第19話 結論から言うと――
オレたちふたりは担任の女性教師に連れられ生徒指導室に。
彼女の名前は確か『渡辺
そういえば男子バスケ部顧問だったはず。
まあまあ暑苦しい系。
新卒ではありがちだ。
そろそろ理想と現実に挫折してもいい頃だと、オレは密かに思っていた。
生徒指導室に向かう廊下、確かなことは、完全にオレがなにかした感じの空気だったこと。
いや、なにかなんて生ぬるい表現はやめだ。
完全にオレが青い性の欲望を
いや、確かに誤解する環境はある。
いつもはそんなことしない
しかも涙ポロリで。
付け加えるなら「ごめん。迷惑かけてるよね…」とか!
涙で潤んだうえに上目遣い、確かに幼馴染ですか、ぐっと来るモンはある……
不可抗力だし、オレだって悪い。
だけど、この担任オレ称『ナベさん』は明らかにオレが
そっち系とはえっち系だ。
☆
「つまり、アレか? 高校入学を境に
「はい」
「―で、休憩時間に
「まぁ…はい」
「―で、
「―はい、すみませんでした」
渡辺先生こと、ナベさんはメモを取っていたバインダ―をトントンと机で整え、目を閉じた。考えをまとめているのだろう。
考えるときのクセなのか、やたらとボ―ルペンをカチカチいわせまくった。
たまにしゃくりあげるけど、いい加減泣くにも限界が見えてきた
ナベさんはボ―ルペンをノックしまくり、
そんなわけで生徒指導室はボ―ルペンの「カチカチ」に包まれていた。
「結論から言うと――」
目を見開いたナベさんはオレと
無意味なくらい間を持たせるのは、もしかして授業をサボりたいのではないか?
そんな疑惑さえ浮かぶ。
「つまりは感極まって泣いたワケだな、
「はい…すみませんでした」
うんうんと腕組しながらうなづくものの、なんかぬぐい切れないうさん臭さが漂う。
そしてオレの疑いが的中した。
「めっちゃええ話やん! そら泣くわ‼ 泣いてまうわ‼ いや、今泣かんでいつ泣くねんって話‼ そら全米も涙するわ~~‼」
青春するのもいいが、まずは授業しろ。
あと、映画じゃないから全米は泣かん。
☆
その頃「1―B」では――
自習もほどほどに「居場所」であるサブリナの席に、残された四人組が集まって雑談していた。
話題は連行されたふたりの事と思いきや、まったく関係のない話だった。
学食のおススメや、隠れメニュ―、逆にこれだけは手を出すな、そんなライトな話題を
下手な憶測をふたりに近い自分たちがすれば、噂が独り歩きして、ふたりの立場が悪くなるかもと、考えた。
意外に
そしてもう一人、先を読む男が
「ねぇねぇ、
ひとつがこんな感じの恋バナ大好き女子三人組。
悪気はないのだろうが、ここぞとばかりに情報を聞き出そうとする。お昼休みのおしゃべりのネタとしては最適だ。
「そうだけど、なんで?」
ショコラは一瞬にしてイラ立ちを顔に出した。
仲間に対して「そういう」視線を向かられるのが我慢できない。
熱い女子なのだ。
「ほら、
今の女子の言葉が
こいつはこいつで暑苦しいところがある。
「あぁ~『ヤリ〇ン』ってヤツ? ないない、ぜっ~たいない! ありえない」
「えぇ~~なんでよ? 火のない所に煙は立たないでしょ? 少しくらいあんじゃない?」
「俺も
しかし、恋バナ大好き女子はこれくらいで引き下がらない。
彼女たちは彼女たちで「恋バナセンサ―」にビンビンと反応がきていた。
そして
「でもさ、
気のない振りしながらも、大半が聞き耳を立ててる確認が出来た。
「うん、実際長いよ。三人でいる時間」
ワザと軽くあくびをして「なんでそんなこと聞くの?」みたいな態度をとる。
実際は三人でいる時間は長くない。
ふたりでいる時間が断然長かった。
ただ、
恋バナ三人組は「あぁ…」みたいに意気消沈気味になったが、消えかけた好奇心の炎にもう一度無理やり酸素を送り込んだ。
「でもさ、その辺は
最初から「ヤリ〇ン」ありきで成り立ってる話題だ。
でも
「うん。でも、俺信じてるから」
強引な論法には聞こえる
しかし、これで終わりではなかった。
付け加えると、
「だけどさ、信じてるって男同士だからでしょ? 男同士でうまく口裏合わせて実はよろしくやってんじゃないのって話――」
突然会話に首を突っ込んできたのが、クラス唯一のウェイ系男子――足立だった。足立はクラスは違うが「1―A」山本のツレだ。
足立はサブリナ狙いの山本と違い、全方位的に人気のある
まぁ、
「あぁ、なんかごめんねぇ~」
そう言って恋バナ好き三人組は撤収した。
自分たちの好奇心がクラスの不良を引き寄せるとは思ってなかった。
「――足立君だっけ? 俺が信じてるのは
「なんなの、自分さっき言ったじゃん『信じてる』って、おまえも聞いたろ?」
こういう類はすぐに数の理論に持ち込む。
突然話しかけられた気の弱そうな男子は、恐る恐るうなづく。
そして単細胞だからすぐに「ほら見てみろ」みたいにドヤる。
だけど、残念ながら数の理論は「そこそこ」通用する。
気の弱い男子がとった、自分を守るための無責任な同意は、いじめでもよく起こる。
でも残念。
もうすでに、すべては彼の手のひらの上なのだ。
「言ったけど、信じてるのは
「それとこれとどうちがうんだ?」
「うん。俺と
――まぁ、どうしても気になるんだったら、戻って来たふたりに聞けば?
そんな感じで
やっぱり
自分たちの妄想が『足立レベル』だと暗に言われてるようで、恥ずかしくなったのだ。
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