第38話
「――ショウくん。ちょっと」
オレは
いや、オレ自身
だけど
気になることに、朝のLINEをさかいに既読が付かない。
オレは事情を知るトバリナと
少し離れたところで
「あんた。悪いけど私探しに行ってくれない? 位置情報共有してるからあの娘がスマホ落としてなかったら場所わかるでしょ?」
「そっか!」
そういえば以前
「ショウくん、先生には私から言っとくから」
事情を知ってるだけあって、
オレはショコラと
こういう時普段からシスコンしてるから理解が早い。
一応職員室に行き、事情を話し早退届を出した。事故後すぐなのでこちらも、理解が早かった。
急ぎ足で靴箱に差し掛かった時、声を掛けられた。元リア充集団とでもいおうか、山本君の取り巻きの面々だ。
何でも山本君を知らないかと聞いてきた。
質問の意図がわからない。
聞き返すとどうも亡くなった『逆恨みライダ―』は山本君の従兄らしい。
そうなると気になる気持ちはわかるが、知らない。話の感じでは学校に来てないようだ。
「見かけたら声を掛けてみる」
気休めになるかどうかの返事をした。
体育の件や食堂でのことはオレ的には済んだことだ。わだかまりはない。
声を掛ける機会があれば掛けてもいい。
オレは学校最寄り駅からサバリが持っているだろう、
位置的に自宅と学校の間の駅からそう遠くない海沿い。
オレは電車に飛び乗り下車したことない駅に降りた。
自分たちが生活する街よりやや海岸に近いせいか、潮の匂いがした。
風が少しある。
一緒に下車した女性のロングヘア―が揺らいだ。
オレはスマホで大体の位置を把握し画面を一度閉じて小走りで駆けだした。
事故のとき負ったひざの擦り傷がピリッとしたが、それにもすぐ慣れた。
古い駄菓子屋の軒には白い猫が退屈そうにあくびした。
もしかしたらサブリナなら、少しくらい話しかけたかも知れない。
でも猫が教えてくれるワケもなく、オレは海岸線を目指した。
こういう時は余計なことを考える。
『私のところなんか来てくれるワケない』
そんなつぶやきが気になって仕方ない。
いい加減走って吐き出すように言う。
「――私のところなんかに来たけど?」
「あっ、
潮が引いて露わになったテトラポットにしゃがんで、たぶんさっきの白猫の駄菓子屋で買ったんだろう。
ソフトクリ―ムを食べていた。
オレはサバリの質問に答えずにその手からソフトを奪い取り、大きめの一口を食べて返した。
サバリはオレのかみ口が付いたソフトをそのまま食べた。
「月がきれいですね――」
「まだ昼ですが?」
「
「知ってる、でも昼なのも知ってる。何やってんの? 学校だけど?」
サバリは珍しく少し拗ねた顔してみせた。
「――お姉さまじゃないんですね……」
「ん、まぁ……色々ある」
どうやらサバリはオレと
「好きなんでしょ、お互いに」
「どうかな…オレはそう…好きかな」
サバリは「そっか」とオレの肘を不意にはじいた。
痛がってるオレを見てケタケタと笑う。
こんな笑い方するんだ。
オレは少し安心した。
「私、損したなぁって思ってました」
「損?」
「はい。お姉さまと入れ替わったら、付き合えないじゃないですか。でも、そういう事情なら――」
サバリは急に振り向いて『バン!』とオレの胸目掛けて拳銃の引き金を引くようにして見せた。
「決めました! 私、この姿のまんま参戦します! 幸い同棲も始まったばかりだし、チャンスはあります! がんばです!」
結局、サバリがどうして学校にも来ないで海岸沿いを歩いていたかわからず仕舞いだ。
別に追及する必要もないし、元気そうだし、オレ的には『まぁ、いいか』になった。
サバリが言うように『幸い同棲も始まったばかり』だ。
何かあれば話を聞くこともあるだろう。
オレはサバリを連れて学校に戻ろうとしたが「まだ帰りたくない(笑)」みたいなわがままを言うので、学校には見つけたことの報告とオレの通院に付き合ってもらうと伝えた。
「今日病院行くんでした?」
サバリは「はてな」な顔をする。
そう、今日は元々通院の予定はない。
目的がないではない。
交通事故に巻き込まれて、太ももを骨折して入院してる女子が中学時代のクラスメイトだったと
機会があればお見舞いでもと思っていたので、彼女の病室に顔を出すことにした。
きのうウチに来た後に
元気そうなので、顔を出すことにした。
「ん……これはもしやヤリ〇ン疑惑の再燃では――」
名探偵バリの推理顔のサバリだが、残念ながらかすりもしない。
じゃれながら病院に差し掛かるとそこには何故か、難しい顔した山本君がいた。
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