婚約?ドッキリですか?

「僕なんか、相応しくないです!」

辞退を申し出るが、エレオノーラは引かない。


「いいえ。あなたはとても優しいです。その優しさでわたくしを支えてほしいの。不器用さはありますが、そこはわたくしが支えます。人間誰しも完璧はないのですから」

「いやいや、こんな間違いだらけの人間が、王女の隣にはいられません!」


重ねて否定をし、助けを求めるようにニコルとサミュを見る。


彼女達は目は合わせてくれるものの、何も言ってはくれない。


エレオノーラの決定に逆らうつもりはないようだ。


「それに父だって許可しませんよ。僕は、跡継ぎだから」

とは言いつつも、弟のミカエルも跡継ぎ候補として勉強をしていたりする。


少し癖のある金の髪と、珍しいオッドアイをしたミカエルは魔力も強く、期待されている。


両親に差別をされたわけではないが、出来のいい弟に嫉妬をすることも少なくない。


そんな兄なのに、ミカエルはレナードを尊敬し、尊重してくれる。


レナードが王女の婚約者となるならば、全力で応援してくれそうだ。


「そうですわね。では早急にあなたの父、スフォリア公爵と話をする機会を設けましょう。わたくしも両親に話をしておきます。近々書簡を送りますので、その間けして浮気などなされないでくださいね」


圧のある視線に、レナードは身震いした。


(なんでそんなに僕に固執するんだ?!僕にはなんの取り柄もないのに!)





ニコルもまたレナードに興味を持ち始めていた。


エレオノーラにここまで言い寄られても断り続けるレナードは、とても謙虚だ。


今までの男たちはエレオノーラをモノにしようとする者たちばかりだったので、欲のないレナードならばエレオノーラを虐げるような事もしないだろう。


そんなことをしたらニコルが許さないが。



「エレオノーラ様。そろそろレナード様をお送りせねばなりません」


別れの時間となり、エレオノーラは寂しそうな顔をする。


レナードも罪悪感を感じるのか、困り顔になっていた。


「あの、エレオノーラ様。またお会いしましょう」

慰めるだけの言葉だったのだろうけど、エレオノーラの頬に朱が差した。


エレオノーラを弄ぶならただじゃ置かないと心の中で誓い直した。



「ええ、またすぐにでも」

エレオノーラがレナードの手を握り、離す。


早く婚約者になりたいとエレオノーラは耐えて、何とかレナードを見送った。


レナードが馬車に乗る直前、ニコルが言ってくる。


「エレオノーラ様を泣かせたら、ただじゃおきませんからね」



寒気のする声でそう告げられた。









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