ゾンビが溢れるアニメの世界に転生した俺〜せめて生き残れる奴に転生したかった〜

アズリエル

第1話 早すぎる物語の始まり

「あ゛〜疲れた」


俺は残業を終わらせ、現在はマイホームにてくつろいでいる。今日は俺が楽しみにしているアニメの最終話だ。


大変な長作で、アニメ制作会社がよかったのか絵がとてもきれいだ。ヒロインも可愛いし、ゾンビと異能を掛け合わせたアニメである。



最終話を見終わった俺は一度大きく伸びた後、しばらく余韻に浸った。

終末世界を題材にした物語の割にはいいエンドだったと思う。

なんだか名残惜しくなった俺は、もう一度このアニメを見返そうとテレビとつまみを用意して、再生ボタンを押した。


しばらくすると、だんだん瞼が重くなってくる。程よい眠気に心地よく俺は身を任せるのだった。


………………………

………………

………







「犬神!犬神!」


「やばい仕事!!」

「何言ってんだ犬神、席に就け」

「は?」

「は、じゃないさっさと席に就け。それとも小テストの合格点引き上げられたいのか?」

「す、すみません」


どこだここ?教室?高校か?

訳も分からず俺は席につく。机には数Ⅱと書かれた教科書が乱雑に広がっており、ノートはマッサラだ。

それにしてもどこか懐かしさがある、それでいて早く逃げろと警告されているような不思議な感覚があった。


夢?


頬をつねってみる。  痛い…


少なくとも夢ではないらしい


「この問題を…そうだな、一葉解いてくれ」


先生の声につられ、俺は指名された彼女へ自然と顔を向けた。

一言でいえば美少女、まず顔を見て思ったのがそれだった。


ズキリと頭痛が俺を襲う、俺はこの子を知っている。

バクバクと鳴り響く心臓の音は、まるで警告を鳴らすように頭に響いた。恋とか見惚れるといった部類じゃない、この空間に居てはいけない、知っている、ここは危険だ!そう魂が警告を鳴らすようなデジャブを催す感覚を覚えた。



そうだ、俺はこの子を知っている。俺が寝落ちする直前まで見ていたアニメに出てくるキャラ、似ているなんてレベルじゃない、そっくりそのままだ。




一葉 舞いつは まい

 サラサラとしたその髪は櫛を通しても何の抵抗もなく滑り落ちるほどまっすぐで、その長く夜空のような青みがかった髪は腰ほどまでに達している。

対して真珠のような艶やかなその肌は、処女雪のように白い。


切れ長の瞳は取れたてのリンゴのような紅色だ。


真っ白な肌には薄い桜色の唇が確かに存在を主張しており、不思議と視線を吸い寄せられる妖艶さがあった。


体型はまさに完成された至高の一品。

胸は制服を申し訳程度に押し上げ、こじんまりした大きさだが、お腹周りはキュッと締まっており、お尻は安産型であろうことが一目でわかる。


彼女のすべてが皆をひきつけ放さない。


それもそのはず、彼女はの現役アイドルだ

正統派美少女という二つ名がふさわしい見た目の彼女は、この物語にて開始一話で…



  死ぬ退場する



そう、彼女はヒロイン級のルックスでありながらヒロインではない。この世界でヒロインではないということは、死を意味する。なぜならこの世界は文明の技術も、ゾンビウイルスによって滅ぶのだから。


では自分は誰なのか?犬神とかいう苗字のキャラなど聞いたことすらない。

そんな思考にふけっている俺をよそに、黒板では一葉さんが黒板に答えを書き連ねていた。俺はそれを眺めながら、自分の手を見つめる。


若返っている、いや明らかに別人だ。前世?とりあえず全盛期の俺ほどではないが鍛え抜かれた体をしている。


まぁ、この筋肉の鍛え方を見るに、実戦型を想定されていない魅せ筋だ。



それでもなんも鍛えれれていないよりはましだが…


え? なんで社会人の俺が鍛えてたか?実家が武士の末裔で、いつか異世界に飛ばされてもいいように俺もノリノリでじいちゃんのしごかれてたからだ。まぁ社会人になったっきり、デスクワークに追われる日々で贅肉になったがな。


厨二病は言ってくれるな。


筆箱やノートの名前を見れば、この体の持ち主の名前は 犬神 琥珀いぬがみ こはくというらしい。

それなりに周りからからかわれて温かい目で見られていることから、陰キャか陽キャかでいえば陰キャっぽい、クラスの立ち位置は中間といったところか?


しかし困った、今何日だ?確か物語の開始は4月26日 午後2時だ


教室の日程表の日付は4月12日、しかし当番係はさぼり癖があるようで、日付と曜日があっていない。


「先生!なんかすごくお腹が痛いような気がするのでトイレ行ってきます」


「え?あはいどうぞ」


良し、トイレに到着。ズボンをガバッとおろし、便座に腰かける


スマホを取り出し、日付を確認!この体の記憶も段々と鮮明になってきた。パスワードもすらすらと出てくる。


4月26日 午後1時55分


スマホの大部分を占める時計にはそう記されていた。


「五分前じゃん」


俺はう●こをひねり出しながら軽く絶望した

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