるかも知れないということか。よしアレックス、やってみろ。」


「──うん!あ、待って。

 あれ、なんだろう……?」

 少し先のほうに、ひときわ光るドロップアイテム。僕はそれを拾いに行ってみた。


「なんだ、間に合うのか?

 とりあえず近くのものを拾っておくぞ?」

 と言う叔父さんに、わかった!と答える。


「あれ、これって……?」

 ひときわ派手に光る真っ赤な長剣が1本。

 僕はそれを拾って戻り叔父さんに見せた。


「灼熱の長剣だな、ついてたじゃないか。

 どれ、レア度を見てやろう。」

 叔父さんがスクロールをマジックバッグから取り出して、灼熱の長剣に使った。


 これは消耗品タイプの、武器のステータスを鑑定出来るスクロールなんだって。

 叔父さんが灼熱の長剣を鑑定すると。


「ふむ、最高(エピック)クラス、攻撃力+80、炎攻撃力+120、悪くないじゃあないか!炎が弱点の魔物相手なら、普通の灼熱の長剣の3割増しの攻撃力が出せるぞ!」


「え?灼熱の長剣は、攻撃力は+50、炎攻撃力+100の筈だよね?」

 と僕が驚く。


「それは通常(ノーマル)クラスの場合だ。希少(レア)クラスならそれよりマシだし、粗悪(インフェリオリティ)クラスならそれよりも悪い。魔物からのドロップ品は希少度もステータスもランダムだからな。


 そうなんだ、じゃあかなりついてたってことだね!ボスリザードマンがいたからかな?

 けど、僕には無用の長物だなあ……。


 ああ、でも、オフィーリア嬢の家令補佐のジャックさんが長剣使いだったよね。ジャックさんにでもあげようかな?


 そんなことを思いながら、マジックバッグに灼熱の長剣をしまった。アレックス、早くしないと消えるぞ、と叔父さんに言われる。

 うわあ!待って待って!

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