戦争の準備
僕達は大急ぎで防衛施設である『陣』の作成に取り掛かった。ここでレグルスは大活躍をした。
切れ味鋭い神剣ダインスレイヴを使い、森の木を真っ二つにし木材の確保に役立った。
僕としては戦闘で役に立ちたかったが、まぁ仕方がないので諦めた。
昼間に差し掛かろうとした時、敵の蛮族も斥候を放ってきた。しかし、こちらの兵士に見つかり、慌てて逃げ帰ったようだ。
「ダミーとして攻城兵器を目に見える所で作っているから、まだバレていないだろう。まさか防衛施設を作っているなんて思わないだろうぜ!」
傭兵団の団長ヴォルフは上機嫌で笑った。
ヴォルフは黒色の重装鎧をきている大柄な男だ。髪も短髪の黒色をしており、40代ほどであった。
「意外でした。傭兵団と言えば、もっと血気盛んに攻める方を選ぶと思っていました」
レグルスの言葉にヴォルフは腰に手を当てて自分の傭兵団を見ながら言った。
「まぁ、確かに手柄を立てれば追加報酬が手に入り、次の依頼も来やすくなるだろうぜ。だがな、オレはこの傭兵団の仲間を死なせたくねぇんだ。いずれは土地を貰って、畑でも耕しながら暮らせればいいと思っているんだぜ?」
ヴォルフの言葉にレグルスは目を丸くした。
「小さな願いで驚いたか?だがな、ここにいる傭兵のほとんどが、長引く戦乱で故郷を追われたヤツらなんだ。そんな奴らに帰れる場所を作ってやりたと思っているんだ」
「素晴らしい心意気だと思います。もし可能なら僕もお手伝いさせて下さい!絶対にこの戦、勝ちましょう!」
「ああ、取り敢えず給金分は働くさ。お前のおかげで余計な犠牲は減らせそうだしな」
ヴォルフは短い時間だが、レグルスの性格をよくわかった気がした。
『コイツは善人だ。しかし、神に選ばれた【力】を持ってやがる。力の持つ善人ほど危ないものはない』
ヴォルフは今まで良いやつが利用され死んでいった事実を思い出していた。
『すでに神炎騎士団に利用されている自覚はあるのかよ?だが死なすには惜しい小僧だ。コイツが居れば【あの話】に乗らなくて正解だったかもな』
ヴォルフは傭兵団を率いる身の上、残酷な面も持っていたが、それ以上に義理人情に厚い男であった。この後起こる戦争で、その性格が運命を変える事になったのは、まだ気付いていなかった。
「ヴォルフさん、この木材は何処に運びます?」
「うん?おっと悪いな。考え事をしていた。レグルス、お前はドンドン木々を斬り倒しな!後の処理は俺達がやっておく!」
「はい!わかりました!」
素直に返事をするレグルスをみてヴォルフは息子がいたらこんな感じなのかと思うのであった。
こうして、レグルス達は後方で陣地の作成を急ピッチで進めていった。
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