第36話
そして導き出された人物がひとり。
「嫌よ」
なにせ呼んだのは敷島
オレと
「姉さん、わがまま言わないの。こっちがヨリちゃんに頼む方なんだから」
「そうよ、とばっち。大人になんないと」
「ヨリ、あんたが言うな」
そのやり取りを目の当たりにした
「
「いいえ、おじさん。大丈夫です。とばっちとはもう仲直りしましたんで。ご安心ください」
得意顔の
でも、自分の時の「共依存」の時と同じで
「じゃあ、委員会手伝ってよ。不信任案通ったはいいもののほぼ信任投票だけで生徒会長しないとなの」
トバリナは『ほらね、こういうヤツなのよ』みたいな顔するがスル―だ。いま方法を選んでる時じゃないし、もうすでに
ズルく言うなら
「出来たら食堂での面々にも入ってほしいの生徒会」
「食堂……『A式』の連中? でも、みんな部活ガチでやってるから――」
オレはショコラたちと立ち上げたリア充カ―スト集団『A式』の面々を思い浮かべた。
「いいの。基本『副委員長』でいいから。あと負担の少ない委員会選ぶから」
しかめっ面のトバリナをよそにサバリが手をあげた。元気ないい子だが
「私部活してませんから、自由です!」
「ちょ、待ちなさいよ! すぐに元に戻ったらどうする気よ!」
「その時はそのときですよ、お姉さま!」
こうして、協力者とサバリの生徒会副会長が決定した。
副会長と、生徒会長の関係ならいつも一緒にいてもおかしくないだろう。
いつまで続くかわからないものの、ひとまずの方向性が決まり
それを見計らったように近所に住む
父さんがそのメンバ―に混ざるのは不自然なので、オレの部屋に移動した。
元々幼馴染のふたりには「入れ替わり」の事実を伝え、協力してもらうつもりだった。
だから、バレたらバレたでいいやと取り繕わなかったのだが、意外にふたりはトバリナにもサバリにも違和感を感じなかったようだ。
お見舞いがてらということで、いつもとは違い早々に帰っていった。
オレのケガの具合が想像の範囲だったことにホッとしてくれたようだ。
そんな二人を見送りながら、オレは少しチクリとした痛みを胸に感じた。
「意外にいけるみたいね」
トバリナは窓から二人の背中を見送り呟いた。
「私、心臓バクバクでしたぁ~」
トバリナはサバリをチラ見して「私そんなしゃべり方しないわよ」とクギを刺した。
「でも、しゃべんないとバレないかもね。私の普段の不愛想に感謝しなさいよ」
そんな捨て台詞と共にトバリナは腰を上げた。
「えっと、姉さん。どうしたの……」
「姉さんじゃないわよ。サブリナさんよ。偉そうなことばっか言ってらんないでしょ。孤独に慣れないと。とりあえず帰るわ。私がこの家に入り浸りになるのも不自然だし……」
しょんぼりした背中が痛々しかった。掛ける言葉が見つからないけど、手ぶらで帰したくない。オレは駅を目ぜして歩き出していたトバリナに小走りで追いついた。
追いついたけど、何か言うために来たけど言葉が見当たらない。
オレとトバリナは押し黙ったまま、行きなれた駅への道を歩く。
おかしなことにこんなに会話が途切れるのはいつぶりかわからない。
いつも何かについてオレたちは言葉を交わしてきたし、これからもそうするつもりだった。なのに言葉ひとつが見当たらない。
「ぜいたく、言えないよね~」
出来るだけ明るいト―ンでトバリナが口を開いた。でも目の淵の涙は隠せない。
「だってさ、あの時。事故の時、あんたが助けてくれなかったら、こうして一緒に歩けてたかわかんないよ。だからぜいたく言いません。とりあえず、私はあんたと国際結婚目指すとします! 大丈夫よ、寂しかったらすぐ呼ぶ。でも、うん。頑張るから」
そんな強がりなセリフを残し改札に消えた。
オレも頑張んないと、そんなこと思いながら駅前のコンビニでプリンを3個買って家で待つサバリと父さんと食べることにした。
オレは抜け殻のようにその日を送った。
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